《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》72:悪夢の

「――様、ベニー様! しっかり目を覚まして下さい!!」

「……はっ!」

気が付くと、レッドリオはダイに助け起こされていた。頬がじんじんと痛むのは、かなり強い力で叩かれたからだろう。いくら気安い関係だからと言っても、王子に対して遠慮がなさ過ぎだ。

「……何があったんだ?」

「そりゃこっちが聞きたいですよ」

どうやら気絶していたらしい。その間にダイや騎士団がレッドリオの魔力印を辿ってこちらへ駆け付けたようなのだが、周囲は地獄と化していた。

の中をクロエのような黒髪が埋め盡くし、生きのようにうねっている。騎士たちが何とか進もうとして藻掻いているが、絡まってしまいきが取れない。

中央には黒髪、赤眼と化したが高笑いし続けていた。

「何です? あの化けは」

「……モモだ」

「えっ」

信じられない、と言いたげにダイはモモから視線をレッドリオに移す。それはレッドリオも同だった。自分たちを利用していたと言うだけでは、こんなにもショックをけたりはしない。と言うものは多かれなかれ、打算的な生きだからだ。しかし、聖教會に認められた聖が魔になるなど、誰が信じようか。

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(……いや、モモ本人が言っていたな。聖が魔になる事もあると。ただし、クロエの事だったが)

「魔は、あいつだったんだ。モモは古(いにしえ)の魔ヨルダの封印を解いて、あのような姿になった」

「へえ……」

ダイは驚いていたが、思ったよりもダメージはけていない。そんな事もあるんだろう、ぐらいにしかけ止めていないようだ。

「ショックじゃないのか、好きなが化けに変わり果ててしまって」

「そりゃあ、俺のタイプは守ってあげたくなる、か弱いだけど。俺のお袋だって、今でこそ親父をに敷いてるけど、昔はお淑やかだって言うし。姉ちゃんも俺をどつき回せるほど強いのに、婚約者から見れば神なんだって。

本當に好きなら、魔である事もひっくるめてけ止めてあげるべきじゃないっすかね」

ダイが悟ったような事を言い出す。モモに出會うまで、なんて腹の足しにもなりゃしない、なんて興味も持たなかった男がだ。クロエに會いにグレースの宿屋に押しかけてから、急に大人になってしまったようだ。

「……とか何とか言って、キサラに鞍替えしたからもう他人事なんだろう」

「いやぁ~……へっへっへ」

ツッコまれて照れ臭そうに頭を掻くダイ。し前までレッドリオたちと共にモモを天使だと崇めていたくせに、一抜けて幸せそうなのが腹立たしい。

(裏切り者め……フラれてしまえ!)

憎々しげに睨み付けるが、ダイはそんな視線を気にする風もなく狀況を確認する。

「ここはあの髪のが襲ってこない場所ですが、あれを何とかしないとく事もできません」

ダイが指差す先には、襲い來る髪と戦う騎士たちの姿があった。ズバッと切られた髪は、途端にドロドロと溶け出し瘴気を撒き散らす。充満した瘴気からは魔獣が生まれ、魔と戦おうとする彼等の妨害をする。

ある者は瘴気にやられ、ある者は髪に絡めとられ、またある者は魔獣との戦闘で傷を負う。このままでは全滅の危機にあった。

(俺の、せいなのか……俺に見る目がなかったから、よりによって魔を『真の聖』などと)

ぐっと剣を握りしめ、レッドリオが立ち上がる。自分たちの我儘で引き起こした事態に、これ以上犠牲者を出す訳にはいかない。ダイはモモの下へ向かおうとするレッドリオを慌てて止めた。

「どこ行くんですか。ベニー様までやられてしまったら、この國はどうなるんです」

「キースがいるだろう。あいつの事だ、何か策があるからこそけしかけたんだろうさ」

「だったら、ここでわざわざやられにいく事はない。主君を見殺しにすれば、俺が親父に殺されちまう」

「離せ、これはけじめなんだ! 俺が、モモを止めないと……」

い絞めにされながらも、モモに向かって手をばす。クロエが、許されたにもかかわらず「けじめだ」と言っていた気持ちが理解できた。たとえ神が許しても、自分を罰しなければ自が許せない。

(まさか、あいつに共できる日が來るとはな……クロエ、生きて戻れるかは分からんが、もう一度會えたら頭の一つでも下げてやる)

ダイの腕を振り払ったレッドリオは、自嘲の笑みを浮かべながら剣を構え、突っ込んでいく。り輝く一閃が魔獣の群れを薙ぎ払うが、すぐにうねる黒髪に手足を封じられてしまう。

萬事休す、と思ったその時、レッドリオは突き飛ばされて地面に転がっていた。その場所には魔獣も髪もない。視界の端に、向こうから慌てて走ってくるダイの姿がある。

「誰、だ……?」

※ツギクルブックス様より書籍版が10月10日に発売となります。

※書籍報は活報告にて隨時更新していきます。

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