それからもちょくちょく王宮であの(・・)ちんまいを見かけるようにようになった。

本格的に王太子妃教育が始まったのだろう。

意外にも講師達の評価は中々に良いらしい。

うっかり口をらせて『王太子妃になどなってしまったら、々面倒……』などと言ってハッと口をつぐむ姿に、あまり頭は良くなさそうだなと思ったものだが、本當に意外である。

とはいえ、王族との婚約を簡単になかったことになど出來るはずもなし。

いい加減諦めたから渋々ながらも王太子妃教育をけているのだろうと思ったのだがーー。

◇◇◇

「あら、ホセ殿下。ごきげんよう」

王宮の廊下でバッタリと出會してしまった。

「今日も王太子妃教育か」

「ええ、これからダンスのレッスンがありますの」

「ふぅん。てことは、婚約解消は諦めたのか」

鼻でフッと笑ってやれば、ちんまいは淑の皮をぎ捨てて、ムッとした表を浮かべて噛み付いてきた。

「まだ諦めてはおりませんわ。これからですのよ！」

……呆れた。コイツ、まだ諦めてなかったのか。

「へぇ。婚約解消(それ)に向けて何か対策でも立てているワケ？」

「うぐっ。そ、それは……ですわ！」

そう言いながら、今度は悔しそうな表を浮かべる。

何ていうか、本當にもう、いい加減諦めればいいのに。

呆れを通り越して、何だか面白くさえ思えてくる。

「ま、頑張って？　お・義・姉・さ・ま？」

肩にポンと手を置いてわざと耳元でそう言えば、耳を手で押えて口をパクパクと開閉している。

そんな姿を橫目に見ながら自然と上がる口角をそのままに、後ろ手に手を振りながらその場を後にした。

普通の令嬢達と違って中々に面白いやつではあるけどな。

だがしかし。

アイツが俺の義姉(予定)だと、まだ認めたわけじゃないからな。

數ある作品の中からこの作品をお読み頂き、ありがとうございます(˙ᗜ˙)

また、評価や想、誤字字報告もありがとうございます。

一人一人にお返事出來ず、申し訳ありません。

この場をお借りして、皆様にお禮申し上げますm(_ _)m

私の作品で、大きな笑いはなくても、小さなクスッといった笑いに肩の力を抜いて楽しんで頂けたら幸いです。

翡翠