《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》43:魔の伝説

初めて上映會に參加したモモが口にしたのは、到底信じがたい事だった。

クロエ=セレナイトが魔になる――

確かに彼悪だが、『魔』と言うキーワードは揶揄として気軽に使えるものではない。その背景には、この國に伝わる聖伝説があった。

次の日、ダイを除く一同は聖教會の書庫の奧、書の棚までやってきた。モモが言うには、彼はここで聖による救國の真実を知ったらしい。

「『國に悪しき風立ち込める時、聖なる乙地に舞い降りん。乙は邪を払い、魔を封印せん』…これがカラフレア王國に伝わる聖伝説の一節です」

「そんな事はこの國の子供であれば、皆知っている」

「ですね。私も子供の頃、絵本で読みましたよ」

「私とは先日、これをモチーフにした舞臺を観に行きましたよね」

さりげなくセイがモモとデートした事を持ち出し、一斉に睨まれる。モモは男たちに頷き返しながら、一冊の古書を本棚から抜き出した。

「では、魔とは何なのでしょう。この國に災いをもたらし、瘴気を撒き散らしたのは魔の仕業なのでしょうか。…その答えが、ここにあります。

『悪しき獣を生み出す風を鎮めんがため、神に選ばれし二(・)人(・)の(・)乙、祈りにて魔に立ち向かう。されど邪悪なる意思は清らかな心を蝕み、やがて乙の片割れはに抗えず、闇に屈す。後の世は魔に魅られしその者を魔と呼び、片割れを封じた乙を聖と呼ぶ』…」

「何だって!?」

「……」

は二人いた――と言うより、國に災いをもたらした魔は、元々聖であった。初めて知った真実に、レッドリオたちは驚きを隠せない。そんな中、イエラオは無言でモモの手にしている書を指でなぞっている。古語で書かれているので、傍からは判別不能な文字列にしか見えない。

「それは、確かなの?」

「ええ…この狀況、何だか似ていると思いませんか? カラフレア王國の歴史も調べてみましたが、初代聖が當時の王太子の婚約者となったのは、救國をした後となっていますが、候補になったタイミングは國中から神力の高い乙たちが集められ、その中から二人選ばれた時……つまり瘴気の浄化はもちろんですが、最初から王族との結婚も前提にあった訳です」

「そして二人の聖は王子の寵を賭けて爭い、邪心を抱いた方は魔へと墮ちたのか……確かに、似ているな」

この逸話を知っていたから、あれほどモモは懸念していたのだ。しかし実際のところ、クロエは王都を出てからモモに対する怨嗟を吐くどころか、悔い改めている様子さえ見せている。心配は要らないのではないか。

そう訊ねたが、モモは痛ましい表で首を振る。

「クロエ様に何か……不自然さをじませんでしたか。例えば――別人にでもなったかのようだ、とか」

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