《【書籍化コミカライズ】死に戻り令嬢の仮初め結婚~二度目の人生は生真面目將軍と星獣もふもふ~》2-2

「おまえはただ、そこで大人しくしていて問われたことに『はい』と言えばいい。いいな? 貴族の娘として醜態は曬すなよ」

伯父が小聲でつぶやいた。

「はい」

やがて國王と側近、それから王太子ジョザイアが姿を見せた。セレストは意識してジョザイアのほうを見ないようにする。

今は、フィルに褒賞が與えられるのを見守るほうに集中すべきだ。

軍の音楽隊による演奏で式典がはじまった。

まずは、階級の低い者から順番に名前が読み上げられる。そしてフィルの番は最後だった。活躍著しい星獣使いに対する褒賞の容は、國王によって読み上げられる。

「フィル・ヘーゼルダイン大佐。そなたには、ここにいるゴールディング侯爵家のセレスト嬢との婚姻を條件に、エインズワース伯爵の位および領地、そして將軍職を與えるものとする」

會場にいる者たちがどよめき、視線が一気にセレストに集まった。

前回のセレストは、ここで怯え震えていた。今回は、自ら一歩前に歩み出て淑の禮をしてみせた。

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まぬ結婚を強要されている令嬢という印象を與えれば、フィルが悪人になってしまうからだ。

「フィル・ヘーゼルダイン大佐! 國王陛下から直々の褒賞であるぞ。返事をお忘れか?」

側近が返答を促した。

「驚いて聲も出ないのか。よいよい……。ほれ、誰か書類をここへ。ヘーゼルダイン大佐、早くサインをしたまえ」

國王が、書類を指差して催促する。それは國王からの褒賞をけるという容で、もし署名すれば與えた國王本人ですら、なかったことにはできなくなる。

「ご無禮をお許しください。過分な褒賞に驚き、言葉も出ませんでした。……ですが……」

ここまでは一度目の世界とほぼ同じやり取りだった。

フィルに考える時間を與えれば、けないことによる不利益を計算してしまう。だから國王は、今すぐの署名を求めているのだ。

「ですが? なんだ、まさか辭退するようなことはあるまいな?」

玉座で頬杖をついている國王が不敵に笑った。

「もちろんでございます。……ありがたく頂戴し、今後は過分な地位に見合った働きをすると誓います」

フィルがその言葉を発した次の瞬間、謁見の間が靜まり返る。

ただの軍人であるフィルが、彼の常識から推測してありえない言をしたからだ。フィルはそのまま書類の置かれた臺まで進み、ペンを手にした。

「こ、侯爵令嬢! そなたもこの縁談に不満はないな!?」

焦った國王がセレストに問いかけた。

「はい。私は國王陛下がお決めくださったえんだん(・・・・)を、大切にしたいと考えます」

しっかりと答えたあと、子供らしい表を心がけて笑って見せた。

「セレスト! おまえは縁談の意味をわかっているのか!?」

伯父は額に汗をにじませている。

「はい。伯爵家のお父様とお母様も、小さな頃からこんやく(・・・・)していて、とても仲がよかったと聞いております。……それに本日は、問われたことに『はい』と答える約束です……」

後半部分は伯父だけに聞こえる小聲で告げた。

母はエインズワース伯爵家の一人娘だった。遠縁にあたり侯爵家の次男という立場の父が伯爵家の養子になるというかたちで爵位を継承した。

二人の婚約は、小さな頃から決まっていたという。

子供の頃に親が結婚相手を決めるのは貴族だったらよくある話だ。

めずらしいのは、相手が貴族ではなく軍人であることと、十二歳の歳の差があることだけだ。

セレストは、フィルに対し趣味の疑が持ち上がるのをできるだけ回避しつつ、この結婚に異議などないと主張した。

「令嬢は貴族として立派な教育をけて育ったのだな……ハ、ハハ……」

國王の目は笑っていない。あからさまに狼狽していた。

フィルの常識や誠実な人柄を當てにして練られた謀略は、きっと見當違いなどではない。

実際、一度目の世界でフィルは怯えるセレストのことを慮って辭退したのだから。

今回、フィルがそうしなかったのは、セレストの説得があったからだ。

「私を引き取ってくださったお父様やお母様からは、常に貴族の令嬢としてふさわしくあれと指導されておりました」

馬車の中で散々脅された容から推測するに、大人たちはセレストがフィルを拒絶することを期待していたのだろう。

伯父の教育のたまものだと主張したのは、ちょっとした反抗心だった。

「……エインズワース伯爵家の今後が楽しみだな」

國王は、セレストの言葉に頷くしかない。

公の場で、文書として記されている褒賞容は「冗談だった」などと言って撤回することは不可能だ。そうこうしているあいだにフィルが署名を済ませた。

この瞬間より、フィル・ヘーゼルダインはエインズワース伯爵となった。

署名を済ませたフィルは、元の位置には戻らず、セレストの前までやってきて跪いた。

「婚約者殿。これからよろしく頼む。……今日會ったばかりだ。授與式が終わったら、し時間をもらえるだろうか? 城の庭園は広くとてもしいから案しよう」

「はい、楽しみにしております」

セレストは彼に向けて手を差し出した。フィルはし困った顔をしながら、その手を取って、婚約の証として手の甲にキスをしてくれた。

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