《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》59:聖の役目

「いや~、的だねえ。悔い改めたの獻の祈りで、奇蹟が起こったんだから」

したり顔でのたまうイエラオに、レッドリオが口を開きかけた瞬間。

「何が奇蹟よ! あんなの自然現象よ。あの時間、あの場所なら誰が祈ってようと虹は勝手に出たの! なのに追放された罪人なんかに易々と絆されて……変よ、みんなおかしいわ!!」

「おい、モモ!」

取りしたモモがイエラオに突っかかったので、さすがにまずいとレッドリオは止めた。モモは怖いもの知らずで、貴族の常識に真っ向から反する言が多いが、これは……

ダークもぎょっとするが、イエラオは予想していたのか、ただ呆れた視線を寄越した。

「あのね、一応説明しておくと、虹ってのはカラフレア王國でとても重要な意味を持つんだよ。初代聖がこの地を浄化する時に連れていた聖鳥しかり、魔を封じ込めた神力のしかりね。だから特別な日に見える虹は、『聖の祝福』と言われているんだ。自然現象とか勝手に出るとか、そう言う科學的な話じゃないんだよ」

ハッとしたモモは茹っていた頭が冷めてきたのか、先程の神長のように青褪める。

「あ、あの私……貴族のしきたりには疎くって」

「貴族? こんなの、この國に流れてきたスラムの住民でさえ、しばらくすれば耳にってくる事だよ。聖教會は炊き出しを行ってるし、その際何かと聖伝説の一節を口にするからね。…と言うか君、仮にも今代の聖に選ばれたんでしょ? 古代文字で書かれた書もスラスラ読んでたくらいだし……それともあれは、適當言ってただけなのかなあ?」

モモがガタガタ震え始める。イエラオは明らかに、モモを甚振って楽しんでいる。聖を迫害する事は、聖教會を敵に回すに等しい…と言っても、スクリーンで見た限りでは神長すら手玉に取っていたようだが。

レッドリオは俯くモモの前に出て、腕を広げながら彼を庇った。

「いい加減にしろ! モモが噓を吐いていたとでも言うのか!? だとしてもすぐにバレるだろうが」

「うん、噓は吐いてないね。あの後、神に確認させたから。だけどさあ、そもそも宗教自が噓…と言うよりもっともらしく虛飾された思想じゃない。誰も本気で超越した存在を信じてる訳じゃないけど、それでも救われたいから縋るんだよ。絶対的権威から保証されて、民から求められる噓を吐く。それが聖の役目。

さて、さっきの発言に戻ろうか。君は真の聖と定められていながら、聖教會の提唱する初代聖の奇蹟を、否定したよね…?」

イエラオの目がスッと細められる。口元から笑みが消え、レッドリオですら後退りしそうになるほどの威圧が放たれている。モモは顔から脂汗が滲み出て、今にも失神しそうだった。

迫した空気を破ったのは、ダークの一言だった。

「あっ、場面が変わりましたよ。早く見ましょう!」

全員の視線が鏡に集中すると同時に、イエラオから威圧が消え失せた。モモはホッとへたり込むが、やはり後ろからじる視線のため、集中できないようだった。

レッドリオは、ここに來て迷いが生じていた。聖代理を務めたクロエは、敬虔なる信徒としての姿を國民に見せ、さらに初代聖の奇蹟(どうせ仕込みだろうが)も起こす事で人心を摑んだ。それに比べると、モモは……今まで彼は、信心深いだと信じていた。だからこそ真の聖に選ばれたのだと。そんな彼の口から、虹は自然現象だ、などと言う言葉が飛び出すとは……

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