「さてさて……どうしたものかな……」

冒険者ギルドのアライアンス求人掲示板の前で、ロノムは悩んでいた。

「お待たせしまして！　ギルドから指示されてた謎手続き終わらせて參りました！　って、ロッさん、求人報なんて眺めながらどうしたんです？　ハッ！　まさか我々に嫌気がさして就職活をー！？　いやー！　捨てないで―！！」

「い、いやアイリスさん、そうじゃなくて！　そうじゃないから！！」

「じょーだんは置いといて何かあったんですか？」

迫真の泣き顔から突然真顔に戻ったアイリスに若干の戸いを覚えながら、ロノムはアイリスに求人掲示板を眺めていたわけを説明する。

「この間ゲンさんとも話をしたのだけど、我々シルバー・ゲイルは今最人數の三人しかいない狀態だからね。ダンジョンのこととかも考えるとフルパーティの六人は集めた方がいいのか、そう言うことを悩んでいたんだ」

「なるほどなるほどー、確かに悩みますねえ。私としては理想のパーティが組める六人、むしろそれ以上にいた方がいいと思いますけど、そうなるとアライアンス経営とか大変になりますものねえ」

「そうなんだよね。人を増やすとアライアンス経営がどうなるかと言う不安もあるし、そもそも団希の冒険者がいるのかどうかと言う問題もあってね……」

冒険者は自分の命を切り売りしている商売であり、それだけに銭勘定やの置き場に対して強かでシビアな人種が多い。

ロノムもベテランの冒険者なので、その覚はで分かっている。

「主流なのは冒険者ギルドにお願いして求人を出すことだけど、その場合はギルドに斡旋料を支払わなければならない。それに運よく名前を売りだせてきているとは言っても、うちみたいな人のない新設アライアンスだと人が來てくれるかどうか分からないのが辛いところかな」

「ふむふむ」

「あとはフリーの冒険者を直接勧するとか……かな。ただ、フリーの冒険者の宛てがないからなあ……」

アンサスランの冒険者ギルドは冒険者個人の登録をけ付けておらず、アライアンスに所屬することで冒険者としての仕事をすることができる。

つまり、アライアンス無所屬の狀態は冒険者と言うよりもただの無職なので、可能な限りアライアンスにを置いておく方がいい。

「俺達みたいな駆け出しアライアンスこそ即戦力を求めているんだけど、冒険者として能力の高い人は新設の人數アライアンスなんて中々きてくれないからね。正直ミスマッチだと思うよ」

「難しいですねえ。私が前に所屬してたアライアンスは大手なので他のアライアンスからガンガン引き抜きとかしてましたけど、そんなことしてたら敵を作っちゃいますものねえ」

「それこそ大手アライアンスの手段だね。まあ、求人についてはメルティラさんやゲンさんときちんと相談して決めようか。ダンジョン探索の許可も貰ったし、メルティラさんと合流したら早速ダンジョンへ向かおう」

「そうしましょー」

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「今回のダンジョンはL-6ダンジョン。リザードマン・ポストと言う通稱がついている」

小川近くの平原に野営地を張りながら、ロノムはアイリスとメルティラに今回のダンジョンの説明をしていた。

「リザードマン・ポストと言うことは、魔はリザードマンが中心となっていて罠のない力押しのダンジョンと言うことでしょうか」

「ご名答。分かっているとは思うけど、リザードマンは獨自の規律を持っていて連攜を取りながら襲ってくる。リザードマン達のきにわされないように注意していこう」

リザードマンもオーガと同じく舊文明が作り出した魔である。

単での攻撃能はオーガに劣るかわりに、チームを組んで侵者達の行く手を阻む厄介な存在だ。

魔法の使える個は確認されていないが剣や槍と言った武で武裝しており、ある程度の知能も備えている。

「あと、前回探索許可を出したアライアンスが攻略に失敗したのか誰も報告には來ていないらしい。ギルドからのミッションとしてはその確認も一応含まれているので、そのつもりで」

「はい！」

「よし、ダンジョンへ潛しよう」

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「前方から三、後方から二來てるな……。メルティラさんは前方の三をひきつけてしい、アイリスさんはメルティラさんの後ろで支援を。俺は後方の二を片付ける……。いくぞ！」

「「了解です！」」

ダンジョン奧の未踏地を歩いていると、ロノムが常時展開している探知魔法に魔の反応が引っかかった。

ロノムは戦闘に集中するため探索の魔法を一度解消する。

そして後ろへ駆け出しに潛んでいたリザードマン達の前に躍り出た。

後方から奇襲をかけるつもりが逆に奇襲をかけられる形になったリザードマン二は一瞬うろたえるもすぐに武を構える。

しかし練の白兵士の前にあってはその一瞬が命取りだった。

「はっ！」

ロノムのハンドアックスがリザードマン一の首を一瞬にして跳ね、その流れでもう一のリザードマンを蹴り飛ばす。

バランスを崩したリザードマンの部に対してハンドアックスの一撃をれ、僅かな時間でリザードマン二を沈黙させた。

再び前方に駆け戻るとメルティラが二のリザードマンを相手取っている。

床には既に一のリザードマンが転がっていた。

「おらぁ！」

ロノムは前方に躍り出るとメルティラが捌いていた一のリザードマンに飛び蹴りを食らわせる。

不意打ちの飛び蹴りをけ床に倒れ込んだリザードマンをハンドアックスの一撃で仕留めすぐに最後の一へ向き直ったが、メルティラのすらりとした片手剣がリザードマンの心臓部分を貫いたところだった。

「流石メルちゃん！　白兵士としても高ランク貰えそうですね！」

「ロノム様、アイリス様の支援あってこそです。私一人では防衛士の仕事で手いっぱいですよ」

褒めちぎるアイリスと謙遜するメルティラを見て微笑ましく思いながら、ロノムは戦闘中解除していた探索の魔法を再び複數展開し始めた。

と同時に、探索の魔法に引っかかった弱々しい生反応に気付く。

「およ？　ロッさんどうかしました？？」

「いや、すぐ近くの小部屋に何かがいるんだ。野生が紛れ込んだにしてもここはダンジョンの奧の方だし変だなと思って」

「ふうむ……一応、確認してみましょうか」

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小部屋の扉は側から荷や瓦礫で理的に封印されていた。

ロノム達三人は扉をこじ開けると、奧には年ともともとれる冒険者が傷だらけで倒れている。

「前回探索したアライアンスのメンバーだろうか……。アイリスさん、ひとまず治癒と活をお願い」

「任されました！　草木(そうもく)に浮(う)かぶ朝(あさ)の白(しらつゆ)は妖(ようせい)の集(あつ)めた花(はな)の(みつ)。それはきっと一匙(ひとさじ)の砂糖菓子(さとうがし)。癒しの力をここに！　リジェネレイト！！」

話の一ページのような詠唱を唱えながらアイリスは治癒魔法を発させる。

魔法の詠唱文言は特に決まっておらず人それぞれだ。

同じリジェネレイトでも中には「お前ならやれる絶対にできるって頑張れもっと自分の力を信じろ！　だからもっと！！　熱くなれよおおお！！！」と言ったような詠唱をする人もいる。

「ここに書いてあるのは……アライアンス名でしょうか。ええと、なんて読むのでしょう……？」

治癒魔法を施されている冒険者の服から、メルティラが刺繡を見つけた。

「アライアンス『ストーム・ブレード』か……大手アライアンスでは無いと思う。ちょっと待っててね」

そう言うとロノムは魔法式メモを展開し検索する。

「あった、最近結された総人數四人の小規模アライアンスだね。団長はゾルーと言う防衛士らしい」

「この方は防衛士ではないようですから、なくともゾルーと言う方ではないですね。他のパーティメンバーの方はどうなさってのでしょうか……」

「分からない……。前回探索から十日以上経っているし、ダンジョン探索報告がギルドに上がっていないことを考えると最悪のケースであることが濃厚か……」

ロノムとメルティラはそんな話をしながら、アイリスのリジェネレイトを見守り続けていた。

魔法の詠唱は視覚的にわかりやすいように、加えてエクスエルとか言うクソ破壊士が読みにくい詠唱を連発しているので全編ルビを振っています。