《【書籍化&コミカライズ】小系令嬢は氷の王子に溺される》5

ウィリアム殿下のお部屋に到著すると一応扉を開けてはくれたが、顎で中を示され『そこは「どうぞ」とか何とか言いなさいよっ』とまで出掛かった言葉をグッと堪えて、「失禮致します」と足を踏みれた。

中はシンプルと言えば聞こえはいいが、最早シンプルを通り越して殺風景。

余計な裝飾品等はまるで無く、つい『お掃除が楽で使用人が喜びそう』等と思ってしまった。

リリアーナは小さな可らしいを飾るのが大好きで、掃除が大変だとモリーがいつもぼやいているのだ。

ウィリアム殿下はスタスタとソファーへと向かい、一人座ってしまわれた。

雑な扱いに苛立ちは募るけれども、正直小走りで疲れているのだ。

リリアーナは早く座ってゆっくりしたかったので、テーブルを挾んだ席へ「失禮します」と言って腰掛けた。

座れたのはいいけれど、これって案されて無くない?

決して楽しい等とは言えないこの雰囲気の中、使用人がお茶を淹れてくれ、テーブルには味しそうなお菓子も並べられた。

リリアーナは高級であろうお茶を頂き、を潤すと

「一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

想の『あ』の字も無いこの王子から、しでも早く解放される為に直球で聞く事に決めた。

返事は無かったが、こちらを確りと見據えた王子の様子に許可されたものとして続ける。

「何故私を選ばれたのでしょう。ウィリアム様のお言葉は『私がいい』では無く『コレでいい』でした。つまり私で無くても良かったという事ではないのですか?」

「まあ、そうなるな」

悪びれずに肯定する王子様。

よし!このままの流れで他の令嬢へパスしてしまえ!

「では、私にはに余るお話ですので、他の方にして頂きますよう、お願い致します」

これでこの話は無かった事に……

「無理だな」

ならなかったぁぁぁぁああ(泣)

何故だ!ここで素直に認めて次に行ってくれなきゃ私が困るっ‼︎

「何故ですの?私で無くてもよろしいのですよね?」

「お前は令嬢達の(あの)中で一番ギラついていなかったからな。どうやら私よりも料理の方に興味があった様だが」

そう言って、思い出したのかウィリアム殿下はククッと小さく笑ったのだ。

笑わない王子様が笑った事よりも、食べる姿を見られていた事がショックだったのと、やはり地味目にした事で逆に目立ってしまっていた事にうな垂れるしかないリリアーナだった。

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