《お月様はいつも雨降り》第三従六

<登場人

靜寂秋津 (しじまあきつ)

就活中の大學生、謎の企業からの姿をした人型端末『シャン』を贈られる。

シャン

『月影乙第七発展汎用型』の人型端末

上野カエデ (うえのかえで)

アキツの小學校の同級生 シャンと同型の男タイプの『月影人形』と共に行している

東アジア共同統合軍艦隊の旗艦に異常を知らせてきたのは最初に領海に侵した原子力潛水艦であった。

「海中に障害知」

「猿(マカーキ)の設置した機雷ではないのか?」

「暖水渦で集中した浮遊のようだが、その量が尋常ではない、航路を十一時に変更」

「変更承認」

低気圧等の発達により海洋には様々な大きさの渦が生じることがある。しかし、現在の大型船舶に影響を與えることは考えられない事態であった。

「機関が……」

その通信を最後に潛水艦からの通信が途絶えた。しかし、司令部は自衛隊によるジャミングによるものと判斷し、空母から艦載機を出させつつも艦隊は尚も排他的経済水域に侵攻を進めた。

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「霧が……」

それまで正常に作していた艦載機のパイロットの無線が、潛水艦の途絶えた地點とほぼ同じ海域で連絡を絶った。

艦隊は自衛隊の新型防衛システムを警戒し、進路を北寄りに変更し、排他的経済水域の縁を沿うような形をとった。

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統合軍艦隊のその不自然なきは本土防衛を擔う自衛隊の作戦指令室にも伝えられた。

「このき、奴らは何を警戒しているのか、津軽海峽沖が狙いではないのか」

「海上の天候は曇り、波高は四メートル、海霧の発生を確認していますが、艦隊の作戦に支障が出るような狀態ではありません、しかし……」

「どうした」

「いえ、衛星からの分析済み可視畫像重ねます」

その異様な畫像を見た分析は息を飲んだ。

「海にが出來ている……データ抜けか」

「機はすべて正常です、そこで我々の機では可視できない何かが発生していると考えられます」

上司の分析は、その報告をけてすぐにある國報との関連を結び付けた。

「あのができたのか、海上にも……偵察機からの続報は?」

「通信が安定していません、呼び掛けは継続して行っています」

「そんな都合よくいく訳が……」

分析は出た報のみを冷靜に判斷し、司令部に報告することが重要な使命である。推測や憶測による判斷は。時に自軍の全滅を招く前例が歴史上に散見されている。

(あの企業がをコントロールする力を得ていたとしたら?)

そのような考えが分析の脳裏をかすめたが、聲にすることはできなかった。

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「ねぇ、これって正しい行いなのかな」

本社正門前の路上に細切れになった人が散している。周囲には返りを浴び全を真っ赤にしたマネキン人形が次の標的を見付けようと徘徊している。

それぞれの手には警杖が握られ、中には折れたままのを手にしている人形もいた。

カエデはし離れた建の影に立ち様子をうかがっている。

「カエデお嬢様がそうお考えになるのなら、そうなのだとわたくしは判斷いたします」

「あなたは私が命令している、でも、あいつらは何に命令されていているの」

いているに反応しているだけと考えられます」

車両の中に逃げ込んでいた男が、隠れている恐怖に耐えきれず走って車外に飛び出た。それを見た人形たちがそれまでの緩慢なきから急に猛獣のようなきでその男を追い始めた。

「哺類食目がげっ歯目のを弄ぶようなものです、彼らを可い存在としてお嬢様が認識することができれば、ペットの代用品にもなると考えられます」

「気持ち悪い」

「そう判斷すればそのように見えるモノです……おや、わたくしのコピーが近付いてきている反応がありました」

「サユミがいるの?」

「いえ、今までほとんど接がなかった同類のナンバーです、ほらあそこに立っているでしょう、あの青年の肩にいます」

アキツが無人となった道路の分離帯に立っている。

「ボウ!あいつ戻ってきたんだ!」

「お嬢様、行ってはいけません!」

カエデが走り出ようとするのを執事型の人形が止めた。それまでカエデより落ち著いていた様子を見せていた人形がソワソワとし出した。

「どうして!」

「わたくしはあの者たちから何か不快なものをじます」

「だって、あなたとナンバーが同類だって言っていたじゃない」

「同じなようで何かが異なっています」

「すごい銃を裝備しているとか?」

「いえ、違います、『ニューナンブ』や『サクラ』のような警用拳銃などはサーチできません」

「なら、何よ」

「何も持っていません!」

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「上様、準備はできたか?」

アキツの頭に両手を添えながらシャンは周囲の警戒を怠らない。

「ああ、うん、まだ慣れないけれど、だいたいのイメージは摑めている、前の大きいやつとは全然、じが違っている」

長率の高さは見事なものじゃ、さすが上様」

「最近はやけにほめてくれるようになったね」

「正直に言っているだけじゃ、上様は褒めてびるタイプだと結果にもあらわれている」

「それにのせられているいるだけってこと?」

「それにのるのも貴い才能じゃ、さぁ、準備完了じゃ、あやつらにアクセスする」

(ボウくん……これが正しい世界の在り方だと思う?)

イメージの中でルナの問い掛けてきた言葉をアキツは忘れていない。

「僕は難しいことは分からないけれど、人がいっぱい死んでみんな悲しんでいる世界は正しくないよ」

そのつぶやきを合図に、アキツの神はシャンを介して人を殺め続けるマネキン人形の心にアクセスした。

※拙作をいつもご読してくださる方に心より謝申し上げます。

この作品にあともうしだけおつきあいください。

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