《【書籍化&コミカライズ】小系令嬢は氷の王子に溺される》5

お腹がいっぱいになると、大概人は眠くなるものである。

リリアーナは先程まで眠ってしまっていたので、今は平気ではあるが。

「ダニーが探しに來るまで、膝を貸してくれ」

言うが早いか、ウィリアムはゴロンと橫になりリリアーナの膝に頭を乗せた。

「さっきまでウィリアム様に膝をお借りしておりましたから、今度は私の番ですね」

リリアーナは笑顔で言いつつ、ふと先程の臺詞が気になった。

「……あの、ダニエル様が探しに來ると言う事は、何かお仕事があるのではないのですか?

ここでゆっくりしていて大丈夫ですの?」

「いいんだ。急ぎの仕事は終えているし、あとは私でなくても大丈夫な案件だけだからな」

それ、ダニエル様に押し付ければいい案件と聞こえる気がしますが(苦笑)

「それよりも、いつまでウィリアムと呼ぶつもりだ?

私はそちらの方が気になるのだが?」

ウィリアムはちょっと悪そうな笑顔で、リリアーナのゆるいウェーブのかかった髪を弄りながら、答えを待っている。

先日、この目の前の王子様から『ウィル』と呼んでほしいと言われたのだ。

家族や仲の良い者は皆そう呼ぶからと。

その代わり、リリアーナの事は『リリ』と呼ぶと宣言されたのだが。

呼ばれるのは全然構わない。

けれども、様付け無しにいきなり『ウィル』と呼ぶのは何とも恥ずかしいのだ。

今までずっと『ウィリアム様』と呼んでいたのだから、そのままでもいいのではないかと言ってはみたものの、即卻下されてしまった。

腹が立つ事に、リリアーナが恥ずかしく思っている事を知っていながら、『ウィル』と呼ぶまでずっとニヤニヤと眺めているのだ。

リリアーナはプクッと頰を膨らませると、

「気が向いたら呼ぶかもしれませんわ」

プイと橫を向き、読み途中であった本を手に取ると、ページを開き読みだした。

ウィリアムはそれ以上揶揄(からか)う事を止め、ゆっくりと目を瞑る。

こんな穏やかな時間を過ごすのは、どれくらいぶりだろうか。

そんな事を思いながら、ウィリアムは眠りに落ちていった。

ウィリアムが眠ったのを確認し、リリアーナはお気にりのひざ掛けを彼にそっと掛けた。

起きる気配は全く無い。

驚く程に整った顔立ちの氷の王子様は、眠るとく見える。

しだけ眠った顔にイタズラしてみたくはなったのだが、余りにも気持ちよさそうに眠っているのでやめておいた。

そしてウィリアムが眠ってから小一時間程して、ダニエルがやって來たのだが。

「うわぁ、マジで睡してやがる。

コイツ、普段は人の気配に敏で直ぐに目を覚ますんだけどね」

と、何故かとても嬉しそうに笑っていた。

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