《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》67 王妃の戸い 4

以前、代わりになった時には、母國で2年間眠っていた。

そして、その時は、目覚めて1週間後には、スターリング王國行きの馬車に乗らせてもらえた。

ただし、目覚めた直後からの數日間はベッドの上での生活を余儀なくされ、馬車に乗るのにも、『1時間ごとに休憩を取るように』との條件が付いてきた。

そのため、當時の私は、母國の家族たちは何て心配なのかしらとびっくりしたものだけれど、どうやらフェリクス様はそれ以上に心配のようだった。

私がベッドの上で生活するのは同じだけれど、母國では1日1回だった醫師の診斷が、ここでは1日3回もあるのだから。

力は落ちているかもしれないけれど、十分眠ったから、私は健康だわ。そんなに何度も確認しなくても大丈夫よ」

忙しい宮廷醫師の手を、これ以上煩わせるわけにいかないと、私の健康狀態に問題がない旨を説明したけれど、醫師は困った表を浮かべただけだった。

「ですが、こちらは國王陛下からのご指示でして。毎回、診斷後には國王陛下に結果をご報告することになっていますので、従わないわけにはいかないのです」

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「まあ」

どうやら私の調に問題がある時だけではなく、毎回、きっちりと醫師自らフェリクス様へ報告を行っているらしい。

それはどう考えてもやりすぎだと思うのだけれど、それらを指示しているのは全てフェリクス様らしい。

10年前は気付かなかったけれど、フェリクス様は重度の心配だったのかしら?

そんな彼を一どうしたものかしら、と私は頭を抱える。

目覚めた翌朝に、『しでいいから毎日話をしたい』と言っていたフェリクス様は、本當に毎日、私の部屋を訪れていた。

もっと言うと、フェリクス様は日に一度でなく、何度も私の許を訪れていた。

その行は、忙しい王として破格のものに思われる。

フェリクス様がものすごく忙しくて、大勢の者が彼を頼りにしているのは間違いないのだから、……そして、私は特に面白い話も提供できないのだから、私室訪問の約束はしたものの、実際には彼が私の許を何度か訪れたら、それで終わりになると思っていたのに。

なのに、フェリクス様は1週間が過ぎても、日に何度も私を訪れ、事前に考えてきたらしい話を一生懸命していく。

フェリクス様が私を楽しませようと、明らかに前準備をしてきている様子に、私は何も言えなくなって、……そして、彼が私のために努力してくれることが嬉しくなって、いつの間にか、私は彼と一緒に過ごす時間を心待ちにするようになってしまった。

けれど、果たしてこのままの狀態を続けてもいいのだろうか?

忙しい彼にとって、頻繁に私の元を訪れることは、負擔になるのではないだろうか?

そう心配しながらも、彼がいつも嬉しそうにしているため、訪れを拒否できないでいると、フェリクス様はいつの間にか、私の食事時にも同席するようになってしまった。

そして、1口でも多く、私に食べさせようとする。

その気持ちをありがたく思ったけれど、ただ私の食事を見つめるだけの時間を過ごさせるのは申し訳なく思われ、正直に気持ちを伝えたところ、その日以降、フェリクス様は私の寢室で一緒に食事をするようになってしまった。

そして、夜にも、眠っている際に布団を跳ねのけて風邪を引いたら大変だとか、夜中にが渇いて水がほしくなったら人手がいるとか、絶対に王の仕事ではない役割を自分のものだと言い張って、フェリクス様は私の寢室で休むようになった。

あの長さが足りず、らかさも足りない、私の部屋の長椅子で。

「……ミレナ、フェリクス様はどうしてあの長椅子に、これほど固執するのかしら? しかも、合が異なると目覚めが悪くなると言われて、ご自分の部屋に置き直すことも厭われるのよ」

フェリクス様の気持ちが分からずに質問すると、ミレナは私の髪をすきながらすらすらと答えた。

「それは、この部屋で眠りたいと、正攻法で陛下がおっしゃっても、ルピア様が拒絶されそうでしたので、何とか頑張ってこの部屋の長椅子で眠る理由を考えられたのだと思いますよ。當のルピア様が首を捻られているので、あまり優れた説明ではなかったようですが」

「えっ、理由を考えたって……本當は快適だと思っていないということ? でも、フェリクス様は10年間、あの長椅子で眠られていたのよね?」

ミレナの言葉を理解できずに聞き返すと、代わりに聖獣姿のバドが答えてくれる。

「ルピア、それは突き詰めない方がいい容だよ。あの長椅子がダメだと言ったら、次は『この部屋の絨毯の上が、最も快適に眠れる場所だ!』とフェリクスは言い出すと思うから。ルピアだって、床で眠られるよりはいいんじゃないの?」

バドの一言で、一気に會話から真面目さが失われる。

「もう、バドったら。私は真面目に話をしているのに、すぐにふざけるんだから。フェリクス様がそんなことを言い出すはずがないじゃないの」

そうたしなめていると、バドは分かっていないと言いたげに、尾をふさりと振った。

「これが、魔とそれ以外の人間の壁だよね。ルピアの中では時間が止まっていたから、周りの者たちの時間はいていて、が育ったことを、実として理解できないんだよね。……まあ、いいや。ところで、さっきからやけに念りに髪を整えているけれど、誰か來る予定でもあるの?」

「ええ、もうすぐクリスタが顔を見に來てくれるのよ!」

私はにこりと微笑みながら、バドに告げた。

フェリクス様の妹であるクリスタは、最後に會った時には9歳のおしゃまなだった。

それが、今ではどんな素敵なレディになっているのかしら?

そううきうきしながら訪れを待っていると、ノックの音と同時に扉が開いた。

「ルピアお義姉様!」

そして、澄んだ高い聲が響く。

現れたのは、誰が見ても間違いようのない絶世のだった。

「えっ、クリスタ?」

をベースに橙のメッシュがった髪は、確かに小さなクリスタと同じだったけれど、……明らかに私よりも背が高くなっているし、型もおうとつがあってらしいし、キレイに化粧された顔立ちは洗練されているし……えっ??

「クリスタよね? でも、私よりも大人っぽくなっているのだけど?」

大きく首を傾げる私を見て、クリスタは楽しそうに微笑んだ。

「そうでしょうね。だって私は19歳になったんですもの! 17歳のお義姉様より年上だわ」

「まあ、その通りだわ!」

気付いていなかったことを指摘され、私は驚いて目を見張ったのだった。

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