《うちのダンナはぽっちゃり男子》14 癡とはなんぞや

はあ、まあ読んで字のごとしですわな。

癡漢が男ならば、癡はその版。

ついにこれを語るときが來たか……!

とか、別に気負うほどのことはなんもありません。

ダンナは、いまでこそ妙齢のぽっちゃりな白オッ○ンではありますが、昔は子も真っ青なぐらいにほっそりした、まあ悪くいえばガリガリ男子やったそうです。

確かに昔の寫真を見せてもらうと、「だれやこれ!?」って本當にわかんないぐらいに人相まで違います。やたら白なのは同じですけれどもね。

あ、何度も言いますがべつに男子でもなんでもないですからね?

単に痩せてて白で小柄なお兄ちゃんやったと、そういうことです。

んで、當時、18歳で、専門學校生やったダンナは、電車通學をしておりました。関西圏なので、阪急を使っていたんやそうです。

で、問題のソノカタは、別にまったく混んでもいなかった車両で、橫一列に並んでる座席の前で吊り革につかまって立っていたダンナの脇におられたんやそうです。

ダンナ、「なんやろなあ」と、確かにちょっと不思議には思っていたんやそうです。

なんちゅうて、別に混んでもいないのに、だんだんとそのが、じわじわ、じわじわとこちらへ橫からを寄せてこられるんやと。

ほんでしまいめに、をこちらに向けて、つまり側をダンナの側へもうぴったーっとくっつけてじーっと立ってはったんやそうです。

こわ!

こわ!

いや、最初にこの話を聞いた時には、私も言うたんですよ? 「わ〜、それラッキーとちゃうの」って。

ダンナ、首と手をぶんぶん振ってめっちゃ否定してました。

「いやいやいや! 怖いから! 冗談やないから!!」

當時のダンナ、もう怖くて怖くて、吊り革もったままかちんこちんに固まって、とにかくじーっとしてたんやそうです。

怖すぎて、相手の顔など見ることもできんかったと。多分、スーツかなんかお召しになってたと思うそうですが、報といったらそのぐらいです。

そのかたは、阪急の十三(じゅうそう)っちゅう駅で、車両のドアが開いたとたんにぱっと風のように降りていかれたそうで、それっきりやそうです。

いったいなんやったんでしょう。

なんか、求不満でもおありやったんでしょうか。

いやまあ、妙齢の子にはイロイロありますもんね。

ぽっちゃりでもないがりがり白男子(まあ見たじ、年といっていいぐらいやったはず・作者(ヨメ)の勝手な妄想)にぴったりをくっつけて、その方はなにか癒されたんでしょうか。わかりません。

ついでながら、さらにその四年後、ダンナ22歳の時には、なんとほんまもんの癡漢にも遭遇したらしい。

やっぱり電車の中でした。

當時はもうダンナも一応社會人やったんですが、スーツ著てするような固い仕事やなかったもんで、なんや襟ぐりのやたら広い、ぺろーんとしたTシャツを著てたんやそうです。髪も長くしてて、ネコっのさらさらやったと。

また白、かつなで肩なもんで、そこからぺろーんと肩が見えるぐらいなじやったんやと。

ほーしたらアナタ、背後に立ってる男の息がだんだんと荒くなってきて。

「ふーっ、ふーっ」て、その息が首の後ろとかうなじとか、肩とかに當たるっちゅうんですわ。

最初にその車両に乗って來はったときには、間違いなくそんな息遣いではなかったので、明らかにダンナのカラダにどないかされてもーたっちゅう流れでしょうな。

こわ!

やっぱり癡漢も怖いわ、ダンナ。

その時もやっぱり、ダンナはなんもできんと、相手がやがて降りていくまで、ただ怖くてじーっとしていたんやそうです。

だって中、ウサギやもんねえ。

ぽっちゃりでこそなかったんでしょうけども、狼の牙の下でぷるぷる震えている、寂しがりやのウサギ男子を勝手に妄想して萌えるヨメがここにおりますぞ。

そういえば、なで肩といえば、著が似合いますよね。

でもダンナ、なで肩すぎて夏祭りなんかでご近所のおばちゃんがたに浴を著せてもらっても、すぐにてろーん、ぺろーんとなってしまっていたそうな。

「○ちゃん、あかん! そらあかん! 襲われんで〜!」

って、よくそのおばちゃんがたから笑われていたそうなんですが。

いや、冗談やありませんて。

ほんま危なかったんですって。

一歩間違ったら、イケナイ世界へまっしぐらやったかも知れませんて!

ま、今はぽっちゃりに変貌したそのでもって、ほかならぬこの私が日々、もみもみ癒されておりますけども。

あははは。

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