《【書籍化&コミカライズ】小系令嬢は氷の王子に溺される》3

爽やかな休日の朝。いつもの様に、モリーがリリアーナを起こしにやって來る。

「お嬢様、おはようございます」

「う〜ん、あと一時間……」

「何仰ってるんですか、さっさと起きますよ」

「嫌よ!お休みの日くらいゆっくり休みますわ。

毎日の王太子妃教育で疲れてるんですのよ」

言うが早いか、布団に包(くる)まる姿はまるで甲羅の中に引っ込んだ亀の様である。

そんな姿に呆れつつ、モリーはいつもの様に容赦なく布団を引っぺがす。

「今日はエイデン様とお出掛けになる予定ですから、早くお支度始めちゃいますよ〜」

更にベッドの上からリリアーナを追い出し、シーツの換を始めた。

リリアーナは頰を膨らませながら両腕をの前で組み、一杯不機嫌アピールをする。

「ちょっとモリー、あなた私の扱い雑過ぎませんこと?

それにエイデンと出掛けるなんて聞いてませんわ!」

「今言いました」

悪びれる事なく言うモリーに言い返す気力もなくなり、渋々顔を洗いに洗面所へと向かいながら、獨り言つ。

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「せっかくの休みが……」

◇◇◇

モリー曰く『貴族令嬢のお忍びデート風』に可くコーディネートされたリリアーナ(殘念ながら相手はエイデンだが)。

因みにモリーはコーディネートには必ず『◯◯風』と付けて楽しんでいる。

モリーは支度を終えたリリアーナを馬車へと押し込んだ。

ニコニコと機嫌の良いエイデンと、頰を膨らませて不機嫌アピールをしているリリアーナ。

今日は寢溜めしようと思っていたのを、勝手に拉致される様に外に連れ出されたのだから、不機嫌なのも仕方が無いのであろう。

そして行き先を告げずにいるエイデンに、リリアーナが本日3度目の質問をした。

「で、何処に向かってますの?」

「だから、それは著いてからのお楽しみって……ああ、著いたかな?」

タイミング良く馬車が速度を落とし始め、何処かで停まった。

エイデンは楽しそうな顔で先に馬車を降り、次いで降りたリリアーナは辺りをキョロキョロと見回した。

どうやら貴族用達エリアではなく、庶民向けの商業エリアの様である。

「先日オープンしたばかりの雑貨屋だよ。

姉様、こういうの好きだろ?」

エイデンの言葉にパッと表を明るくし、先程までむくれていた事などすっかり忘れて即座に「好き、大好き‼︎」と言いながら、外だという事も忘れて抱き著く。

エイデンは満足そうな顔でリリアーナの頭をでる。

「じゃ、早速中にろうか」

エイデンの言葉にコクコクと頷き、お店の扉を開けてって行く。

そこはリリアーナにとっての楽園(パラダイス)であった。

細々(こまごま)した可らしい雑貨が大好きなリリアーナ。

あまりにも量が多過ぎて、モリーから暫くの間雑貨屋通い止令が出されていたのだ。

久し振りの雑貨店に興しきりのリリアーナ。

エイデンの存在をすっかり忘れ、夢中で可い小達を堪能する。まさに至福の時である。

暫くして、両手いっぱいの小達を購し、満面の笑みを浮かべるリリアーナがいた。

実は今日のこのお出掛け、王太子妃教育を頑張るリリアーナへの気分転換を兼ねたご褒にと、イアンとエイデンとモリーで計畫したものであった。

何だかんだと皆リリアーナに甘いのである。

雑貨店でのお買いが終われば一度馬車に(大量の)荷を置いて、カフェでランチを楽しむ。

同じ學園に通うリリアーナとエイデンだが、リリアーナは現在高等部、エイデンは中等部であり、校舎が違うのでなかなか學園で會う事はない。

話はお互いの學園で起きた事や王城での王太子妃教育への愚癡や王城での夕食の素晴らしさ等、盡きることが無い。

エイデンは學園でリリアーナが心配していたイジメ等にあっていない様で安心した様である。

いつの時代も妬みや嫉みは盡きないものである。

何事も無く學園生活を謳歌出來るのならば、それに越した事はない。

頼んでいたランチメニューを味しく頂き、デザートも確りと數種類頂いてから、カフェを後にした。

しゆっくりし過ぎたのか、もう日は傾き掛けている。

予想外に有意義な1日を過ごす事が出來たリリアーナ。

馬車に乗り屋敷へと戻り、夕食後のお茶を頂いている所で謝の言葉と共に今日のお土産をイアン兄様とエイデンとモリーに渡す。

皆喜んでくれたが、お父様とお母様の言葉に背中に嫌な汗が伝う。

「リリアーナ?父様と母様の分は?」

……すっかり忘れておりました。お土産話じゃダメですか?(泣)

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