《【書籍化&コミカライズ】小系令嬢は氷の王子に溺される》3

「もうしだけ、こうしていても良いか?」

ウィリアムが抱き締める腕をしだけ緩め、リリアーナの顔を覗き込む様にし、不安げな顔で聞いてくる。

もしかしたら斷られる事を覚悟しているのかもしれない。

嫌だと一言口にすれば、きっと今のウィリアムならば離してくれるだろう。

けれど、リリアーナは何故か嫌だとは言いたくなかった。

でも「いいです」と口にするのもとても恥ずかしく。

迷いながらも小さく頷く事で、了承の意を伝える事に。

近くにある彼の顔をチラリ見れば、とても嬉しそうな笑顔をうかべている。

そして大切なを扱う様にまた、ギュッと抱き締められるのだった。

初めて彼と會った時は、とても綺麗な顔立ちをした、とんでもなく失禮な王子様としか思わなかった。

當初は婚約を回避する為に必死になっていた自分。

笑わないと言われるこの王子様は、リリアーナの前では不思議とよく笑っている様に思う。

それが特別だと言われている様で、何とも擽(くすぐ)ったい気持ちにさせられるのだが、急に近くなった距離に戸い、つい警戒して距離を置いてはみたのだけれど。

彼がとても大切に扱ってくれる事にも気付いているし、とても甘やかされていると思う。

私以外のには相変わらず冷たく対応しているところを見て、ホッとしている私も大概だなと思うし。

『好き』とか『している』とか、そういう的な気持ちは正直まだよく分からない。

けれども、今の私はなくとも彼を嫌ったりしていない。

近くなった距離に恥ずかしいとは思っても、嫌だとは思わない。

それにあのお見合いパーティーで、彼が私以外の誰かを選ばなくて良かったと、今では心からそう思っている。

私の口からは絶対に言わないけれど。

だって、恥ずかしいじゃない?

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