《【書籍化】探索魔法は最強です~追放されたおっさん冒険者は探査と知の魔法でり上がる~》27.ダンジョン探索(2)―眼を狙え!

「話には聞いたことがある……獅子と山羊と蛇が一となったその姿……キマイラだ!!」

ロノムのび聲を聞いてか聞かずか、キマイラはロノム達一行に向かって突撃をしてきた。

「させません!!」

前腳だけでも自分の長以上の長さを誇る獣の突進を、メルティラは大盾と共にを張ってけ止める。

そしてお返しとばかりに左前腳を片手剣で払うように斬りつけるが、皮が厚く思ったようなダメージは與えられていない。

と、同時にキマイラの右肩からびた山羊の赤い目がり、中空には青白い魔法陣が展開された。

「吹雪の魔法だ! アイリスさん、対抗できる防衛魔法を!」

「砂漠(さばく)の風(かぜ)は行(ゆ)く手(て)を阻(はば)む。ゆらゆら揺(ゆ)らめく炎(かげろう)は、あらゆる旅人(たびびと)を拒絶(きょぜつ)する。展開(てんかい)せよ! フレイム・ウォール!!」

アイリスの詠唱完了と同時にメルティラの周囲が炎の渦に包まれた。

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それよりもし遅れて山羊頭の口から凍てつく氷のブレスが吐き出され、炎の渦と相殺する。

「はっ!!」

ロノムはキマイラの後方に駆けだしてサソリのような尾による一撃を躱しながら、後ろ足にハンドアックスによる斬撃を加える。

しかし、その鋼鉄のような皮が裂けわになるものの、キマイラはたじろぐ様子はない。

どころか山羊頭と対をなす肩口から生えた蛇の頭がロノムの方を向き、紫と黃り混じった魔法陣を展開する。

そして魔法陣が輝き、雷撃のような一瞬の攻撃がロノムの右肩をかすめていった。

「あっぶねえ! 直撃したら間違いなく黒焦げだなあれは……!!」

ロノムがハンドアックスを構え直し蛇の頭と対峙する。

「ロノム隊長! 援護します!!」

ルシアがそうぶと銃を構え蛇頭に対して數発の銃弾を発砲した。

だが蛇頭に傷がついた様子はなく、逆にルシアへと向き直ると何らかの魔法を展開し始めた。

「ルシアさん! 危ない!!」

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ロノムは即座に駆け出してルシアを抱えこみ、大きく跳躍する。

その一瞬後にルシアの居た場所に雷が直撃し、地面を黒焦げにした。

「す、すみません隊長!! ありがとうございます!!」

「大丈夫だ! あと、ルシアさん細すぎ軽すぎ! 今日から飯増量と毎日筋トレな!」

「わ、分かりました!」

ロノムはルシアを抱えたままアイリスの傍に著地する。

そして現狀を説明し全員に手早く指示を出した。

「キマイラの後ろ足を見てくれ、俺の一撃で皮を裂いたはずだが既に傷口が塞がっている。どうやら生半可な攻撃をしたところで無駄らしい」

「確かに、確かに治癒しておりますね……! と言うことは、倒せないと言うことでしょうか!?」

ルシアの言葉にロノムはかぶりを振った。

「いや、弱點がある! 俺の聞いた話が與太話じゃなければ、あいつの魔力の源は獅子頭、山羊頭、そして蛇頭にそれぞれある三対の眼だ! 今からそれを俺とルシアさんで潰しにかかる!」

「アイリスさんはメルティラさんの援護を! メルティラさんは眼を潰そうとか考えなくていい! キマイラの攻撃を凌ぎながら、俺達が眼を潰しきるまで耐えてくれ!」

「りょーかいです!」

「承知いたしました!」

アイリスとメルティラがロノムの指示を諾する。

「ルシアさん、行くぞ! 蛇、山羊、本の順だ! 眼を狙え!!」

「はい!!」

そうぶとロノムとルシアは駆け出し、キマイラの右方向へと回りこむ。

蛇頭は二人の姿を追いながら中空に紫と黃の魔法陣を複數展開し、その全てから雷撃が吹き荒れた。

雷撃の嵐を間一髪躱しながらキマイラへと接近するロノムとルシア。

まず一撃を加えたのはロノムのハンドアックスだった。

「はぁ!!」

ロノムはキマイラの後腳を駆け上り蛇頭の元に斬撃を加える。

立派な樫木よりも更にじながらも手応えはあった。

蛇頭はシャーともギャーともつかぬ悲鳴を上げながらのた打ち回り、キマイラ本の方もロノムを振り落とそうと暴れ出した。

その隙を見てロノムは中空へと舞い上がり、蛇の右目に向けて強烈なハンドアックスの一撃を決める。

「今だ! ルシアさん!!」

「任されました!」

ロノムがキマイラと立ち回りをしている間に至近距離まで接近してきたルシアが銃を構えた。

対して蛇頭は魔法陣を中空に濫作(らんさく)し、その全てから電撃を発しようとする。

しかし、電撃は発されることなく魔法陣は消え失せる。

ルシアの放った一発の銃弾は蛇頭の左目に命中し、同時にキマイラの蛇頭は斷末魔を上げ活を止めた。

「よし! 次は山羊の方だ!!」

「向かいます!」

蛇頭が倒された時點でキマイラは狙いをロノム達へと定めようとした。

「させませぬ! あなたの相手は私です!!」

だが、正面に構えたメルティラは片手剣で顔面付近を攻撃し、キマイラを挑発する。

「妖達(ようせいたち)は騒(さわ)がしい。嫌(きら)いなことには敏(びんかん)だ。中(なか)でも痛(いた)いの大嫌(だいきら)い。発現(はつげん)せよ、治癒(ちゆ)の力(ちから)よ! ヒーリング!!」

アイリスも時には治癒し時には防魔法を駆使しながら、メルティラを援護していた。

一方の山羊頭は蛇頭よりも狡猾に立ち回ろうとしていた。

ゆらゆらと頭を揺らし容易に狙いを定めさせない。

と、同時に白と青の魔法陣を展開し吹雪のブレスを対峙したロノム達へと撒き散らす。

「厄介なきをしやがって……! ルシアさん! あいつのきが止まれば、眼球を二つとも撃ち抜けるか!?」

吹雪のブレスを躱しながらロノムはルシアに聞いた。

「多分……いえ! やれます!! 撃ち抜けます!!!」

「よく言った、チャンスは一回だ。次の攻撃で相手のきを止めるから、よーく狙え!」

そう言うとロノムは今度はキマイラの前腳を駆け上がる。

そうはさせまいとキマイラの山羊頭も怪しく両目をらせ魔法陣を展開した。

そして吹雪のブレスをロノムに向かって吐き出す。

ロノムは吹雪を躱さない。

真正面から凍てつく氷のブレスをけた。

「ロッさん!?」

アイリスが驚くもロノムの進撃は止まらない。

ロノムは一上の都合により、吹雪や氷の魔法に対してある程度の耐と言うか慣れが出來ていた。

「運していて暑かったところだ、丁度いいぜ!」

この場にはいないエクスエルに対してほんの僅かに謝をしながらキマイラに対してぶと、ロノムは山羊頭の付けである右肩を土臺に蹴り上げ、ブレスを吐き続ける山羊頭の顎にアッパーを食らわせた。

吹雪のブレスを吐き続けていた山羊頭の顎が突然閉ざされたことにより口腔で吹雪が発する。

によってだらりと山羊頭は首を垂れ下げ、僅かな時間ではあるが沈黙した。

その隙をルシアは逃さない。

數発の銃聲が轟くと、弾丸は山羊頭の両の眼に命中し活が止まった。

「や……やりました!!」

「よくやったルシアさん! 殘るは本だけだ!!」

しかし、ロノムがそうんだと同時にキマイラの本たる獅子の頭が大きな咆哮を上げ、突然の衝撃波が発生する。

前方で対峙していたメルティラも含めてロノム達四人はその攻撃により大きく吹き飛ばされ、部屋の壁に叩きつけられた。

「く……! みんな大丈夫か!?」

ロノムがパーティメンバーの方を見回す。

「な……なんとか……!!」

しかし返事をし、よろよろと立ち上がったのはアイリスだけだった。

メルティラとルシアは息はあるものの、先程の攻撃によって立ち上がれないような狀況が見て取れる。

そしてロノムが再びキマイラの方を見ると、キマイラは朱をした大がかりな魔法陣を展開し、炎の魔法で今にもロノム達を焼き盡くさんと言うばかりの構えをとっていた。

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