《【書籍化】探索魔法は最強です~追放されたおっさん冒険者は探査と知の魔法でり上がる~》11.足を引っ張っていた無能な仲間に別れを告げたパーティリーダーは足枷がなくなりり上がり街道を駆け上がる~今更自分の無能さに気付いたようだがもう遅い。土下座してきても知りません~(1)

「ったく、今日はやけにトラップに引っかかるな……」

「いつになく不運ッスね。て、ボルマン隊長、ケツに火が付いてるッスよ。いや、比喩じゃなくて文字通りに」

「ん? え? ……どわっちゃああああ! あっちい!!!」

「後ろだ! ファイヤーリザード共の奇襲だぞ!!」

ゴロゴロ転がりながら火を消すボルマンを目に、五人が戦闘態勢にる。

今売り出し中のアライアンス「レッド・ドラグーン」のエースであるボルマンパーティは、ロノム追放後に初めてダンジョンに挑んでいた。

Cランク防衛士を加えパーティ全の補強も完了し、ボルマンの中ではり上がり街道驀進中(ばくしんちゅう)である。

リーダーは撃士のボルマン。

コンポジットボウの使い手でありこのパーティにおいては攻撃の要だ。

攻撃手はボルマンに加えて白兵士の大男ホリドノン、銀髪で瘦せこけた破壊師のエクスエルと続く。

攻撃手達の援護に回るのは黒髪眼鏡の治癒師のネシュレムと金髪碧眼の支援師の年ティーリ。

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年若いながら二人とも優秀な師だ。

そして防衛士は新りのカリエル。アライアンス団長ドディウスの肝煎り人事である。

白兵士・防衛士・撃士・破壊師・治癒師・支援師の六系統全てが揃ったバランスのいいパーティだ。

「トラップにはかかるし奇襲はけるしケツは焼かれるし、今日はほんとについてねえなぁ……。おいホリ、オレ様の星座の今日の運勢どうだったよ」

「いや、知らないッスね。つーかなんスか? 星座って」

ボルマンパーティは新り防衛士のカリエルを除いて全員がBランクであり、戦闘力はかなりの高さであった。

無論、冒険者のランクはダンジョン攻略や実績も大きく考慮されるが、Bランクともなれば運のみならず実力も伴っていると言える。

しかしBランク……どころかAランクも伺えるような実績を持つボルマンパーティにとって、今日のダンジョン攻略は不服となるような容であった。

トラップに引っかかりすぎで攻略は遅々として進まず、目ぼしいお寶も見つけられない有様である。

(うーん……トラップも奇襲も、ロノムさんが全部事前に知してくれていたものだからなぁ……)

ティーリは意識を集中して知系統の魔法を複數展開し索敵を始める。

しかし、魔力はともかくとして集中力が3分と続かなかった。

(ロノムさんのようにはいかないか……)

周囲の知を諦めたティーリは傍にいたネシュレムに小聲で囁きかける。

「やっぱりロノムさんの解雇は間違っていたと思います。ネシュレムさんは気付いていたでしょう? うちのパーティのダンジョン探索能力は、ロノムさんによって支えられていたって」

ネシュレムも治癒師であり、複雑なステップが必要な魔法を得意としている。

ロノムの探知魔法が明らかに人の領域からはみ出ている事を理解しているだろう、そう考えてティーリはネシュレムに同意を求めた。

「知ってる……。だけど……CランクからDランクに落ちたロノムのこと……エクスは許せなかったから……」

「私にとっては……エクスの判斷の方が大事……それだけ……」

ネシュレムはティーリの方を見ずに無表でそう答える。

(そうだった……この人にとってはエクスエルさんの事が何より優先だものなぁ……)

そう思いティーリが顔をうつむきかけたところで、前方を行くボルマン隊長が橫から飛んできた木製の槌(つい)に吹っ飛ばされ、「ほんげえぇぇえぇ」などと言う珍妙な悲鳴を上げながら水の流れる側へと消えていった。

*****************************

「ああもうヤメだヤメ! ついてないにも程があるぞ何だってんだ今日は!!」

水路から救出され全ずぶ濡れのボルマンがそうび、ボルマンパーティのダンジョン攻略は打ち切りとなった。

ダンジョンから出て野営地に戻ったパーティはし休憩した後、撤収の片づけを始めている。

どうにも煮え切らない攻略であったが仕方がない。

そんな日もあるのだろうと皆が自分に言い聞かせていた。

「はー報告書めんどくせえなあ……報告書だけはあの無能が役に立ってたな……。おい、記録係、オレ様が分かりやすいようにまとめといてくれ」

ボルマンが野営地の片付けをしながら、冒険者ギルドからけ取った何點かの書類を取り出しティーリへと押し付ける。

「ああ、そうだわ、ギルドからダンジョンの水路の全長も調べて來いって言われてたんだわ。ティーリ、どんくらいあった?」

「ええ? 今そんなことを言われても、水路の全長なんて記録してないですよ!?」

書類をけ取りながら面食らった表でティーリは聲を上げた。

「ああん!? なんで記録してねえんだよ! 記録係だろおめーは!」

「そう言われましても……!」

ロノムさんだったらそういうものも記録していたのだろうか……そう思いながらロノムから記録係を引き継いだティーリは小さくなる。

今にも毆りかかりそうなボルマンと怯えているティーリの間に、エクスエルが割ってってきた。

「今回はギルドから與えられたミッション容を我々に通知していなかった隊長が悪い。幸いにもまだ時間はある、再度パーティでダンジョンに突し、ミッション容だけでも達しておくべきだ」

「ちっ……。わーったよ、やりゃあいいんだろ? オレ様が悪かったですねすいませんでしたー」

エクスエルが冷靜にボルマンをたしなめ、ボルマンが悪態をつきながら不貞腐(ふてくさ)れる。

(ロノムさんがいた方が、ダンジョン攻略も事務処理もスムーズだったのになぁ……)

ティーリはそんな獨白をしながら、再度ダンジョンへと挑戦するパーティメンバーに付き従った。

ボルマンは定期的にひでぇ目にあいます。

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