《【書籍化】探索魔法は最強です~追放されたおっさん冒険者は探査と知の魔法でり上がる~》10.ダンジョン探索―前代未聞の快挙であった

「今回のダンジョンはT-15ダンジョン。通稱はついてないけど、一層ですらまだ完全に攻略されていないダンジョンだ」

鬱蒼(うっそう)と茂る森の中の野営地で、ロノムはアイリスとメルティラにダンジョンの概要を説明していた。

「一層すら踏破されていないのには理由があって、まず、前回のダンジョンとは違いこのダンジョンはトラップが中心のダンジョンと言うことだ」

「ふむふむ」

アイリスもメルティラもロノムの説明をしっかり聞いている。

「そして厄介なことにこのトラップ、一定時間で配置と容が変わる。それはトラップを解除しても同じことで、一定時間が経つとどこか別の場所にトラップが復活してしまう。それ故に既踏破(きとうは)の場所が安全と言うわけではなく、非常に不人気なダンジョンとなっているんだ。冒険者のほとんどはトラップが大嫌いだしね」

「なるほど! 不思議ダンジョンということですね!!」

「そうだね。それにしても舊文明の人達はどうやってそんなものを作ったのか、不思議に思うよ」

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ほとんどのダンジョンはロノム達が生きる時代の人間には人知の及ばない仕組みを保持しており、未だにその機構が生き続けている。

「昔は王國の軍隊が大規模調査隊を派兵していたと聞きましたが、それはもう取りやめてしまったのでしょうか?」

メルティラが癖である人差し指を口に當てる仕草をしながら、ロノムに聞いた。

「ほとんどのダンジョンがそうなんだけど、挑む人數が多ければ多い程、トラップの発確率が上がって部の魔の數が増える仕組みなんだ。なので數にものを言わせてダンジョン攻略って言うことができないらしい。だから今は各王國共にダンジョンから手を引いて、冒険者ギルドに調査を一任しているってわけ」

メルティラの疑問に対して、ロノムが魔法式メモ帳を開きながら答える。

「他に質問はあるかな?」

「そうですね……あとは、今回の魔の強さはどれくらいなのでしょうか?」

「中に出現する魔はオーガとかそう言ったものと比べると全然だよ。ギルドの資料によれば、ゴブリンとか迷い込んだ野生とかその程度だって」

「それでしたら、戦闘面での心配なさそうですね」

メルティラがにこやかな表で頷いた。

「なんでこのダンジョンを選んだのかと言うと、前回はパーティの戦闘力を試したから今回はパーティの注意力や判斷力を試したいって言うのがあるからかな。ギルドから『統計を取りたいから道中の罠の數を調べてこい』と言うミッションはあるけど、今回も全部記録を取るから気にしなくて大丈夫」

そう言ってロノムはゆっくりと立ち上がると、ダンジョンに持っていく荷を手に取る。

「さあ、それじゃあ早速出発しよう」

「「はい!」」

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「いや、ロッさん。パーティの注意力や判斷力以前に、ロッさんの獨擅場じゃないですか」

ダンジョンを進みながら、アイリスは口を尖らせながらロノムに文句を言う。

「そ、そんなことは。トラップの解除はお二人にもやって貰ってるし、それに、魔だっているから……」

ダンジョンのトラップを潰していくのに、ロノムの知魔法は強すぎた。

アイリスやメルティラがトラップを見つけるよりも先にロノムが知魔法でトラップを見つけ的確に解除方法を指示しているため、アイリスとメルティラがトラップを見つける隙がない。

も出るには出るのだが、Bランクの二人にとっては脅威とはなりえない存在のみであり、何と言うか、アイリスやメルティラにとって単純な作業ゲーをやらされているようなじだった。

冒険者にとってはローリスクこそ取るべき道ではあるのだが、始めに「注意力や判斷力が試される」と言われていただけに、二人にとっては肩かしを食らったような形である。

「しかしながら、想像していたよりもずっと平和なダンジョンなのですね。あまり探索されている方がおられないのも、退屈だからなのでしょうか」

「あ、うん、一応ね、解除して貰ってるトラップの中にはね、練の冒険者すら命を落としかねないものもあってね……」

(試しに命の危険が無いものをスルーしてアイリスさん達に見つけて貰った方がいいのかな……。いやいや、そんなことをしてパーティメンバーを危険に曬すわけにはいかないし……)

ロノムは心の中で葛藤する。

しかし結局パーティの安全を取り、作業ゲーを続けることにした。

パーティリーダーとして當然の選択だと、ロノムは信じることにする。

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もさもさと罠を潰しお寶を集める作業に飽きてきたところで、アイリスがふと、何かに気付く。

「あれ……? こっちの通路にある階段、ひょっとして下に向かうものではないですか?」

「え? アイリスさん、まさか別階層への通路を……?」

パーティが通り過ぎようとした背の低い通路の先を同じく背の低いアイリスが覗き込むと、そこには下の階層へと向かう階段があった。

若干の狹さをじる階段を三人で下っていくと、大きめの部屋に出ると同時にその奧にも更にダンジョンが広がっていた。

「アイリス様、流石です! 確かに二層へと続いております!」

「凄いな……。まさか次の階層へと続く道を見つけることができるなんて……」

「おおおおお! 不肖このアイリス!! かんどーでが打ち震えております!!!」

どのダンジョンであっても次の階層への道を見つけると言うことは、冒険の可能を広げると言う事でありアンサスランで生きる者達にとっては大変名譽なことであった。

その功績は稱えられ冒険者ギルドが管理するダンジョン史にも名が刻まれることとなる。

殊(こと)に設立して間もない三人アライアンスが達してしまうと言うのは、前代未聞の快挙であった。

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二層の一部を最終地點として今回の冒険を引き上げたロノム達一行は見つけたお寶も相まってほくほく顔であったが、帰りの道中ロノム本人はパーティリーダーとして、今日の出來事を心の中で反芻していた。

(ダンジョンはパーティの能力で選ぶのはもちろんだけど、パーティメンバーそれぞれが活躍できるような所でないとダメなんだな……)

アライアンス団長として、そしてパーティリーダーとしてはリスクの低いダンジョンを選ぶのも勿論であるが、それ以上にパーティメンバーそれぞれに見せ場が必要なのだと理解した。

チームのモチベーション維持はリーダーの仕事なのだ。

次からは余程困窮しない限りはトラップが中心のダンジョンはあまり選ばないようにしよう……そんなことを思うロノムであった。

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