《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》45:王子の糾弾

クロエの現狀――魔に覚醒する可能を見極め、対処するためには、モモのレベル上げをしなくてはいけない。レッドリオは神長にその許可を取りに行ったのだが…

「できません。モモ様は現在、神力が落ちておられます。半端な修行で神聖魔法を使用されては、どんな影響が出るか……」

「神力が落ちている? どう言う事だ」

ここ聖教會で行われた聖判定の儀において、彼が放った神聖なる力に、神たちは揃って真の聖と認めたではないか。実際あの眩いばかりの輝きは、彼が本である事を示していた。

「モモ様が聖である事、それは疑いようがありません。しかし神力とは清らかな心から生まれる力。時と場合によっては失われる事もあるのです」

「何だそれは! あれからモモが穢れたとでも言いたいのか!」

「滅相もない! ただ、ほんのしばかり…修行にっていない様子が…」

言いにくそうに言葉を濁す神長に、モモの表が強張っていく。ここでの修行がとても厳しい事は聞いている。何せクロエも、貴族の生活から一変して宿屋に雇われる事になっても、聖としての修行に慣れていたおかげできつさに耐えられたと言っていたぐらいだ。

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しかしモモがクロエよりもだらけていたとも思えない。むしろ真の聖として、場合によっては王子妃候補としての責任が圧し掛かる中、何とか頑張っているのではないか。

「もういい、貴様らには任せておけん。こんな所に閉じ込めているから、本領を発揮できんのだ。勘を取り戻すためにも、今から中級者向けダンジョンで肩慣らしするぞ」

「いけません、危険過ぎます! 聖にもしもの事があれば……」

「俺がついて守ってやる。魔どもには指一本れさせなければ文句はあるまい」

「第一王子殿下にも、お怪我をさせる訳にはいきません!」

融通の利かない神長に業を煮やしたレッドリオは、奧の手を使う事にした。

「神長……聖教會は昔、孤児を使った売春の溫床だったそうだな」

「!! と、突然何を…」

「俺が知らないとでも思っているのか? 貴様はクロエから聖石の補充を求められた時、滯在している教會がかつて追い出した錬士のものだと知って斷ったと聞くが」

「で、ですからそれは……確かに、過去そのような痛ましい事件があったのは事実です。だからこそ我々聖教會は、その手引きをしていたマスラット=グレースを除名に…」

しどろもどろで言い訳しようとする神長だが。

バン!!

レッドリオが機を勢いよく叩いた音で、竦み上がって口を閉じた。

「貴様らがケチったせいで、上級者向けダンジョンの結界も薄くなり、兇悪な魔が出てきている。これを浄化できるのは、真の聖モモしかいない。ならば行くしかないだろうが、貴様らの拭いにな!

聖教會としては國の危機よりも、どうしてもグレース牧師の素に問題があると言うのならば、その罪を改めて検証しようではないか。當時の被害者もえて、國民の前で徹底的にな」

「――っ!? お、お待ち下さい! 分かりました、認めましょう。マスラット=グレースは冤罪であり、除名は不當であると。……聖教會にあるまじき愚行を犯したのは、當時の神長と繋がりのある者たちでした。潰されるのを恐れて誰も逆らえず、グレースは生贄にされたのです」

真実に口を閉ざしていた神長も、過去の悪行を國民にバラされ権威が失墜される事の方を恐れ、あっさり白狀した。聖教會と一蓮托生の関係にある王家もただでは済まないが、自分を廃嫡しようとするのであれば知った事ではない。

「今更グレース牧師の名譽など、どうだっていい。それよりもクロエだ。神長なら古(いにしえ)の魔については知っているな? 現在あいつは聖と王子妃候補の地位を剝奪され、上級者向けダンジョン付近に留まっている。極めて危険だとモモが判斷した。できるだけ早く止めに行かねばらならん」

絶句する神長を余所に、レッドリオはモモの肩を抱き寄せる。

(モモ…お前は必ず、俺が守る。そして初代聖の再來と言わせてみせるさ)

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