《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》ダイ=ネブル①~騎士を目指して~
俺の名は『ダイ』。カラフレア王國將軍オーレン=ネブルの息子で、將來は第一王子レッドリオ殿下が即位された時に傍らで剣を振るう騎士となる事を目標としている。
親父の事はい頃からの誇りで、自分もあんな強くて頼れる男になりたいと、朝から晩まで訓練場で剣を振るう日々を送っていた。
早く一人前になりたいのに、親父はそんな俺に言う。
「剣ばかり秀でていても、それは強さとは言わん。今は學ぶ事も覚えろ」
俺は勉強は大嫌いだ。騎士の役目は貴人を護る事なのだから、頭を良くして何になるんだ。親父はどうして、俺を褒めてくれないんだ。親父に反発した俺は勉強を度々サボり、ますます剣にのめり込んでいった。
ある日、いつものように訓練していると、兵士たちがこそこそ集まって話をしている。
「なあ、あいつ將軍の息子だからって調子に乗ってるよな」
「騎士団にわれたんだって? 七りを使われれば団長も斷れないよな」
「確かに腕は立つようだが、頭の中がどうもな……」
ショックだった。コネを使われていると思われていた事が。頭の悪さをバカにされていた事が。誇りだったはずの將軍の息子と言う立場が、足枷になっていたなんて……
俺は手合わせでそいつらをボコボコにした。七りだとか脳筋だとか、そんなものは実力で黙らせてやればいい。文句のある奴は俺を倒してみろ。
やがて國で敵なしと言われた頃、レッドリオ殿下に剣の腕を見込まれて側近の一人となった。歳も近いせいか一緒に學校に通わなければならないのが億劫だったが、績が悪くても何か秀でたものがあれば進級はできると聞いていた。生徒たちは俺を脳筋呼ばわりする割には、どいつもこいつもバカばかりだった。ただ頭でっかちなだけじゃねえか。見目が良いと男たちからのやっかみがあって大変だと、殿下の兄弟であるセイが言っていた。同類のように言われているが、こいつはなよっちいたらしでいけ好かない。他の連中よりはマシだが。
そして俺は、學園で運命の出會いをする。
授業をサボッて中庭で晝寢をしていると、校舎から悲鳴が聞こえて何かがバラバラと顔に落ちてきた。拾って目の前にかざすと、香ばしい匂いがする。
「クッキー…?」
「きゃあっ! ごめんなさい、お怪我はありませんかぁ?」
鈴の音のような聲のする方を仰ぎ見ると、何と三階の窓から木に飛び移ってスルスルと下りてくる子がいた。フワフワした桃の髪の、飴玉のような綺麗な目をした娘だ。俺は呆気に取られてしまった。
その時、不意に彼が手をらせ木から落ちる。もうすぐ地上だったが充分危ない高さだったので、慌ててその肢をけ止めた。
(軽い! それに、いい匂いがする…)
呆けていると、怒っていると勘違いしたのか彼が必死に頭を下げてきた。
「ごめんなさい、ごめんなさい! 卻ってご迷をかけてしまって……大丈夫でしたか?」
「そりゃこっちの臺詞だ。あんたお転婆だなぁ」
カラカラと笑うと、彼は恥ずかしそうに頬を染める。ドクンとがやかましい音を立てた。
「このクッキー、あんたが作ったのか?」
「はい……でもクラスの子たちに生意気だって窓から放り投げられちゃって……私、庶民だから」
「何だよそれ!」
彼が出てきた窓を睨み上げると、様子を窺っていた子たちが數名、慌てて顔を引っ込めた。糞悪さにが熱くなってくる。
「なあ、このクッキー食ってもいいか」
「えっ? でもそれ、落ちたやつで…」
「うん、うまい! こんなうまいクッキー、うちのシェフでも作れねえよ」
貴族の俺が拾い食いした事に、その子は目を見開いていたが、やがてクスクス笑い出した。その聲、その笑顔が俺の心に焼き付いた。し土のついたクッキーの味と共に。
「そんなものでよかったら、いつでも作ってあげますよ」
「本當か!? なら、訓練場まで差しれに來てくれよ。俺、いつもそこで素振りしてるから」
それが俺と、モモとの出會いだった。
【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
『醜穢令嬢』『傍若無人の人でなし』『ハグル家の疫病神』『骨』──それらは、伯爵家の娘であるアメリアへの蔑稱だ。 その名の通り、アメリアの容姿は目を覆うものがあった。 骨まで見えそうなほど痩せ細った體軀に、不健康な肌色、ドレスは薄汚れている。 義母と腹違いの妹に虐げられ、食事もロクに與えられず、離れに隔離され続けたためだ。 陞爵を目指すハグル家にとって、侍女との不貞によって生まれたアメリアはお荷物でしかなかった。 誰からも愛されず必要とされず、あとは朽ち果てるだけの日々。 今日も一日一回の貧相な食事の足しになればと、庭園の雑草を採取していたある日、アメリアに婚約の話が舞い込む。 お相手は、社交會で『暴虐公爵』と悪名高いローガン公爵。 「この結婚に愛はない」と、當初はドライに接してくるローガンだったが……。 「なんだそのボロボロのドレスは。この金で新しいドレスを買え」「なぜ一食しか食べようとしない。しっかりと三食摂れ」 蓋を開けてみれば、ローガンはちょっぴり口は悪いものの根は優しく誠実な貴公子だった。 幸薄くも健気で前向きなアメリアを、ローガンは無自覚に溺愛していく。 そんな中ローガンは、絶望的な人生の中で培ったアメリアの”ある能力”にも気づき……。 「ハグル家はこんな逸材を押し込めていたのか……國家レベルの損失だ……」「あの……旦那様?」 一方アメリアがいなくなった実家では、ひたひたと崩壊の足音が近づいていて──。 これは、愛されなかった令嬢がちょっぴり言葉はきついけれど優しい公爵に不器用ながらも溺愛され、無自覚に持っていた能力を認められ、幸せになっていく話。 ※書籍化・コミカライズ決定致しました。皆様本當にありがとうございます。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※カクヨム、アルファポリス、ノベルアップにも掲載中。 6/3 第一章完結しました。 6/3-6/4日間総合1位 6/3- 6/12 週間総合1位 6/20-7/8 月間総合1位
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