《【書籍化&コミカライズ】小系令嬢は氷の王子に溺される》8

「リリアーナでなければ駄目なんだ」

この臺詞《セリフ》は凄い破壊力ですわね。

後ろから抱き締められて、耳元でこんな臺詞を言われて、落ちない方っておりますの?

しかも相手はあの、に冷たいとされる『氷の王子様』ですもの。

こんな特別扱いされて、嬉しくない訳がない。

けれども素直にそれを認めるのも、簡単に許してしまうのもやっぱり悔しいので、直ぐには信用なんてしてあげないんだから。

「……本當に私だけなんですの?他の方にも言っていたりしませんの?」

「リリアーナだけだ。他には絶対に言ったりしない」

「私の目を見て、同じ事が言えますか?」

「言える」

ウィリアムは抱き締めている腕を解き、ゆっくりとリリアーナの前に立つ。

そして徐《おもむろ》に跪《ひざまず》き、リリアーナの手を取り

「私にはリリアーナだけだ。リリアーナでなければ駄目なんだ。

これからもずっと、私の隣で笑っていてしい」

リリアーナの手の甲にキスを落とした。

ちょっと拗ねて々ごねていただけだったのに、これはまさかのプロポーズ⁈

正式な婚約はわしていたけれど、彼の口からハッキリとした言葉をもらったのは、初めての事だった。

「ねえ、リリアーナ?君は私を選んではくれないのかい?」

驚きすぎて返事を返していないリリアーナに、今度はウィリアムが拗ねた様に聞いてくる。

答えなど決まってはいるが、つい先程拗ねて直ぐには認めるものかと思っていたリリアーナの目は、泳ぎまくっている。

「リリ?」

ああ、もう。

認めればいいのでしょう?

直ぐに認めてしまうのはちょっと悔しいですけれど、きっと目の前の彼は喜んでくれるでしょうから。

滅多に笑わない彼が私の言葉で喜んで笑ってくれるのなら、いくらでも返事しますわ。

「あなたの隣は私だけの特別席ですわ。他の方が座るのは認めませんが、よろしくて?」

若干素直じゃないかもしれませんけれど、これが私ですもの。

ウィリアムは嬉しそうに微笑むと

「構わない」

と言って、リリアーナを抱き締めた。

リリアーナはそっと、ウィリアムの背中に手を回すのだった。

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