《【書籍化】探索魔法は最強です~追放されたおっさん冒険者は探査と知の魔法でり上がる~》37.第一章エピローグ

「ゲンの言った通り、谷底でドディウスのが見つかったよ」

「そうか……。フィスケル、手間をかけさせたな……」

古い集合住宅の一室で、冒険者ギルドの制服にを包んだ初老の男と白髪じりの頭をした男が會話をしている。

昨晩の事件の後、ロノム達はすぐに冒険者ギルドへと報告し、ギルドによる捜索隊が編された。

そしてその日のうちに、ドディウスのが発見されることとなった。

背後関係の調査等にはまだ時間がかかりそうではあるが、ロノム達にとっては一応の事件解決を見せたこととなる。

「ドディウスも々あったんだろうよ。お前はそう気を落とすな」

「あいつはよ、俺からしてみればいいライバルのつもりだったんだ。ライバルだと思っていたのは俺だけだってのも、し寂しくてな……」

後塵は拝していながらも、全盛期のゲンディアスと僅かでも比肩しうる可能のある防衛士はドディウスしかいなかった。

それ故に今回の事件でゲンディアスは寂しく、また、孤獨をじてしまうような心持ちであった。

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「ま、報告はしたし、私はギルドに戻るよ。まだまだ殘務があるんでな」

「ああ、済まねえな。また茶でも飲みに來い、歓迎すっからよ」

「そうだ、忘れるところだった。これ、五日後のギルド役員會の會議要綱(ようこう)な。三十日に一回は開催してるから、欠かさず顔を出せよ」

そう言うとフィスケルは薄めの冊子を取り出し、ゲンディアスへと手渡した。

「な……!? ギルドの職員はやらねえって言ってるだろ?」

「昨晩お嬢さん方をお守りしたのは、誰だったかな?? よもや貸した借りを返さぬのがゲンディアスの流儀とは言わんよなあ?」

「ぐ……わーったよ! 行きゃいいんだろ全く……!!」

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「で、不肖このアイリス、思ったわけですよ。ロッさんは役者としては三流だなーと」

「え、ええ……」

「あの悲鳴はなんですか『うわああ』って。完っっっ全に棒読みだったじゃないですか。あれじゃあ観客はついてきませんよ!」

アイリスのダメ出しにロノムは困する。

本人からしてみればあれは渾の演技のつもりだった。

「うむ……。ロノム、私も正直あれにはヒヤヒヤしたぞ」

「エ……エクスさんまで……。そんなにひどかったかなあ……」

ロノムとアイリス、そしてエクスエルは冒険者ギルドにある待合場所で話をしていた。

現在冒険者ギルドから事件に関する聴取をけているメルティラとルシア、ネシュレムを待つためである。

ロノム達三人の聴取はすでに終わっていた。

「しかし……レッド・ドラグーンはこれからどうなってしまうんだろうね」

「正直分からん……何年も組織を率いていた団長が、起こしてはならぬ事件を起こしたままいなくなってしまったからな」

レッド・ドラグーンは冒険者総勢約四十名と言う規模の大きいアライアンスである。

しかしその経営はドディウスのワンマンに近く、また、ドディウスに勧されて所屬した冒険者もなくなかった。

十數年以上経営の中心にいたドディウスが、このような形で突然不在となってしまったことはあまりにも衝撃が大きい。

「エクスさんはどうする?」

「私とネシュに関して言えば、もうレッド・ドラグーンにはいられないさ。どうしたって渦中の人だからな。どこか別のアライアンスにるなりして、冒険者は続けていくつもりだ」

「それじゃあさ、二人で俺のところに……シルバー・ゲイルに來ないか? 人手不足のアライアンスで申し訳ないけど、みんな歓迎する」

「ありがたい申し出だがやめておこう。元レッド・ドラグーンのお前のところに私達が行けば、間違いなく引き抜きだの騒の黒幕だの言われて角が立ち、迷をかける」

若干寂しそうな顔を見せながら、エクスエルがロノムの勧を斷った。

「そうか……。それもそうだし、殘念だな」

「酒を飲むなら付き合おう。それと、ネシュとは変わらず仲良くしてやってくれ」

「勿論ですよ! エクっさんも我々のお茶會に參加したければ、席を空けて待っておりますよ!!」

「い……いや……。私は遠慮しておこう……」

そんな話をしているうちに、メルティラとルシア、そしてネシュレムが聴取から解放されて部屋から出てきた。

ロノム達一行はシルバー・ゲイル本部に、エクスエルとネシュレムは別の方へと、それぞれ帰っていった。

*****************************

喧噪に包まれた場末の立ち飲み酒場で、顔に大きな傷のある筋骨のしっかりした赤い髪の男が獨り、麥酒を飲んでいる。

この酒場はいつも変わらない。

安いなりの酒しか出ない上にいつ行っても喧騒が絶えず、客は下品。

店主はいつも不想だし給仕も雇っていないため、酒を注ぐのも飯を注文するのも店主のところまで行ってのセルフサービスだ。

それでいて肴だけはやけに味い。

ロノムはこの酒場が何よりも好きだった。

「よお。今日はアイリスはいねえのか」

そんな一人酒をしているロノムに対して、白髪じりのガタイのいい男が聲をかけてきた。

「アイリスさんは後で來ます。今日はメルティラさんとルシアさんの三人で仕立て屋に行ってから來るそうですよ」

「そうか……」

ゲンさんが丸テーブルに麥酒を置き、神妙な表をしてロノムに言う。

「なあ、ロノム……今回は、俺の過去の因縁で迷かけちまって申し訳なかった。それと、その……今まで黙ってて済まなかったな、俺の事とかよ」

「流石に驚きましたよ。半ば伝説と呼ばれている人の知り合いなんていなかったもので、あの時ドディウスさんに言われても何のことだか分かりませんでした」

麥酒を飲みながらロノムが答える。

「不思議なものですね……。知らないところで々な出來事や人が繋がっていて、それが今回の事件になったりして……」

そしてゲンさんに対して軽く笑みを浮かべながら、答えの分かっている問いを聞いた。

「一応、聞いておきます。ゲンさんは『剛盾(ごうじゅん)のゲンディアス』と『飲み友達のゲンさん』、どっちがいいですか?」

ロノムのその言葉に、しぼんでいた顔に満面の笑みを浮かべながら、ゲンさんは答えた。

「……そりゃあもう……決まってるじゃねえかよ……!」

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