《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》60:カナリアの目論見

儀式の後片付けを済ませ、久しぶりにパーティードレスに著替えたクロエたちが會場に到著した頃には、もう日もすっかり暮れて、ダンスも何曲目かが終わっていた。クロエは再び茶髪のカツラを被り、シンもまた認識阻害魔法のかかった腕を著けているので、貴族たちにはまだ彼等が王都に戻ってきている事は気付かれていない。

そこへカナリアを伴いイエラオが歩み寄ってきたので、クロエが淑の禮を取る。

『イエラオ王太子殿下、わたくしをこの場に招待して下さったお心遣い、大変謝致します』

『いいよ今日は降臨祭でもあるんだから、固い事は言いっこなし。それより僕の婚約者を紹介するね』

『は……?』

おかしな事を言い出したイエラオに、クロエは首を傾げる。レッドリオの婚約者であった頃から、たまにこの國に訪問するカナリアとは何度か顔を合わせているはずだ。訝しげに眉を寄せる彼に、ニヤッと笑ったイエラオがカナリアを招き寄せる。

『何、君(・)と(・)は(・)初めてだと思ってね』

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『お久しぶりでございます、セレナイト公爵令嬢。茶髪もとてもお似合いですわ。…そして、は(・)じ(・)め(・)ま(・)し(・)て(・)――』

カナリアに耳元で何事かを囁かれ、クロエが大きく目を見開いて彼を凝視した。

『貴も……!?』

『そう言う事。本當は貴が思(・)い(・)出(・)し(・)た(・)タイミングで助けてあげたかったけど……他國のわたくしが、おいそれと介する訳にはいかなくてね。キース様に協力してもらったの』

『なるほど……腑に落ちたわ。道理でイエラオ殿下が何か違うなって思ったのよ』

「何だ、話が見えんぞ」

「まあ同士、々あるって事だよ」

二人して怪しげな會話をわしているのが気になる。同じなら分かるだろうかとモモを見れば、小聲でブツブツと「あのも――だなんて…どうなってるのよ」「カナリアなんて顔すら出てこないモブじゃない」などと呟いている。よく聞き取れないが、意味を理解するのを本能が拒絶していた。

その謎多きカナリアは、イエラオとクロエの許しを貰い、シンと一曲踴っている。彼もシンを通じて監視されているのを、イエラオから聞いているのだろうか。

『シン殿。この後しお時間よろしいかしら? お會いしてしい方がいらっしゃるの』

『はあ…私に、ですか』

った聲のシンに構わず、カナリアは悪戯っぽく微笑む。そして曲が終わる直前、一角で騒ぎが起こった。

『何だ…!?』

『どうも誰かが酔っ払って倒れたみたい。心配しなくても救護兵が來たから平気よ。さあ、みんなの目が逸れているに』

カナリアに手を引かれ、何が何だか分からないままシンは他國の使者らしき貴人の前まで連れて行かれる。その姿を見て、息を飲んだ。その流れるようなしい髪と、深い目のは。

『どうした、カナリア。君らしくもなく隨分はしゃいでいるね。火遊びも程々にしないと、イエラオ殿が泣くよ』

『嫌だわ、殿下。この方は、クロエ=セレナイト公爵令嬢の専屬執事ですの。…さあ、シン。ブレスレットを外してみて』

『え……ですが』

『大丈夫だから』

言われて周りを見渡せば、護衛らしき者たちが壁となってシンたちを隠していた。促され、躊躇しながらも認識阻害魔法を解除すると、貴人…いや、コランダム王國王太子の目が驚愕で見開かれる。何故ならシンの髪と目のが、自分にそっくりだったからだ。

『そなた、シンと言ったな……生まれについて、親から何も聞いていないか』

『私に親はおりません。赤ん坊の頃に捨てられて以來スラムで育ち、クロエお嬢様に拾って頂きました。現在は便宜上、セレナイト公爵家執事長の姓を名乗っております』

『……そうか』

何やら意味深な眼差しに反応できずにいるシンに、隣國王太子はその手をポンと彼の頭に乗せ、カナリアに何事かを囁いてから會場を後にした。ちょうどそこに、國王と王妃に挨拶してきたクロエたちが合流した。非公式ではあるものの何度も謝罪され、すっかり恐してしまったらしい。親が自分の事で彼に頭を下げたと聞いて、レッドリオは恥と屈辱で顔が真っ赤になる。おかげでシンの重大なについて、それほど頭に殘らなかった。

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