《うちのダンナはぽっちゃり男子》2 慣れとはなんぞや
こんなエッセイを書くぐらいやから、「ああこの人、デブ専なんや」って、読者のみなさんから「可哀想にね」っていう生暖かい目で見られているであろうことは百も承知なんですが。
いえ、違(ちゃ)います。
特に二次元では、ちゃいます。
逆三角形の背中萌えとか上腕二頭筋萌えとかは暑苦しいぐらい持ってますが、そもそも下半に重心がくるタイプの男子の型に萌えた覚えなど、この人生で一度もございません。
格的なことも、うちのダンナとは真逆の男子のほうがはるかに好みだということは、私の小説に接してくださったことのある方にはもう十分にお分かりいただけることでしょう……って、いやいや、「だから読んで」とか申し上げているわけではありませんので、誤解のなきように!
そもそもあれです、もともとは私は貓を飼ってた人間で。
実家で飼っていた貓でしたが、家族の中でいちばん私に懐いていたということもあって、一人暮らしをする時、そのまま連れて出たわけです。それで、そのまま結婚するときも「連れ子」よろしく一緒に貰っていただいたと。
やがて人(・)間(・)の(・)子供も生まれまして、貓のほうはまあ二十年以上も生きてくれた結果、大往生したわけなのですが。
貓ってほら、でると気持ちいいやないですか。
それはわんこも同じですよね。
なんやっけ、アルファ波たらいうのが出るんやったっけ。
でてると気持ちが落ち著くでしょう?
んで、貓が天國にいってしもうてから、ふと隣を見たらですね。
……いたんですわ。
なんやしらん、結婚したときにはなかったはずのぽっちゃりしたもんが、隣に。
前回も申しましたとおり、そらもう綺麗なぷりぷりおのぽっちゃりしたおが、隣に……。
あれですね、あとで聞いたら、結婚前はダンナなりに、々努力してダイエットしてたって言うんですわ。
なんやっけ、ヨーグルトダイエット?
もう夜中、食べの夢しか見られへんぐらいになるまで努力したらしい。
うわ〜、泣けるわあ。
その頃の私の仕事が、ちょっと夜遅く帰ってくるやつやったもんで、夜の十一時とかに夕食になってしもうてて。それをこの超絶さびしがりや野郎が「だって一緒にゴハン食べたいもん!」って言うので一緒に食べていたらですね。
あら不思議。
ほんの二年ぐらいで、みごとなぽっちゃりが出現しておりました。
私のほうは別に型変化などはなかったのに。
こればっかりは、新陳代謝の差のようです。
ダンナは「幸せ太りやから」とかを張ってましたけどね。
いや、どんなにはっても最も出てるのはおなかやけども。
ま、とにかく。
無意識にそれが始まりました。
もみもみもみ。
「きゃあ、やめて!」
もみもみもみもみ。
「いやあ、くすぐったい!」
もみもみもみもみもみもみ。
「やあん、●さん(私の名前)、もう許してえ!」
もうあきません。
ドSに火がつく、ってこのことですな。
なにしろダンナはくすぐったがりで。接骨院とか行っても、施の間、必死でび聲をあげそうなのを我慢するぐらいでしたもんで。
その反応が楽しくてどんどんもみまくっていたら、あれ、不思議なもんですね。
人間、やっぱり慣れるらしい。
前はわき腹とかちょっとむだけで「ひゃあん!」とか言ってたのが、だんだんじなくなって平気になってきたんですね。
こうなってくると、私はつまらん。
無反応でされるがままって、なんかちっとも面白くない。
「つまらん!」
「萎える!」
「ち〜っとも、面白くない!」
とぶことがしばらく続いたら。
今度は次の手が始まった。
もみもみ。
「…………」
五秒ぐらいしてからやっと、
「いやん、ヤメテ」
「…………」
その時間差がもう、許せません。
「なんやねん、今の」
私の聲、地をはってると思ってください。
「え? だって反応がないと●さんすぐ『つまらん! 面白くない!』って言うやん」
「……は?」
「いや、だからちょっと反応を……」
なんですか。
演技ですか?
いや、演技なら演技でもええけども。
それならそれで、もっとちゃんとやらんかい!
以後、私たち夫婦の間ではよくこういうやりとりが続いております。
「……いやん、あはん」
「せやから。三億五千萬年前のやつは要らんっちゅうてるやん!」
「……生まれてへんし」
あ、最後のセリフは小學生の娘のやつです。
娘はこんな親のやりとりにすっかり慣れきっているために、そのすぐ橫で平気で宿題やったり漫畫かいたりしておりますんで。
近頃の私は、だからよりきわどいところまでもみに走っているため、詳しくはここで言及できませんが。
「さ、さすがにソコはダメ! もうボクの、ほとんどサンクチュアリがなくなってるし! もうこんっくらい、五円玉ぐらいしか殘ってへんし!」
しまいめに涙目でそこまで言わせなくては止まれなくなってきた今日この頃の私。
しかし、「聖域(サンクチュアリ)」とはこれいかに。
まあBL書きで紛れもない腐のヨメを貰ってしまったダンナには、々あきらめてもらうしか仕方があるまい。
そう、イロイロとね。
うふふふ……。
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