《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》38:意外な

晝食時、宿泊客や立ち寄った冒険者たちでテーブルは満席になる。シンはオーダーを取りながらもブローチを弄り、クロエの姿を王子たちに送っていた。

やがて客足が途絶え出した頃に、ロックがやってきてカウンターへ座る。將は気を利かせ、クロエに接客を頼んだ。

『お帰りなさい。新しいメンバーとは上手くいってる?』

『ああ、今日はこの宿屋に泊まるから、後で紹介するよ。みんなあんたに會いたいって言ってる』

「どうだ、間違いないか?」

「後ろ姿ですし、三年ぶりになりますから……でもあの緑のボサボサ髪には見覚えがあります」

った聲で食いるように見つめるモモの目の前で、クロエは準備していたクッキーをロックに差し出す。味見はしていたが自信がないのか、ほんのり頬を赤く染めていた。

『モモ様にはとても及ばないとは思うけど……』

『チャコが作ったのか? 俺が第一號ってのは栄だね。じゃ、さっそく…』

軽口を叩きながら皿に手をばすロックだったが、屆く前にクッキーを誰かが先に摑んだ。

もしゃり、もしゃり

鷲摑みにして口に放り込まれる様を、呆気に取られて見つめるのは、ロックとクロエだけではなかった。

「あ、あいつ何で……」

「何をやっているんですか、あのバカは」

『ふーん、本當にモモが作った方がうめえな』

そう言ってニッと笑ったのは、今日レッドリオの部屋に來なかった男、ダイだった。

『何だよあんた、不躾だな……それにモモって』

『俺はそこのの監視に來たんだよ。お前が危うく惚れ薬でも盛られないようにな。…そうだよなあ、クロエ=セレナイト』

ダイは何の躊躇いもなく、弾を落としてきた。辺境の山奧にある寂れた宿屋であっても、さすがに右宰相セレナイト公爵の名は知られている。その娘が今まで第一王子の婚約者にして、仮の聖であった事も。晝食時も終わりまばらになっているとは言え、まだ客の殘っているその場は騒然となった。

クロエは息を飲んだまま、目を見開いて俯いている。

『クロエ=セレナイト? 誰だそりゃ』

『そこの罪人の名前だよ。そいつは王都で真の聖モモを迫害し、第一王子に捨てられ追放されたんだ。一見しおらしくしてるが、ずっとお前たちを騙してたんだぜ』

『へえ……』

ロックがごとこちらを向く。モモの目が驚愕に見開かれたのを見ると、やはり知っている顔なのだろう。

(そんな事より今はあいつだ、ダイ! 貴様一何を考えている!?)

監視されている事を悟らせず、クロエをシンに依存させて手酷く捨てる算段だったはずだ。それとも、ロックの前で彼の正を暴く事で幻滅させようと言う魂膽なのか。それにしても、直球過ぎるが。

『だから?』

『へっ?』

『チャコがその、クロなんとかって人だったら何だってんだ。そんなの上、ここのダンジョンに挑む連中の中にはゴロゴロいるぞ。グレース教會は來る者拒まず、去る者追わず。そうだよな、おやっさん?』

ロックが仰ぎ見る先には、教會に通じるドアから顔を覗かせたグレース牧師の姿があった。

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