《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》55:クロエの

「どう言う事!? クロエが私の代わりにチャコとして降臨祭に出るって! どう言う事よ!?」

立ち上がり振り返ったモモは、を逆立てながらイエラオに摑みかかろうとする。それをするりと躱しながら、イエラオは何でもない事のように答えた。

「聞いた通りだよ。ダンジョン攻略に忙しい真の聖様に代わって、罪滅ぼしに降臨祭で祈ってもらう。何も問題はないよね?」

「問題だらけだ! 大、あいつのは偽名じゃないか。國民を騙している!」

モモと一緒にレッドリオも抗議するが、ちょうど同じタイミングでクロエも訴えていた。

『イエラオ殿下、わたくしは罪人でございます。裡に王都に戻るだけではなく、チャコ嬢を名乗って降臨祭に參加するなど――』

『チャコでいいよ、あたしたち親友でしょ』

『ですが……えっ?』

急にフランクになったチャコに気付いたクロエが、不思議に思って彼を見つめる。無禮な、と突っかかりそうになるシンを制し、戸うようにイエラオを窺うと、彼は懐から勅書を二枚取り出す。一枚目は先程見せた、チャコに聖代理を務めさせるもの。そして二枚目は――

『クロエ=セレナイトがナンソニア修道院に到著するまでの間、便宜上チャコ=ブラウンを名乗る事を許可する。カラフレア王國國王フレオン=ヒース=カラフレアと、王妃ネージュ=ホワイティ=カラフレアのサイン……あと僕と、チャコ本人のもだね』

「何だと――!?」

今度はレッドリオがガタリと立ち上がる。罪人に偽名を許すなど、しかも自分を除け者にして勝手に決めるなど何を考えているのか。しかもイエラオが言うには、既に國中の役所に通達済みらしい。どう言う事だと詰め寄っても本人は涼しい顔で。

「だって誰かさんが、クロエ嬢の名前では何もできないように圧力かけるもんだからさぁ。こっちも宰相殿の手前、特例を出さざるを得ない訳。分かる? くだらない報復のために余計な橫槍れてきた、誰かさんの拭いなんだよ」

「くだらないとは何だっ!」

ギャーギャー言い爭う兄弟が真橫にいても、一心不に鏡を見つめ続けるモモ。しかし、著替えのために男二人が控室から追い出されると、急にこちらに向かって怒鳴りつけた。

「ベニー様、キース様! 會話が聞こえませんので黙ってて下さい!!」

「モ…モモ? どうしたんだ」

「…君にキースと呼ばれるのを許した覚えはないんだけど」

閉め切られたドアの向こう、クロエはチャコと言葉をわしているようだ。シンはドアの隙間にブローチを挾み込んで會話を拾っているが、所々くぐもって聞こえる。

『――様、本當にわたくしのために、ここまでして頂いてよろしかったのですか? それに先程は、わたくしを――だと…』

『うん、最初――様から聞いた時は驚いたし、ピンと來なかったの。だけど――に急変した様子や、あたしの名前を使った事。それから実際話してみて、あたしを――と呼んだ時、納得したの。あ(・)ん(・)た(・)はあたしの知る――じゃない。だけど確かに、――が――った――んだなって』

『許して、くれるの? チャコ…』

『許すも何も、こんなの理不盡じゃん。それに向こうだって――を――だなんて思ってないよ。――の中でもう――は終わったの。だからね、あたしにとっての――って、途方に暮れそうな狀況の中でも懸命に頑張ってる……あんたの事なんだよ』

音量を上げてみても、肝心の容だけが雑音で聞き取れない。もどかしい思いで一同が耳を澄ます中、モモがポツリと呟く。

「やっぱり……クロエは――」

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