《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》268:に殉じる者たち④

「あのー……」

助け船を出したのは、一連の騒をじっと見守っていたミズーリ嬢だった。おずおずと挙手する彼に、この場にいる全員の視線が集まる。

「ダイ様の腕なら、何とかなるかもしれませんよ。たぶん」

「それは本當かね?」

詰め寄るネブル將軍から一歩引きつつ、ミズーリ嬢は頷く。

「コランダム王國では我が國よりもずっと能の良い義手が造られていますし……トレジストン王國においては現在、欠損したの部位を復元させる研究が行われていると聞きます」

さすがは貿易港を持つウォーター伯爵家の令嬢。ミズーリ嬢が提示したのは、隣國の技の手を借りるというものだった。コランダム王國、トレジストン王國共に帝國と隣接している事もあり、また強力な魔との戦闘もカラフレア王國より多く経験しているので、治癒魔法が間に合わずにの一部を失くすケースもたまにあるらしい。

が見えてきた將軍は、喜び勇んでこの提案に乗っかろうとした。

「ダイ、すぐにどちらかの國への留學準備をしておけ。ついでにコランダムかトレジストンの貴族に釣書でも送っておくか」

「えー!? やだよキサラと離れ離れになるくらいだったら、腕なんて失くしたまんまでも」

「何を言うの!! せっかく令嬢方が貴方を心配してくださっているというのに!」

ダイ様一家はまだまだめそうだったが、とりあえずこれで問題は一つ解決しそうだった。(元より本人はそれほど気にしていなかったが)

白けた目をしているキサラに苦笑し、私はミズーリ嬢を伴ってリハビリを再開するために階段を上り始める。

二階まで上り切ったところでふと、モモが寢かせられている部屋のドアが目にった。意識が戻ってからは一度も顔を合わせてはいないけれど、シンから聞いた話では彼はずっと――

「どうします? 様子を見に行かれますか?」

私の視線に気付いたミズーリ嬢が気遣ってくれる。その申し出はありがたかったけれど。

「……ううん、今はいいわ」

首を橫に振るとドアの前を通り過ぎ、私は部屋に戻った。

(會いたくない、と言えば噓になるけれど)

まだ、どんな顔をして會えばいいのかなんて事が、ぐるぐる頭を巡っている最中で、なかなか決心がつかない。

最後の戦いでは、自分がしてきた事の罪と償いに向き合うのが一杯で……ロックの悲しむ顔が見たくなくて……そのためなら、かつて憎んだ敵にだって手を差しべる覚悟だった。初代聖に啖呵を切れるほどに。

だけど本當に、私にそれができるのかしら?

ロックとモモが寄り添っている景を、祝福する事なんて……だってレッドリオ殿下にモモが馴れ馴れしく纏わり付いた時は、あんなにも頭の中が真っ赤になるぐらい嫉妬していたのに。あのを焦がすようなに、再び飲み込まれない保証はない。

もし、外れたはずの『悪役令嬢』の役割から逃れられていなかったら。

私にはそれが恐ろしかった。

※ツギクルブックス様より書籍版・電子版、モンスターコミックスf様より漫畫版が発売。

※「がうがうモンスター」「マンガがうがう」にてコミカライズが連載中。

※書籍報は活報告にて隨時更新していきます。

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