《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》58:神長との

パチ、パチ、パチ

誰かが拍手する音と共に、櫓周辺にごった返していた人垣が割れていく。できた道を悠々と歩いてくるのは、イエラオだった。その後ろを、戸った様子の神長がついてくる。

『クロエ=セレナイト。よくぞ己の非を反省し、清き心を取り戻してくれた。そなたの真心に初代聖もさぞを打たれた事だろう』

『もったいなきお言葉』

急いで櫓を下りたクロエは地面に平伏しようとしたが、それを止め、イエラオは神長を振り返る。

『どうだろう、神長。彼の祈りに天は奇蹟をもって応えられた。これで罪は清算されたとするのは』

『はあ……しかし』

『イエラオ殿下、大変ありがたい申し出ですが、何事も段取りと言うものがございます。そしてわたくし自、けじめをつけるまでは正式に王都に戻る訳にはいきません』

『では、そなたはこのまま再びナンソニア修道院に向かうと?』

『左様でございます。そのためには、現在お世話になっているグレース教會に聖石を屆け、結界を張る必要があるのです』

そこでクロエは、グレース牧師が聖教會を除名となったので庇護をけていない事を訴えた。神長は大いに慌てていたが、恐らくチャコたちが配った號外や今までの學園新聞に、その辺の経緯が書かれてあったのだろう。にもかかわらず、イエラオはしれっと驚いてみせた。

『神長、數十年前に起こった出來事をここでどうこう言うつもりはない。だが…王都を追放されたセレナイト公爵令嬢がマスラット=グレースと出會ったのも、天の配剤だと思わぬか。むしろ、この出會いこそが改心を促したとも言えよう。であるならば、グレース牧師の名譽を回復し、上級者向けダンジョン前の禮拝の場として、正式に國が認めるのが適切だと思うのだが』

『し、しかし……マスラット=グレースの処遇に関しましては、わたくしの一存では』

『おやぁ? そなた確か、兄上が聖教會の闇を暴いた時に、グレース牧師は冤罪であると認めたよな。ちなみにここに証拠の記録もあるのだが』

イエラオが取り出したのは、毎度お世話になっている魔法のブローチだ。聖教會では神聖魔法を至高とし、通常魔法や魔道(マジックアイテム)の類は邪道として良く思われていないのだが、クロエの斷罪劇でも使われたそのアイテムを見た神長は顔を真っ青にした。

一方、クロエはこの件にレッドリオの名前が出てきた事が意外だったようだ。

『レッドリオ殿下がグレース牧師のためにいて下さったのですか』

『そうだよ、まあいつもバカみたいにモモ嬢のを追っかけてはいるけど、たまには民の事も考えてる辺り、腐っても王子って事じゃないかな』

「どう言う意味だ!」

「酷いな、褒めてあげたのに」

フォローにもなってないイエラオの毒舌に、レッドリオは苦蟲を噛み潰したような顔をする。実際あの場面ではモモとのダンジョン攻略の許可を取るため、脅し…説得の手段として持ち出した話題なので、クロエが銘をける要素などどこにもないのだが。彼から謝されると、どうにも居心地が悪い。橫にいるモモからの咎めるような視線のせいでもある。

かくして王都の空に出現した虹の下、クロエの贖罪とグレース牧師の冤罪は認められた。歓聲に沸く民衆を前にしては、認めざるを得なかった。

    人が読んでいる<【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください