《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》ダーク=セレナイト①~憎み合う兄妹~

僕はダーク=セレナイト。カラフレア王國宰相ブラキア=セレナイト公爵の嫡男…ただし母は元々妾で、僕は養子として引き取られた。それでも僕が正妻の娘であるクロエよりも先に生まれた事は確かだし、父は前妻の死後、母を後妻として迎えれているので、クロエからすれば自分の居場所に割り込んできた泥棒のように見えてしまっても、仕方のない事だった。

だからと言って肩狹くこまっている訳にもいかず、僕は必死に努力して公爵子息に相応しくある事を目指した。勉強も、武も。特に弓はセレナイト公爵家に代々け継がれる才能であったので、王都で並ぶ者がいなくなると父は自慢の息子だと褒めてくれた。

だがクロエとは、いつまで経っても折り合いが悪いままだった。彼は僕が何かに失敗すると、「しょせんは人の子」と蔑むくせに、褒められると憎しみの籠った目で睨み付けてくる。最初は何度も自分が養子である事、母が正式に貴族と認められた事を説明しようとしたのだが、「でも人なんでしょ」「庶民の生まれなんでしょ」と聞く耳を持たないので、もう諦めてしまった。それに、こっちこそ彼が妹など願い下げなのだ。

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クロエはとにかく、僕に関わる全てが憎いようだった。まず母に対して、正式に後妻となった後も使用人と同じように扱い、決して「母」とは呼ばなかった。気を遣って焼き菓子を作って持って行った時など、ちらりと見ただけで皿の中を捨てたと聞いた時は、毆り飛ばしてやろうと思った。

また、僕には生まれた時から決められた婚約者がいた。王妃の実家ホワイティ辺境伯の娘で、し年上のシィラと言う令嬢なのだが、彼がぽっちゃりとふくよかな型なのを、我が公爵家に嫁いで姉と呼ばなくてはならないのは恥だと嘲笑っていた。別に特別好いていた訳ではないが、クロエなどに貶される謂れはなく、また彼を妹と呼ばねばならないシィラ嬢に同した。そう言う意味で婚約に不満こそないものの、乗り気でもなかった。

クロエの攻撃対象は、家庭教師にまでその矛先が向いた。マゼンタ伯爵夫人は聡明で親切で、いつも好い匂いを漂わせていた。僕が自信を持てるよう、いつでも気強く勵まし、時には抱きしめてくれさえした。僕と妹の仲を取り持とうとするあたりはお節介だったが、彼なりの優しさは嫌いではなかった。だがクロエはそんな彼の事を気持ち悪いとまで吐き捨て、夫人が來る日にはいつも部屋を抜け出して困らせていた。

ある時、夫人からクロエにプレゼントしてくれと、香水を持たされた事があった。ペットが死んで落ち込んでいた時期だったし、これをきっかけに仲良くなりたいのだと。クロエはまだ十二歳で、早いのではないかと言ったのだが、この年頃のの子は背びしたがるものだと押され、斷れずにけ取ってしまった。仲直りなど期待はしていなかったが気遣いが嬉しかったし、その香水からは夫人と同じ匂いがしたので、要らないなら貰おうと思っていたのだ。だがクロエの反応は、予想の斜め上だった。

「汚らわしい!!」

スラムの住人が利用する川付近を通りかかる馬車の窓から、香水の小瓶が投げ捨てられた。本當は家に著いてから渡そうと思ったのだが、匂いに気付いたクロエに問い詰められ、マゼンタ伯爵夫人からだと差し出した。てっきりるのも嫌だとけ取らないだけだと思っていたら……カッとなった僕は、クロエを張り飛ばした。泣き出した妹に構わず者に命じて馬車を停めさせると、クロエを無理矢理引き摺り下ろす。

「坊ちゃま!?」

「小瓶を返せ」

「何するのよぉ、とっくに川に落ちちゃったに決まってるでしょお!!」

「だったら破片を殘らず拾ってくるんだ。川にった人が踏んで怪我するだろう」

「嫌よ、あんなきったない川の水なんて、使うのは人間じゃない…」

僕は再びクロエを引っ叩き、ぎゃんぎゃん泣き喚く彼を放って馬車に戻る。おろおろする者に、構わず出すように言うと、クロエの側に立つ執事長に聲をかける。

「パープルトン、お前も戻れ」

「先に行って下さい。わたくしはお嬢様とこちらで待ちます」

執事長は父にこの事を伝えるよう者に頼むと、クロエを連れて川の方へ行ってしまった。家では父にしこたま毆られ、部屋で反省するよう言い付けられた。僕はクロエの橫暴を訴えたが、どこまで聞きれてもらえたのかは分からない。結局、家庭教師はマゼンタ伯爵夫人から別の人に替えられた。

クロエはあの後、スラムがどう言う場所なのか、父と共に視察に行ったらしい。そして帰って來た時には、みすぼらしい子供を連れていた…と言っても歳は僕より上だったが。彼はシンと名付けられ、執事長に仕込まれてクロエに仕えるようになった。あの我儘な妹に振り回されて、心底同する。し後で僕にもスラム出の使用人がついた。數も三人と多い上にもいたので、クロエには絶対に知らせるなと言い含められる。彼だけが知らないを共有できる事に、仄暗い悅びを覚えたものだが、三人組は護を教え込むと言われて屋敷に戻ってくる事もなく、流自はそれほどなかったように思う。

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