《快適なエルフ生活の過ごし方》21:再開、そしてお引越し(ドライアドが)なの
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五月。ゴールデンウィークも過ぎ去って暖かさから暑さへとシフトしていく季節。社會的には四月のやる気に充ちた頃が過ぎ去って多の慣れと共に五月病と呼ばれる會社行きたくない病が発生している時期である。幸いにして私はそんなものにかからなかったが同期の中には既に出社してこなくなったものも居るようだ。もっともその理由が五月病なのかどうかというのはわからない。……訂正しよう。一人は確実に私のせいだ。更に正確に言うと出社して來なくなったのでは無くて出社を差し止められてるらしいのだけど。
あれから支店長は私に対してなるべく無関係を裝う様にしている様であまり話しかけては來ない。副支店長は朝早くに一緒になるから割と話してるが、容は他もない世間話ばかりだ。貓が子どもを産んだらしい。おめでとうございます。太田君はあれからも変わらず話してくれている。本當にいい人だ。もっとも渉外が忙しそうであまり會話になることも無いんだけど。係長は……思い出したように嫌味を言ったりセクハラしようとしたりしてるみたいだけどだいたい未然に防げている。ドライアドのおかげだね。そのドライアドはと言うと、支店長の機のそばの観葉植から店頭カウンターの鉢植えにお引越しした。私がテラーに配屬になったので一緒についてきた形だ。暇な時はおしゃべり出來るし退屈はしない。火の霊はいつもそばに居るんだけど滅多に話しかけてこない。話し掛けるとうるさいから仕事場ではやめてねって言ってるしね。その分、家ではうるさくなるんだけど。
そんなこんなな最近ではあるが五月病では無いのだと思うのだけど何やらぼんやりしてる人が居る。あ、またため息ついてる。
「先輩、退屈だからってため息ついても客は來ないですよ」
私は伝票整理しながら隣で大きくため息ついてる先輩に話しかけた。基本的に田舎の金融機関は渉外が回って集金する事が多いので店頭に來る客はなかったりする。偶に大口預金者のおじいちゃんとかが支店長とおしゃべりに來る程度だ。なのでテラーは暇である。
「いやー、別に客とか來なくても良いんだけどさー」
「じゃあなんでため息ついてるんですか?」
機の上に頭を乗せてぐりんと首だけこちらに向けて先輩は言った。
「んー、あれだ。なんかちょっと気になってる人が居てね?」
「またバナですか?」
先輩はちょっとギャルっぽさかどこか殘ってるじの人だ。窓口でも気さくに老若男接してるので人気者だ。そしてやたら惚れっぽい。あちこちの合コンに顔を出してるって話もあるし、実際に合コンにわれた事もある。私はそういうのは怖くて行きたくないから斷ったけど。先輩も決して無理強いしてくる様な人では無いので関係としては悪くないと思う。
「んー、よくわかんない」
おや、珍しい。いつもはイケメンがどうだとかお金持ちがどうだとかそんな事ばかり聞かされてるのに。
「いや、別にさ、特にイケメンって訳じゃないし、お金持ちって訳でもない。第一、名前もよく知らなくってさ」
おや? いつもと違うパターンだ。こう見えても私も子の端くれ。バナに興味がわかない訳が無い。もっと言えば自分に被害が及ばない限りは他の人のバナは聞きたいものだ。まあ今のところバナって言われても特に浮いた話は私にはない。ないったらないの! の子はノーカウントだ、こんちくしょう。……また待ち伏せとかされてないよね?
「聞きたいです、先輩」
そんな事は置いといて珍しい先輩のお話を聞くべく催促してみた。
「そうだね。なんか気持ち整理する為にも話してみた方が良いのかもね」
そう言って先輩が話し出したのはGW中の出來事だった。
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