《【書籍化】探索魔法は最強です~追放されたおっさん冒険者は探査と知の魔法でり上がる~》58.何事だ? 王都に何があった!?
「……何かあったんですかね」
「焦げ臭いな……戦闘の後か? こりゃあ」
王都への帰り道、ロノム達一行がダンジョンのあった森林地帯を抜けて街道まで戻ると、草木は踏み荒らされ黒煙がくすぶっていると言ったような狀況だった。
「人……だけではないですね……。魔のような痕跡も見けられます。何があったのでしょうか」
メルティラが踏み荒らされた跡をその手でなぞりながら言う。
「馬鹿な……ここは王都からさして離れていない街道だぞ? 魔との戦闘なんてあろうはずがない」
王都冒険者ギルドから派遣されたお目付け役、シルヴィルも怪訝そうにしながら周囲を見渡す。
「とにかく、一旦王都まで戻りましょう。事が分かるかもしれません」
狀況は分からないが、王都まで戻れば詳しい話が聞けるだろう。
ロノム達一行は王都へと向かう街道を速足で歩き続けた。
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一行が王都に続く街道の途中にある見砦まで戻ると、そこは蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。
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斥候兵達がせわしくき回り、王都の騎士団が隊伍を組んで整列し待機している。
「お……おい、何事だ? 王都に何があった!?」
シルヴィルが騎士に指令を與えている甲冑姿の男に慌てながら聲をかける。
「は! シルヴィル・グレツウィル卿でありますか! 魔です。ドラゴンと思われる魔が多數現れ、ここ、見砦まで襲撃して參りました!」
「ドラゴンだと!?」
甲冑姿の男の言葉に目を丸くしながら、シルヴィルが答える。
「詳細は我が団の団長からお話させましょうか!?」
「ああ、宜しく頼む」
シルヴィルのその言葉を聞いて、甲冑姿の男は砦の口へと向かっていく。
そしてし間を置いた後に、この砦の責任者と思しき髭面の男を連れて戻ってきた。
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「漆黒のドラゴンが眷屬のドラゴンを率いて……か……」
見砦付近で、ロノムが砦の責任者である髭面の男から聞いた話を反芻しながらぼそりと呟く。
「確かにドラゴンは外で暴れる事もあるけどよ、こんな街の近くであるもんじゃねえぞ?」
ゲンさんも近くの巖に座りながら難しい顔をした。
「しかも漆黒のドラゴンが率いている眷屬もドラゴンなんですよね……大ボスがボスを率いているようなものですよ……」
ルシアも街道の方を眺めながら、不安そうにしている。
砦の騎士団長からの話によれば、漆黒のドラゴンが幾多の眷屬を引き連れて王都の領土を攻め、一時は最終防衛ラインに近い見砦まで迫ってきたとの事だった。
幸いにも王都の冒険者や騎士団の活躍によって撃退はできたようだが、なくない被害が出たと同時に王都の平和を揺るがすような事態となった。
「グレツウィル卿、王都より伝令があります。『ロノム様達アンサスランの冒険者一同にも、この事態に協力頂けるよう打診しては貰えないか?』とのことです」
用意された簡易的な椅子に腰かけているシルヴィルに対して、革鎧姿の男が駆け寄り聲をかける。
「それはやはり、シルバス様とローレッタ様の言伝(ことづて)か?」
「は! 明察の通りです!」
シルヴィルの言葉に革鎧の男がビシっと姿勢を正して答えた。
「あの方達はアンサスランの冒険者に対して何やら興(ごかんきょう)であるからな……。というわけでだ。君達にもこの件で働いてもらいたいわけだが、宜しいかな?」
苦笑いを浮かべながらロノムに問うシルヴィル。
「ええ。我々としては構いませんよね? ゲンさん、シーリアさん」
「ああ、乗り掛かった船だ。問題ねえ」
「アンサスラン冒険者ギルドとして、シルバー・ゲイルに協力の許可をお出しします」
ロノム、ゲンさん、そしてシーリアがその要請に快諾する。
「ひとまずダンジョンの報告書はゲンさん達にお渡ししておきます。俺達は一回戦闘の跡を調査してきます」
「それならば吾輩も同行しよう。吾輩とて元冒険者の端くれ、何か分かる事があるやもしれん」
ロノムがそう言ってゲンさんに報告書を渡し、シルヴィルも席から立ち上がる。
「ああ、何が起こるか分からんから、気を付けろよ」
「だいじょーぶです。無事に戻って參りますよー」
アイリスが力したような聲と共にビシっとした決めポーズを見せた後、ゲンさんとシーリアに見送られながら、ロノム達一行とシルヴィル、そして案の斥候一人が見砦を出発した。
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「このひときわ大きい足跡が、大ボスである漆黒のドラゴンのものではないかと思います、対して眷屬は思ったほど大きくはないみたいですね。いえ、魔の中では充分巨と言えますが」
ロノムがシルヴィルと共に戦場の跡を見ながら、説明する。
「ロノム隊長、かつて魔だったと思われる砂のようなものがありました。やはりダンジョンから出てきたもので間違いありません」
ルシアが砂だまりを指さしながらロノムに言った。
「やっぱりダンジョンかられ出てきた魔なんですかねぇ。これ程大規模となると他に例がない気がするんですけど、王都ではよくあることなのでしょーか?」
「アンサスランで無いのならばこの王都にあるわけが無かろう。ダンジョンの數で言えば、圧倒的にないのだからな」
アイリスの疑問にシルヴィルが答える。
「魔はダンジョンから溢れ出てきた可能が高い。そして大ボスと思われる漆黒のドラゴンは巨大だが、眷屬達はドラゴンの中ではそれ程大きくはない……と言ったところか。ドラゴン達がダンジョンに戻ったのかどうかは分からないけど、ダンジョンに潛って殲滅するにしろ外で迎え撃つにしろ一長一短だな……いずれにしろ、キーとなるのは漆黒のドラゴンと言われる存在か」
ロノムが獨りそう呟いたのとほぼ同じくらいであろうか、「ドン」と言う地響きと共に空気が揺らぎ、一緒についてきた斥候兵がもちをつきながら悲鳴を上げる。
そこにいたのは、黃金をしたドラゴン。
を眩く反する鱗に覆われ、その左目の上付近にはロノムのハンドアックスがつけた傷が殘っていた。
あの時アンサスランで対峙したものと同じドラゴンである。
「黃金のドラゴン……!」
ドラゴンはロノム達を見下ろしその上を持ち上げ大きな咆哮を上げた。
その咆哮にあわせてロノム達四人は戦闘態勢を取る。
「間違いありません、アンサスランの近くで戦ったあのドラゴンです!」
そしてメルティラの聲に呼応するかのように、黃金のドラゴンはその飛を広げ飛び立った。
「みんな、追うぞ!」
ロノムの掛け聲と共にロノム達一行はドラゴンが逃げる方へと駆け出す。
「あ、待て! お前達!! ……ええい!」
ワンテンポ遅れてシルヴィルが駆け出しながら、一緒についてきた斥候兵に聲をぶ。
「お前は見砦に伝令を! 吾輩はあのドラゴンとアンサスランの冒険者達を追う!」
「は……はい! 了解しました!」
もちをついていた斥候は命令を諾し駆け出す。
それを確認する余裕もなく、シルヴィルはロノム達を追いかけた。
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