「リジェネレイト！」

アイリスがメルティラに対して治癒の魔法をかけ続けている。

大型オーガの突進に対してメルティラは二人を守るためにを張って食い止めたが、その時に大きく負傷してしまった。

「アイリスさん！　メルティラさんは大丈夫か！？」

大型オーガを引き付けその攻撃を躱しながら、ロノムがアイリスに向かってぶ。

「申し訳ありません……！　私は……大丈夫です……！」

立ち上がろうとするメルティラをアイリスは小さなで押し止める。

「ロッさん！　3分です！！　3分いけますか！？　メルちゃんも3分安靜！！」

「了解だ！　その3分間、命を賭して食い止める！！」

ロノムはオーガに対して向き直り、用のハンドアックスを構えた。

と、同時に知能を持たないはずのオーガが何やら呟くと、右手から生された火球がロノムに向かって飛んでくる。

「な！？　オーガが魔法を使うのかよ！　聞いたことないぞ！！？」

間一髪火球を躱しながらロノムが文句を言ったが、オーガには聞きれて貰えない。

追撃の火球が次々とロノムに向かって飛んできた。

雨霰(あめあられ)のように降り注ぐ火球であったが、火球自の速度は見切れない程ではない。全てを避けきったロノムは反撃に出る。

「たっ！」

魔法詠唱の隙をつきオーガの太にハンドアックスの一撃をれる。

が、致命傷どころかきを止めるまでにも至らない。

逆にオーガの左手による一撃を貰ってしまい、ロノムは大きく吹っ飛ばされた。

「俺だってつい最近までは防衛士やってたんだよ……！　攻撃をけるなんてのは慣れてるわ……！！」

致命傷は躱し再び勢を立て直す。

しかしアイリスがメルティラの治癒に全力を盡くしている以上、今はロノムが相手の攻撃をけ続けなければならない。

下手に攻撃に向かうよりも今は回避に集中してメルティラの復帰を待ち、メルティラが復帰してから攻撃に転じる方が得策だろう。

火球の嵐と強烈な打撃を掻い潛りながら、ロノムは時間を稼ぐ。

このまま相手の魔力が盡きてしまえば儲けもの、魔力がなければ火球を放てず、ロノム一人でもオーガを倒せるかもしれない。

「うお！　熱っちぃ！」

しかしそんな皮算用はうまくいかなかった。

火球の一つがロノムの右足を直撃し、勢を崩す。

その隙をオーガが見逃さない。

大きく振りかぶった右ストレートがロノムを襲う。

だめだ……！　避けきれない……！！

オーガの一撃は強烈だ。

何の裝備もなく無防備な狀態でその攻撃を頭部にければ、頭蓋骨は砕しそのまま即死するだろう。

ロノムは眼前に近づくオーガの右手を呆然と眺めながら、剎那のに死を覚悟した。

が、その拳はロノムへと屆かない。

「ロノム様！　お待たせいたしました！！」

鈍い打撃音と共にロノムの前に人影が立ち塞がる。

戦列に復帰したメルティラが大盾を構え、オーガの攻撃を力強くけ止めていた。

「アイリスさん！　なんでもいい！！　なんか攻撃力が上がるやつ……！！！」

絶絶命の狀況から一転、大きなチャンスが生まれた。

メルティラの復帰を確認しすぐさま勢を整えオーガの長い右手を駆け上がりながら、ロノムがぶ。

「よしきたー！　すっごい一撃期待してるぴよーーー！！　響け！！　ライトニング・ブレイド！！！」

テンション上がり気味のアイリスが魔法を発すると、小さな落雷と共にロノムのハンドアックスが帯電する。

「こいつで……終わりだ！」

大きく飛び上がったロノムは空中でハンドアックスを振りかぶる。

自の重とハンドアックスの重みを加えた気合の一閃は重力を味方につけながらオーガの頭部を砕し、勢いそのままに部付近まで斬り裂いた。

同時に鋭い電撃がオーガの全を駆け巡るとそのを焦がし、巨のオーガは斷末魔を上げながら倒れこむ。

………………

ロノムが著地し僅かな靜寂が支配した後、上半から吹き出し続けていたオーガのは蒸発し、そのは砂へと変貌していった。

武を構えたまましばらくけなかったロノムとアイリスとメルティラであったが、その様子を見て初めて安堵の聲を上げた。

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