《【書籍化&コミカライズ】追放悪役令嬢、只今監視中!【WEB版】》288:今更な対面

瞼に差し込む朝のに、夜が明けた事に気付きガバッと起き上がる。

「いけない、掃除……と」

休んでていいんだった。たった一ヶ月の習慣で、がもう宿屋の娘に変わってしまっているのだろう。小さく欠をしながら隣を見ると、布を蹴飛ばしたモモがすごい寢相ですやすや眠っていた。

「風邪引くわよ……」

引かなそうだけど。攻略対象たちがこんなの見たらショックけるだろうか……でも口調一つで充分衝撃みたいだったし。

落ちた布を拾ってかけてあげると、私はモモを起こさないようにそっと退室した。

部屋の外では既に護衛の皆さんたちが手伝いをしている。貸し切りだからってグレースの宿屋に負擔させるなという王太子命令らしい。でもその分、普段ここを使っている冒険者の皆さんを追い出す形になってしまったのが申し訳ない。

『ダンジョンそのものが消えちまったんだから、どの道來る奴なんてそういないよ』

將さんは気にするなとばかりにそう言ってくれたけど。

「おはようございます。ご苦労様です」

廊下でモップ掛けをしている騎士の一人に聲をかけたところ、ぎょっとした彼はまじまじと私を見ていたが、ハッとして敬禮する。

「あ、寢起きだから見苦しい格好でごめんなさい?」

「い、いえ失禮致しました! 洗面所はあちらになりますのでご案を……」

いや、知ってるから。申し出を斷って浴室に向かう途中、そう言えば監視している関係者以外は私が変わった事を知らないんだと思い至る。王都にいた頃、ご苦労様なんて言った事なかったわ……

鍵がかかっていなかったので、ガチャリと浴室のドアを開けると、緑の頭と日に焼けた背中が目にってドキッとした。

(ろ、ロックが、上半で……ひゃあ~!)

「お、クロエか。おはよう」

「おはようじゃないわよ。か、鍵くらいかけたら?」

するあまり、見當違いな抗議が口から出てしまう。一見ひょろっとしたロックのは、ってみると意外と固い。騎士団で鍛えられているせいか、守護神の加護のおかげか、筋と骨の度が高いのかしら?

チラチラ窺う私に、ロックは首を傾げながら肩に引っかけたタオルで頭をがしがし拭いた。

「別にいいだろ、じゃあるまいし……あ、お前は男のなんて見苦しくて嫌なんだっけ?」

「だ、誰がそんな事言ったの?」

「シンだけど」

シン、貴方って人はぁ~~……本當すみませんでした!

「見慣れてはいるのよ? 男兄弟だし、聖教會で患者を診る時に服をがせる事もあるから」

「俺もやられたしな……今更だろ」

「……そうだけど」

そうだけど。

シンのにわざと傷付けて治癒するという変態行為 (※後から知った)までしておいて何だが、私は男らしいというものがあまり好きではなかった。だからシンには極力、完璧なしさを保つ事を強いた。教科書でも目にするような肢であれば見苦しくもないだろうと。

(ひょっとしたら私、男嫌いだった? 婚約者の殿下をアクセサリー扱いしてたし……異として意識するのを無意識に避けていたのかも)

それが前世のそういう経験の記憶まで戻ったからか……あるいはモモとの思い出話を聞かされたからか。今更ロックに『男』をじてしまってドキドキしてしまう。

変な気分になっているのを誤魔化すように、私は自分の頬をペチンと叩いた。

※ツギクルブックス様より書籍版・電子版、モンスターコミックスf様より漫畫版が発売。

※「がうがうモンスター」「マンガがうがう」にてコミカライズが連載中。

※書籍報は活報告にて隨時更新していきます。

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