《【書籍化コミカライズ】死に戻り令嬢の仮初め結婚~二度目の人生は生真面目將軍と星獣もふもふ~》4-4
セレストが最も得意なは氷を使った攻撃だ。まずは防壁のない高い場所に水を生み出す。その水を闇狼の真上に移させて、一気に落とす。そして地面に落ちる瞬間に水の中にある熱を奪う――二匹の闇狼が一瞬にして氷像のように固まった。
「……セレストさん!?」
「いいから、ヴェネッサさんはそのまま防壁の維持をお願いします」
「は、はいっ!」
ヴェネッサが亀裂を塞ぎ、防壁を強化する。
いつの間にかモーリスが防壁を大きく迂回して、壁の向こうの魔獣と対峙していた。三匹の魔獣が彼に襲いかかろうとしている。セレストは小さな水の壁をいくつも築いて敵の進路を妨害した。
「助かります!」
魔獣はまっすぐには進めず、結果として三匹の連攜が取れなくなった。モーリスにより一匹が倒された。
(モーリスさん、すごい……。あと二匹、任せても大丈夫そう……でも……)
セレストの知識は十八歳の頃のままで、の使い方も染みついている。けれどのほうが心についていかない。以前と同じような覚で星神力を使おうとしても、半分程度の力しか出なかった。まだ未で、星獣の力もないせいだ。
Advertisement
「やらなきゃ……」
たった一度、大がかりなを使っただけで息が上がっていた。
あと何回、が使えるだろうか。おそらく隣にいるヴェネッサも長くは持たない。
セレストは急ぎ、手を大きく掲げて再びを使う。
「……くっ!」
先ほどと同じを使おうとした瞬間、三匹の闇狼は分散してしまう。彼らは人との対話はできないが、知能がある。氷漬けの仲間を見て、固まっていたらそこを狙われると気づいたのだ。
セレストは仕方なく、一匹を確実に倒すしかなかった。
「あと……二匹……はぁっ、はぁっ」
そのあいだにモーリスが三匹の魔獣を倒してくれた。はじめて共闘したのに、上手く戦えていた。きっとモーリスのほうが、セレストに合わせるだけの余裕を持っているからだ。
(お願い、あとしだから……頑張れ、私……)
自分の中の星神力が減っていることをセレストは自覚していた。限界が近づくと、にも影響を及ぼす。両手両腳に重しをつけられて、全力で走れと言われているみたいにつらかった。
のにある星神力と相談しながら、セレストは落ち著いてさらに一匹の闇狼を無力化する。そのあいだ、もう一匹の魔獣がヴェネッサの防壁に突進する。
モーリスが最後の一匹に近づくが、壁が壊れるのが先だった。
「あっ!」
壁が砕け散り、セレストとヴェネッサの目の前に闇狼が迫った。
(もうだめ……っ!)
獰猛な獣が大きな口を開け、尖った牙が見えた。
セレストは未來を変えようとしたのに、力が及ばなかった。――あきらめかけた。
「セレストッ!」
名を呼ばれたのと同時に風が吹き荒れた。広い背中のせいでなにも見えない。気づいたときには闇狼は、炎をまとうライオンによって焼かれていた。
「……フィル様、レグルス……スーまで……」
魔獣を一瞬で倒したのはレグルス、そしてセレストの目の前にはスーを肩に乗せたフィルがいた。
セレストたちを庇う位置に立っていたフィルがゆっくりと振り向く。眉間にしわを寄せ、憤っているように見える。
セレストには勝手な行をしたという自覚があった。
(フィル様……怒っているの……?)
フィルに怒られるのは嫌だった。セレストは泣きたい気持ちになりながら、逃げ場を探した。ちょうどモーリスが後方から近づいていたから、咄嗟に彼の背後に回ってを隠す。
「なっ! セレスト……なんで隠れるんだ!?」
やはり、フィルは怒っている。
心は十八歳だと言いながら、フィルから冷たい視線を向けられたら恐ろしくてがすくんだ。おそらく嫌われるのが耐えられないのだ。
「……ごめんなさい、フィル様」
予測ができないはずの急な魔獣の襲來を予測してしまった。決して萬能とは言えないが、死に戻った影響で得た知識は、セレストの知っている範囲でのみ、未來予知に近い働きをする。
そんな力を持っていたら、権力者から利用されるかもしれない。なくとも再興したばかりの伯爵家が個人的に持っていていい力ではないはずだ。
が見するような行を、セレストは積極的にしてしまった。
「セレストは、誰かに恥じる行をしたのか?」
「……いいえ」
「だったら謝るな。おいで」
セレストはモーリスのからフィルのほうを覗き見る。膝をつき、手を広げ、飛び込んでこいと促している。困った顔をして、じっとセレストのほうを見ていた。
「フィル様!」
セレストは駆けだしてフィルに抱きついた。なんとなくスーやレグルスと同じ扱いになっているのが納得できなかったが、フィルが許してくれるのなら些細なことだった。
「あの……これはいったい、どういう狀況なのでしょうか? ……い、いえ。まずはお禮を。危ないところを助けてくださってありがとうございました。それであの……どうしてセレストさんはこちらへ?」
ヴェネッサが問いかけた。
今、この場には言い訳が必要な相手が二人いる。一人はモーリスで、もう一人はヴェネッサだ。
セレストは言葉に詰まった。どんな説明で、事前に魔獣の出現を予想していたことを納得してもらえるだろうか。
「ネッサ!」
そのとき、遠くで誰かの聲が響く。
遅れて姿を見せたのはドウェインだった。息を切らし、を使いながら斜面を駆けて、皆のところまでやってくる。彼の頭上にはミモザもいる。
ドウェインは、ヴェネッサの姿を見つけると予告なく抱きしめた。
「ネッサ、よかった……一人で殘ったって……魔獣を倒す力なんてないのに……」
「あぁぁわっ、わわっ、離して!」
「嫌よ。ミモザが朝からおかしかったの。私の言うことを聞かずにネッサの近くにとどまろうとしたり……。それで無理矢理実化を解いてしまったの。……ミモザは、こうなると知っていたのね?」
癒やしの星獣は、クルクルと回りながらセレストの目の前までやってきた。セレストはフィルから離れ、手をばしミモザにれた。
ミモザはよほど嬉しかったのだろう。セレストの手に何度もをりつけてくる。
「よかったね、ミモザ」
ミモザはやはり一度目の世界の記憶を持っている。ドウェインが大切にしているヴェネッサを守りたくて、セレストを頼ろうとしたのだ。
「氷の魔法……、セレちゃんが使ったの? ヴェネッサを助けてくれたの?」
「は、はい。咄嗟に……その……」
「どうしてミモザが伝えようとしていることがわかったの?」
一度目の世界で、ドウェインの傍らにヴェネッサがいなかったから。セレストとしては、そう正直に告げる気には到底なれなかった。
「なんとなく……です。騒ぎがして……」
「ミモザが魔獣の出現を察知していたとして、なぜ危機に陥るのがヴェネッサだとわかったのかしら……? そして私ではなくセレちゃんに伝えたがっていたのはどうして? まるで未來が見えているみたい」
この時期にフォルシー山で魔獣が発生する気配をじる力がミモザに備わっていたとしたら、危ないのはドウェインも同じだ。非戦闘員ばかりが殘っているベースキャンプが襲撃されるということまでわかっていないと、これまでのミモザの態度はおかしい。
「ドウェイン」
セレストが上手く説明できずに黙り込んでいると、フィルが口を開いた。
「……セレストはモーリスを供にして、この山中でしか取れないめずらしい木の実を探しに來ていた」
ものすごく苦しい言い訳だ。噓が苦手なのか、口の端をヒクヒクとさせかなりぎこちない。
男女比がおかしい世界に飛ばされました
主人公の禮二がトラックに轢かれてしまい、起きると男女比が1:100という女性の方が多い世界だった。その世界では、男性はとても貴重で目の前に男性がいると、すぐに襲ってしまうほどだ。その世界で禮二は生きて行く....。 基本的には小説家になろうの方で活動しています。(違う作品を出していますが) なので、とても更新が遅いですが、見てくれると嬉しいです。 多分二週間に一回のペースだと思います。……恐らく。………恐らく。早い時と遅い時があります。
8 147発展途上の異世界に、銃を持って行ったら。
「おめでとう!抽選の結果、君を異世界に送ることになったよ!」 「……抽選の結果って……」 『百鬼(なきり) 樹(いつき)』は高校生―――だった。 ある日、授業中に眠っていると不思議な光に包まれ、目が覚めると……白い空間にいた。 そこで女神を自稱する幼女に會い『異世界を救ってくれないか?』と頼まれる。 女神から『異世界転移特典』として『不思議な銃』をもらい、さらには『無限魔力』というチート能力、挙げ句の果てには『身體能力を底上げ』してまでもらい――― 「そうだな……危険な目には遭いたくないし、気が向いたら異世界を救うか」 ※魔法を使いたがる少女。観光マニアの僕っ娘。中二病の少女。ヤンデレお姫様。異世界から來た少女。ツッコミ女騎士、ドMマーメイドなど、本作品のヒロインはクセが強いです。 ※戦闘パート7割、ヒロインパート3割で作品を進めて行こうと思っています。 ※最近、銃の出番が少なくなっていますが、いつか強化する予定ですので……タイトル詐欺にならないように頑張ります。 ※この作品は、小説家になろうにも投稿しています。
8 116初心者がVRMMOをやります(仮)
親の頭があまりにも固いため、ゲームはおろか攜帯すらもっていない美玖(みく)。このたびめでたく高校一年生になりましたので、今まで母方祖母に預かっていてもらったお金でVRMMORPGをやることに決めました。 ただ、周囲との兼ね合い上、メジャーなものはやりたくない。親の目を盜んですることになるから、ヘッドギアは小さなもの。そして月額料金は発生せず、必要に応じて課金するもの、と色々條件を絞ったら、「TabTapS!」というゲームにたどり著いた。 ただ、このゲーム初心者がやるにはかなり厳しいもので……
8 198FreeWorldOnline~初めてのVRはレア種族で~
このお話は今年で高校一年生になり念願のフルダイブ型VRMMOをプレイ出來るようになった東雲亮太が 運良く手にいれたFreeWorldOnlineで好き勝手のんびり気ままに楽しむ日常である
8 195御曹司の召使はかく語りき
施設暮らしだった、あたしこと“みなぎ”は、ひょんなことから御曹司の召使『ナギ』となった。そんな私の朝一番の仕事は、主である星城透哉様を起こすところから始まる。――大企業の御曹司×ローテンション召使の疑似家族な毎日。(ほのぼのとした日常がメイン。基本的に一話完結です。ご都合主義)
8 162俺の大好きなアイドルが妹だった?!(仮)
ストック準備中 日本、いや世界中に愛されるアイドルがいた。その名もMain。リーダーのあいを含む3人ユニット。 そんな人気アイドルのあいが何と俺の妹だった?! ただのメガネ妹が自分の大好きなアイドルだと知った主人公、坴(りく)の日常ストーリー。
8 136