《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》272:眠り姫を挾んで

テーブルに置いてあったクッキーりの袋を渡すと、け取ってくれたロックは椅子に腰かけて食べ始めた。それに倣い、私もベッドを挾んで向かい合わせで座る。

沈黙の中、サクサクとクッキーを頬張る音だけが響く。

「もう一週間も眠ったままなのよね、モモ……」

「ああ……命に別狀はないらしいが」

あっという間に平らげ、空になった袋をくず籠に放り投げながらロックは抑揚のない聲で答える。私もそうだったらしいのだけど、寢ている間はポーションを飲ませて力を回復させていたんだとか。でも多用は中毒になるし、栄養が取れる訳じゃないのでお勧めはできない。

「神力がゼロになった影響もあるだろうけど、たぶん……三年間も別の人格に乗っ取られていた弊害で、元の人格がなかなか浮上してこれないのかも」

神聖魔法『忘卻(オブリヴィオン)』により、私はモモから前世に関する記憶を全て消し去った。これ以上の魔化を防ぐためとは言え、手段としては暴だったし、こうも長い間目を覚まさないとなると、意識に何か支障が出ているのかもしれない。やっぱりゲーム……どころか夢を參考にしたからかしら?

(考えてみれば、數年分の経験がごっそり消えて無くなるって、結構重い罰よね)

固い表でモモを見つめているロックに責任をじる。が、それに関して責めるような事は何も言われなかった。

「こいつにもケチがついちまったよなぁ。けど、もしあいつらが過剰な報復をするってんなら、俺は……」

そこで言葉を切るロック。私には、何となく分かる……モモに厳罰が下されるのなら、ロックは彼を連れて逃げるだろう。彼はいつだってモモの味方だ。ラストバトルで斬ろうとした事すら、かつてわした彼との約束だったのだから。

「大丈夫でしょ。殿下たちは何だかんだ言って、モモ様には甘いの」

「そうは言っても、ずっと騙されてたんだろ?」

「それ以上に、恩があるのよ。みんな……」

たとえイケメンハーレムのためだとしても、彼らの心の闇を祓ったのは前世の記憶を持っていたモモだ。しかも今の彼は、魔だった頃の記憶を失くしている。責められないだろう。

「モモ様も心配だけど、ロックはその後何ともない? それにしても、あの攻撃からよく即死を免れたものね。それもグリーンドラゴンの加護なの?」

私はロックに怪我や瘴気の影響を確認する。いくら神魔法と言えど危なかったと告げれば、ロックは決まり悪そうに懐から小さな袋を取り出した。

「あ、いや……さすがに俺も勢力圏外で致命傷を負えば助からねぇよ。いくらか持ったのは、こいつのおかげだな」

そう言って小袋を私の手の中に放り投げる。縛るのに使った紐は、私があげたアミュレットだけど……解いて中を確かめれば、砂がっているだけだった。

「何これ?」

「月の石だ。戦いの後で見てみたらこうなってた」

「えっ!?」

聖なる泉で使えば月の神に會えると言われる激レアアイテムが、無殘にも々になっていた……

※ツギクルブックス様より書籍版・電子版、モンスターコミックスf様より漫畫版が発売。

※「がうがうモンスター」「マンガがうがう」にてコミカライズが連載中。

※書籍報は活報告にて隨時更新していきます。

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