《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》56:降臨祭

降臨祭の準備で周囲が忙しなく駆け回る中、著替えの終わったクロエが姿を現した。聖裝にチャコと同じ茶髪のポニーテール。これで頭からヴェールを被ってしまえば、遠目からはクロエだとは気付かれないだろう。

『君はこれ著けてね』

イエラオがそう言ってこちらに投げて寄越したのは、魔石の嵌め込まれたブレスレットだった。

『殿下、これは…』

『認識阻害の魔道(マジックアイテム)だよ。君のその髪と目のは目立つからね』

言われてシンがブレスレットを腕に著けると、陣が目を見開く。こちらからは分からないが、どうやら見た目に大きな変化があったらしい。

『さあ、行っておいで。貴の一世一代の、大舞臺へ!』

王都は降臨祭を楽しむ民たちで溢れ、聖が立つための櫓が組まれた広場でも大勢賑っていた。クロエは櫓に上り、聖楽隊の奏でる曲に合わせて緩やかに舞いながら祈りを捧げる。

『今年はブラウン新聞社んとこの娘さんかあ』

『おや? だが確か真の聖が見つかったとかで、今年はその娘が立つはずだったんじゃないのか』

『しかし聖の舞ってのは厳しい練習を積むんだろうなあ。見ろ、去年と全く同じ踴り方だ』

周囲の人間たちは、まさか追放された仮の聖が戻ってきて、代理として舞臺に立っているなど思いもしない。一方でチャコが何食わぬ顔でぶらついているのを、不審げに振り返る者もいた。

『さ、あんたもちゃっちゃとこの號外を配っちゃって』

『チャコ様、貴は変裝しなくてもよかったので……あれは』

チャコに付き添っているシンが、人混みの中から見覚えのある顔を発見する。すらりと背の高い青髪の青年が、空の髪の生徒を連れて屋臺巡りをしていた。

「……何をやっているんだ、あいつは」

「セイ…私だけって言ってたのに、ミズーリとデートなんて…!」

モモがわなわなとを震わせている。彼はセイが婚約者と降臨祭を過ごすのが気にらないのだろうか? ならば本命はセイ…いや、本當にモモが好きなのであれば、彼の言う通り婚約者など振り切ってしまえばいい。婚約解消は順調だと言っておきながら結婚など、意味が分からない。

ミズーリは櫓を指差して何か言っているようだが、セイはそれをちらりと見ただけで、興味も示さず行ってしまった。もし彼が注意深く櫓の上を見ていれば、聖代理がクロエである事に気付けただろう。

けない……」

「まあ、そう言ってあげずに。彼は王都を離れる兄上の代理で、あそこにいるんだからさ」

クロエを引っ張ってきた張本人がぬけぬけと言うものだから、レッドリオは弟を殺さんばかりに睨み付けた。

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