《【書籍化&コミカライズ】小系令嬢は氷の王子に溺される》6
ウィリアム&ダニエル目線です
「し離れ過ぎではないか?」
ウィリアムが若干不機嫌な様子で言ってくるが、
「いいえ、気のせいでございましょう」
と和かな笑顔で一刀両斷してみせたリリアーナ。
王太子妃教育の後の夕食を國王様一家と一緒に頂く様になってひと月程経った頃。
隣同士に座っているウィリアムとリリアーナの席は、數日前から明らかに距離が開いていた。
リリアーナに貰ったという髪紐は、あの日より毎日ウィリアムの髪に巻かれ、國王も王妃もとても喜んでいたのだが。
數日前までと違って、リリアーナの顔には不自然なり付けた様な笑顔が浮かんでおり、ウィリアムとの會話も先程の様に素っ気ない會話ばかりになっていた。
◇◇◇
「警戒されてるな」
目の前に立つダニエルは、書類の束を機の上にポンと投げる様に置きながらそう言った。
「警戒?何故警戒する必要がある」
ウィリアムは若干眉間に皺を寄せながら、納得がいかないとばかりに吐き捨てる。
「いやいやいや、いくら何でも急に攻めすぎだろ?
しずつ距離をめてくなら分かるけどさ。
膝の上って何だよ。
この前の餌付けも俺に言わせりゃギリアウトだからな?
初めて言葉をわしたその日に餌付けって……」
本當に何やってるんだよ、この王子は。
階段を1段ずつ上がるんでなくて、一気に5段くらいすっ飛ばして上がってる様なものじゃねぇか。
殘念なものを見る様な目で見てやれば、ウィリアムは悔しそうな顔をしながら舌打ちする。
「チッ。ダニマッチョも笑っていただろうが」
「そりゃ、あんな面白いもの目の前で見せられたらさあ。
……って、ダニマッチョって何だよ!」
「リリアーナがお前に付けたあだ名だそうだ」
「はぁ?変なあだ名付けさせるなよ」
ダニエルは目の前の、明らかにイライラが隠せていないウィリアムを呆れた様に眺める。
見た目だけなら超のつく一級品なのに、やっている事は殘念極まりない。
これだから初心者はと、ダニエルは心の中で盛大な溜息をついた。
本當に手の掛かるヤツ。
「で、王子様はお姫様と仲直りしたいと仰るんで?」
「別に喧嘩などしていない」
「けど警戒はされてるよね」
「……」
黙り込む初心者。
全く、氷の王子が聞いて呆れる。
「ま、暫くは二人きりになるのは避けて、味しいお菓子で機嫌なおしてもらうしかないんじゃないんですかね」
あの子ならばお菓子(えさ)で釣るのが一番手っ取り早いだろうと、目の前のちょっと殘念な王子様に優しい馴染としてアドバイスを送ってやる。
「うまくいったらダニマッチョのあだ名は使わない様に言っておけよ」
釘を刺すのも忘れない。
「ほら、解決したらさっさと仕事しろ」
「仕事はしている」
まだ納得いかないみたいな顔をしているが、こいつに付き合っていたら今日の分の仕事が終わらない。
確かに手はいているが、スピードが落ちてるんだよ!
口より手をかせ。
俺は殘業はしない主義なんだ。
お前が終わらなくても、さっさと帰るからな‼︎
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