《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》70:封印されし魔
クリスタルの中のは、クロエのような艶やかな長い黒髪をしていた。ぞっとするほどしいその雙眸は閉じられ、まるで眠っているように見える。死んでいる、と斷じるには今にもき出しそうなのだ。
「モ、モモ……これは?」
震える聲でもう一度呼びかけると、彼はやっとこちらを見た。いつもの、キラキラと輝く瞳で。
「聖ヨルダです」
聖? 何故聖がこんな所に閉じ込められているのか。そもそも、このは一いつの時代の聖なんだ? なくとも王家の祖先にあたる、初代聖ではない。彼は王妃として迎えられたのだから。
(待て、モモは確か、魔はダンジョンにいると言ったな。そして魔は元々は聖だったとも。だとすると、このヨルダと言うは――)
「貴よね、私の事をずっと呼んでいたのは」
レッドリオの思考は、唐突なモモの獨り言に打ち切られる。モモはクリスタルのに向かって、再び話しかける。
「いい加減、だんまりはやめて。せっかくこうして、來てあげたのよ。『真の聖』……いいえ、真のヒロインのこのモモが」
「ヒロイン……?」
意味の分からない単語に反応するレッドリオに、ちらりと視線を寄越すモモだったが、すぐにクリスタルに向き直る。
「貴に聞きたい事は、たくさんあるわ。どうしてクロエが魔になってないのよ? 山賊に穢されて絶した彼がここに迷い込んで、憎しみと呪いに囚われたところを、貴が力を貸してあげるんでしょ?」
「なんだって……!?」
聞き捨てならないセリフに、思わず聲がれる。モモの主張からすると、クロエが魔になるきっかけは山賊に襲われる事らしいのだが、その前提は覆されている。彼はシンと二人で、山賊を撃退したのだから。
「クロエが魔になってくれないと、ロック――グリンダ伯爵が助けに來てくれないじゃない! もうシナリオが滅茶苦茶だわ。大、あんたも悔しくないの? 王國はあんたを陥れてこんな所に封印した、にっくきチェリー=ブロッサムが幅利かせてんのよ。あんた一人を悪者にして、自分は王子様と幸せになって聖と崇められて。
ねぇ、悔しいでしょ!? クロエが魔になる時、そう言ってたもんね。だったらこんな所で呑気に寢てないで、さっさとあの悪役令嬢を魔にしなさいよ、ヨルダ=ムーン!!」
怒鳴り散らして、クリスタルをガンガン叩き出すモモ。唖然としていたレッドリオは我に返ると、彼を羽い絞めにして止める。小さなその手は、真っ赤になっていた。
「やめろ、これは古(いにしえ)の魔なんだろう!? 封印が解けたらどうするんだ」
「だってクロエが、あのが悪いのよ! 悪役令嬢のくせに、いつまでもここに來ないから! 魔になってくれないから、仕方ないから私がやってあげるんじゃない」
「彼はとっくに魔にられているんじゃなかったのか? 君がそう言ったんだろう、モモ! その言い草だと、まるで――クロエに魔になってしい、みたいに聞こえるぞ……」
最後には、語尾が小さくなる。信じたくなかった、モモがこんな事を言うなんて。彼はいつでも、他人の痛みを自分の事のように悲しんでくれた。こんな、ライバルの不幸を願うなど。
祈るような気持ちで見つめるレッドリオの前で、モモの口端が兇悪につり上がる。ニタリと醜悪な笑みでクリスタルをバックに立つと、彼は天を仰いだ。
「だって私はヒロインで、彼は悪役令嬢なんだもの」
※ツギクルブックス様より書籍版が10月10日に発売となります。
※書籍報は活報告にて隨時更新していきます。
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