《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》50:馴染む闖

『気を付けてね、ロック。これ、お弁當』

『ああ、行ってくるよチャコ』

ダンジョンに向かうロックに、いつものように弁當の包みを渡すクロエ。それを見て仲間たちが口笛を吹いて囃し立てる。

『ひゅーひゅー、熱いねー』

『お似合いだよ、お二人さん!』

『お前らなあ…』

文句を言おうとするロックとクロエの間に立ちはだかったのは、一行に無理矢理ついて行っているダイだった。

『おいクロエ、俺の分も用意しろ』

『なーに、この木偶の坊えらっそーに!』

『何だと、使用人風が!』

キサラが愚癡るが、本來ならばダイの言う通り、三人はセレナイト公爵家の使用人…しかもスラム出だ。將軍の息子であるダイにおいそれと口を聞いていい立場ではない。

『やめなさい、キサラ。お客様、お待たせしました』

『それでいいんだよ、罪人は大人しく奉仕してりゃ…』

得意げな表でクロエから弁當をけ取ろうとするダイだが、その目の前にさっと手を差し出される。

『六五〇カラーになります』

『な…っ、金取んのかよ!?』

『お弁當の食材は全て、グレース夫妻の財布で買ったもの。そして今の私は雇われの。よってこれは商品になりますお客様。お支払い頂けますねお客様?』

『だ、だったらロックは何なんだよ? 貢ぎとでも言うつもりか!?』

『もちろん私からの依頼でダンジョン攻略して頂いてますから、晝食ぐらい付けます。貴方には頼んでいませんから……あら?』

悔しそうに歯ぎしりするダイの頬に真新しい傷を見つけ、クロエは手をばす。

『ダイ様、お怪我が…』

るな、悪がうつる!』

クロエの手をバシンと払い除けるダイを、さすがに黙って見ている事はできず、シンはクロエのそばに駆け寄った。

『悪って、殿方にってうつるものなのかしら?』

『子供の理屈ですよ、お嬢様』

『はいはい。いつまでも遊んでないで、さっさと行きな! ほら、あんたの分はあたしが作っといてやったから』

そこへ將が割り込んできて、ダイの手にずいっと包みを押し付ける。

『おばさん、これはクロエを反省させるための…』

『いい男ってのはね、駄々ねてないで素直に禮を言えるもんだよ。要らないならみんなに分けてやっとくれ。やれやれ、いつまでも居座られちゃ片付かないったら。チャコ、あんたも次からこのボクちゃんのもついでに作ってやんな』

『ボ…ボクちゃん!?』

子供扱いされて顔を真っ赤にするダイを、クロエはちらりと見遣った。

將さんに頼まれれば、嫌とは言えませんね。では治癒に関しては、ダイ様から直接頼まれればと言う事で、よろしいですか?』

『だ、誰が頼むか…バーカ!』

手にした包みとクロエを互に見ながら、ダイは一杯の罵聲を浴びせると、自分を置いて行こうとするロックたちの後を慌てて追いかけた。その様子を客たちは微笑ましそうに見守っている。王都からの不躾な闖者も、いつの間にか日常の風景と化していたようだ。

「あのバカ、完全にあっちに馴染みやがって」

「何て事なの……ダイ様までが」

「あ、あいつは食い意地が張っているだけだ。モモの心の籠った手料理を食べれば、すぐこちらに戻ってくる」

苛立ちを隠せないレッドリオと、呆然とを震わせるモモ。おろおろするばかりのダークは何とかフォローにるが、誰も聞いてはいなかった。

※初めて作中に登場した設定:カラフレア王國の通貨「カラー」

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