《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》24:聖教會の返答

畑仕事の後はこの間と同じく、夕食の下拵えと給仕、後片付けだ。大これがクロエがこなすべき一日の仕事で、くたくたになっている姿を見ると溜飲が下がる一方で、大して苦にもじていない様子なのが業腹だった。

もう一つ引っ掛かったのは、ロックとやたら仲が良さげにしている事だ。ある時シンが街に下りて用事から帰って來た時、カウンターで二人が楽しげに會話していた。

『ただいま帰りました。…何をしているのですか、チャコ』

『あら、お帰りなさい。ロックにパレット村の事を聞いていたのよ』

『……モモ嬢の故郷、でしたよね』

『そう。気になる? 後で教えてあげてもいいけど』

「もったいぶらずに教えろよ」

ダイが素直過ぎる野次を飛ばすが、考える事は皆一緒だ。王都に來る前のモモ……本人が語りたがらないのでこれを機に知りたいものだが、人の悪そうな笑みを浮かべるクロエからは免被る。馴染みのロックの前で意味ありげな事を口にするのもだ。

『何だよ、チャコの兄さんはモモに気があるのか』

『変な事を言わないで下さい。貴方に兄さんと呼ばれたくもありません』

『フフッ、ロックもすっかり嫌われたものね』

『おじょ…チャコ!』

ベシン! と持ち帰った手紙をカウンターに叩き付ける。そこには聖教會の印が押されていた。

この宿屋は瘴気が濃く魔の出る山に建っているため、急時以外伝書鳩は出せない。そこで普段の手紙のやり取りは街で行う訳だ。ロックはしょっちゅう山を登り降りするのでついでに取って來てやろうかと言われたが、セレナイト公爵家の名を知られる訳にはいかないと斷った。

『チャコ宛てって事は、家族からの手紙か?』

『いいえ、聖教會からよ。ここの聖石にヒビがっている事は話したわよね。だから新しい聖石を屆けてもらおうと思って』

聲量を落としたのは、まだ將に告げていないからだろう。いつの間にかロックとの親度が上がっている。婚約者時代にはレッドリオ以外の男とは極力接を避けていたのを思えば、隨分と軽薄な行為に思えた。

それはさておき、封筒から便箋を取り出し読み進めていたクロエの表は冴えない。

『どうでしたか?』

『それが……ここの教會、と言うかグレース牧師は聖教會を除名になっているから支援の対象にはできないって』

『えっ、そうなのか!?』

何やら主人は訳ありの人だったらしい。とにかくこのままでは魔の侵を防ぐ事ができないので、別の手段で結界を張るしかなくなった。

『魔師に頼んで、魔石で結界を張り直してもらいますか』

『最近はダンジョンに參加するパーティーには見かけないし、そうなると雇う事になる。ここの経営も結構ギリギリだし、だからって俺らが払うって言っても將さんに斷られるだろ』

『……ねえ、ここってすぐ近くに上級者向けダンジョンがあるわよね』

クロエの呟きに、シンとロックは彼に注目する。

『ロック、もしも貴方が相當深くまで攻略済みなら、魔水晶を持ち帰る事ってできるかしら?』

『それって……』

『ええ、聖石を自分で作るのよ』

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