《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》57:悪役令嬢の懺悔

クロエが一心不に踴り続ける中、まばらだった周囲の民衆がだんだん櫓に集まり出した。何人かは、クロエを指差し何か言っている。戸った様子のその手には、チャコたちが配った號外記事が握られていた。

舞を終えるとクロエは民衆を見下ろし、そのヴェールと茶髪のカツラを取る。たちまち上がる驚きの聲は、王都を追放されたはずのクロエがチャコを名乗って降臨祭の聖代理を務めた事に対してか、それともその短過ぎる髪に対してのものか。騒めきに構わず、クロエは深く頭を下げると、朗々と語り出した。

『國民の皆様。本日わたくしが臨時で聖代理をさせて頂く事になったのは、真の聖モモ様への愚行に対する贖罪のためでございます。わたくしは愚かにもレッドリオ殿下のご學友であるモモ様に嫉妬し、その生まれを蔑み、時に迫害を行ってきました。中にはわたくしとは無関係の件もありましたが、王子妃候補で仮の聖と言う地位にいて止める立場と力を持ちながら、見て見ぬふりをしてきたのも事実。こんなわたくしは將來の王妃にも、聖にも相応しくないと、今は己の罪に向き合っている最中でございます。

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ですが……もしも直接我が國に貢獻する機會があったのなら、喜んでそのを差し出す所存。折しも現在、我が國は瘴気が蔓延する時期にあたり、聖モモ様は降臨祭に參加できないほど多忙でいらっしゃる。ならば去年まで仮の聖を務めていた、不肖このわたくしが代役を務めるのも贖罪のだと、イエラオ第二王子殿下よりお役目を賜りました。なお、本來の聖代理であったモモ様の親友チャコ嬢のご協力にも大変謝しております』

普段からは考えられないその謙虛な姿勢に、民衆は騙し討ちされた事も忘れてぽかんと口を開けて見守っている。中には學園におけるモモの信奉者もおり、「ふざけるな」「ブラウンは裏切ったのか」などと騒いだり石を投げる者もいた。が、攻撃は櫓周りに張られていた結界に弾かれ、野次の聲もクロエの演説の妨げにはならない。どれだけ周囲が騒音を鳴らそうと、彼の聲は明確に耳にってくる……これは、神聖魔法だ。

『敬なる初代聖よ。我が國を守護する乙よ、もしもわたくしの罪が取り返しのつくものであれば、どうか挽回の機會をお與え下さい。罪を償った暁には王家を、民を支える力となる事をお約束いたします。もしもわたくしをお許し下さるのならば――』

そこでクロエの聲が途切れる。ちょうど雲に覆われていた太が顔を見せ、彼のいる櫓にが差した。さながら舞臺俳優に照らされるライトのように。思わず見ってしまい靜まり返った民衆の中から、「あっ、あれを見ろ!」と聲が上がる。

クロエの真後ろに見える王城の空に、大きな虹がかかっていたのだ。この國における虹が意味するのは、伝説の虹の聖鳥が通った軌跡――瑞兆だ。

『おお……初代聖様、わたくしの聲を、聞き屆けて下さったのですね! 謝いたします。過去を悔い改め、必ずやこの國の未來に全全霊をもって貢獻する事を誓います』

仰々しい振りで天を仰ぎ、どこかに向かって訴えるクロエの姿に、民衆は圧倒されていた。彼の呼びかけに対して、絶妙のタイミングで虹が出現したのだから、無理もない。彼等の目には、クロエは初代聖からの許しを得たように映るだろう。とてもモモのように、悪だの魔だの言える雰囲気ではない。

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