《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》39:ダイの獨斷

『あんた、王都から來たのかい? 厄介事は持ち込まないでしいんだが』

『厄介事ならこのだろ。さっさと立ち去ればいいものを、かわいそうな娘のふりしてあんたらの恩に縋って……こんなカツラまで被って、なあ!!』

言うなりダイはクロエの茶髪を摑み、毟り取ろうとする。が、その髪はり付けたように頭から離れず、クロエは悲鳴を上げた。

『痛い、やめて!!』

『おい、何やってんだ!』

『ど、どうなってんだ、くそっ! 取れねえぞ…痛ぇっ!!』

焦って引っ張ろうとするダイをロックが止める前に、將が麺棒で彼の頭を滅多打ちにした。

恐らくクロエは神聖魔法『接著(アドヒジョン)』でウィッグを頭皮にり付けているのだろう。頭にの上ったダイは、自分が周りにどのように見られているのか気付いていない。

『その手を離しな! の子の髪を引っ張るなんて、とんだクズ野郎だねあんたは。ちっとばかし顔がいいからって、そんなんじゃの子にモテないよ』

『痛っ、いてえなオバサン! クズはそこのだろ。それに、俺にはモモがいるんだから余計なお世話だよ!』

解放されたクロエの頭を痛ましそうにでてやりながら、ロックがモモの名に反応する。

『モモ? お前の言うその子は、モモ=パレットの事か?』

『そうだよ、そこのクズが婚約者を取られたと嫉妬してめていたんだ。お前も馴染みなら許せねえのは分かんだろ』

ロックの目がすっと細められる。だがそれは一瞬で、さも不思議そうに首を傾げた。

『もしそうだとすれば、モモは現在、第一王子の新たな婚約者では? だったら、やっぱりお前の片想いなんじゃないか』

『婚約者じゃねえよ! モモはいつも訓練場で俺に差しれ持って応援に來てくれるんだ。そりゃ殿下も周りの男もモモに夢中だけど、俺には特別…』

『ちょっと、こっちに來て下さい!』

ダイの主張を遮り、シンがたまりかねてその腕を摑み、り口付近まで引きずっていった。ダイは腕を振り払い彼を睨み付けるが、睨み返されたのか気まずそうな反応を見せた。

シンは聲量を落としてダイの軽率さを詰る。

『どう言うつもりなんですか。こんな場所まで押しかけて、お嬢様の元を暴くなど』

『自分の目で直接見極めたかったんだよ。それに貓被ってるあいつの化けの皮を剝がしてやりたかったっつーか』

『段取りと言うものがあるでしょう。あれでは逆に、お嬢様は同的に見られます』

『どうも騙すとか、そんな回りくどいやり方はに合わねえからな。モモもその真っ直ぐさが素敵だと言ってくれたぜ』

『……はあ。とにかくこの一件は殿下に報告しますから、そのつもりで』

「バカめ」

ダイの愚かしさに、呆れてが言えない。さすがにクロエも自分が監視されている事や、背後に自分がいる事に察しがついただろう。彼にお灸をすえる作戦は、変更せざるを得ない。

だがダイが醜態を曬したおかげで、ライバルが一人減ったのは思わぬ収穫だった。モモが彼を見る目は完全に冷めている。さぞ幻滅した事だろう……ダイは気付いていないだろうが。

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