ヒヤリとした。指を突き付けられ、鏡を通して逆にこちらを見かされているような覚に陥る。魔法のブローチは宮廷魔師に裡に開発してもらっただが、斷罪劇においては介として使った水晶玉をカモフラージュにしていたので、クロエは知らないはずだ。

『そのブローチ、モモさん……モモ様が著けてらしたよね？　てっきりそう言う事だと思ったのだけど、違ったかしら？』

『何を勘違いされたのかは知りませんが、こんなの城下町の店で買えるような安ですよ。恐らく彼も同じを買ったと言うだけでしょう』

どうやら學校でモモが著けていたのを目敏く覚えていたらしい。當然レッドリオが贈ったのだが、ここに來て疑いを持たれるとは迂闊だった。

『店の安ね……貴方、そんな趣味してたかしら』

『何なら、差し上げましょうか？　お嬢様には々地味なデザインになりますが』

ブローチはクロエを監視するためのなので、彼が持っていてもそれなりに役に立つだろうが、仕掛けに気付かれて弄られるのも厄介だ。だが彼はじっとブローチを見つめると、ふいと顔を逸らした。

『別にいいわ。モモ様が誰にプレゼントしていようと、もう私には関係ないのだし。でもシンがあの子を好きなら、長々と私に付き合わずにすぐに王都に帰った方がいいわ』

『だから、帰りませんって。お嬢様はそんなに私を追い返したいのですか…』

続けようとしたシンの臺詞が途切れる。クロエが即座に荷をれた革袋を引き寄せ立ち上がった。

『なくとも今は……そばにいてしいわね』

『意』

映像から、迫が伝わってくる。

「何が起こっているんだ！？」

ダイがスクリーンの中でクロエを庇いながら剣を抜くシンにぶ。

「どうやら、山賊のようですね」

「山賊だと！？」

「ナンソニア山脈はダンジョンがありますので魔も多く、國を追われた罪人が徒黨を組んで山に潛み、賊となっている事が多いのです」

確かにあの辺りの地方は治安も悪く、兵団の派遣要請も度々出ていた。その多くは魔獣狩りに費やされていたのだが、その影で山賊も深刻化していたのだ。

スクリーンから悲鳴が上がった。二人が馬車に戻ろうとしたところ、者を殺されたのだ。賊は數人いて、シン一人では荷が重い。と言うかこの場合、シンはクロエを守るべきなのだろうか。もしこのまま見殺しにするか、あるいは連れ去られ躙されたとしても、レッドリオたちはシンを責める気にはなれない。

クロエの味方は、誰一人いない狀況であった。