《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月19日:壊機現象
數分前。
(お、ラッキ~。とはいえこれ牽制かな? だったら両手飛ばしてくればいいのに~?)
戦っている相手……ルストなるプレイヤーが複數の戦機を切り替えて戦っていることは、他のGUN!GUN!傭兵団からの通信で分かっていたことだ。故に偶然とはいえ相有利を取ったエクレアは終始攻勢で仕掛けつつも、戦況を一気に覆されかねない戦機の換裝という一瞬を警戒し続けていた。
(本人がちっちぇ~んだよなぁ……ヘッショ狙っても防か回避されるし……ちびアバターってこういう時有利だったのか~)
小柄、というキャラクターメイク上の個が有利に働くこともあるが、當然不利に働く場面もある。ことこの戦いにおいては、頭部が小さいが故に防面積の小さく済むことや、そもそもの小さい的(マト)が高速でき回るので狙いづらい、という要因がエクレアにとっては不利に働いていた。
全を見れば終始有利ではあったものの、エクレアとて楽な戦いをしていたわけではない。戦機越しのリコイルコントロールに実は苦心していることに加えて相手の本である生が小柄かつ自と同じ瞬発力に優れ、なにより自分以上に戦機に通している。
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一瞬たりとも油斷ならない相手ではあるが……それでも、距離の有利を維持し続ければいずれは詰められる(・・・・・)と考えていた。
……
…………
そして今、互いが鎖で繋がれているという狀況がエクレアを段々と不利へと追い詰めていた(・・・・・・・)。
『……!』
『うおぉっ!?』
ぐい、とエクレアの足が強い力で引っ張られる。無論、不意打ちで勢を崩されては撃どころの話ではない。そして真っ直ぐ張り詰めた一本の鎖があり片方が引っ張られたのであれば、當然もう片方は引っ張った側だ。不利を被るのは”られた”側だけである。
『……直徑10メートル、ミドルレンジが最長程』
『厄介ぃ〜っ!?』
【施錠縛鎖】はあくまでも対モンスターを想定したものではあるが、當然対人ひいては対戦機に対しても有利に働く。
特に生のフィジカルスペックを機巧によって補強可能な戦機で運用すれば、小柄なとてワイバーンと渡り合えるのだ。
鎖によって互いに繋がったことで、距離の概念は鎖の支配下に置かれた。即座に鎖を外すことができない以上、レンジによる有利不利に”綱引き”の要素が加算されたのだ。さしものエクレアも撃の瞬間に理的に足を引っ張られては狙いが狂う……まして、非力なを剛力へと変える戦機の牽引ともなれば下手をすれば転倒の拍子に後頭部を強打して行不能ということにもなりかねない。
対するルストはといえば、足を引っ張られるエクレアとは異なり引っ張る側だ。さらに言えば踏ん張りの幹となる足を縛り付けられたエクレアとは異なり、その鎖は腕に繋がっている。そして何より……殲顎緋砕(センガクヒサイ)はインファイターだ、引っ張られる……すなわち距離がむことは歓迎すべきことだ。
『………!』
殲顎緋砕(センガクヒサイ)と電撃菓子3號@GGMCとの距離は10メートル、だがそれが上限。
あとは互いを繋ぐ鎖を引っ張り……どちらが先に相手を敗北へと引きずり込めるか。
鎖が張り詰められる。引っ張られたのは………殲顎緋砕(センガクヒサイ)の方だった。
『腕よか足のほうがパワーがあるんだぜ~!』
腕を引っ張られたことで僅かに勢を崩したルスト、そしてその僅かな瞬間を逃さずエクレアは早撃ちを放った。
発砲された弾丸は手の力量をそのまま映し取り、必殺の直進を殲顎緋砕(センガクヒサイ)の頭部へと至らせた。
『〜〜〜っ!!』
ヘッドショット。頭蓋を砕くに至らずとも脳震盪(きぜつ)は避けられまい……引き金を引いた瞬間に弾丸が必ずそこに當たると、そう確信していたエクレアは……
『……なめるなよ』
エクレアの腳を封じるために自らが繋げていた鎖という縛りに、さなざら蜘蛛の糸を登るかのように縋りついて己自を前方へ(・・・)引き上げる事で弾丸を回避した殲顎緋砕(センガクヒサイ)にまず驚き。
『……チェーンデスマッチなら、メタにもならないくらい対策(ぶちのめ)してやった』
前のめりに倒れる寸前、という姿勢の中で腳部ブースターを全力噴し、そのまま高速で鎖を手繰り寄せながら"直上(しょうめん)"に突っ込んできた殲顎緋砕(センガクヒサイ)にはさしものエクレアとて驚愕できが止まった。
『おごっ……!?』
『……勝機』
互いの距離が限りなくゼロに近づいたことで撓み垂れた鎖、その先端付近を摑むことで互いの距離の"上限"を1メートルまで詰めたルストはそのままの勢いで未だ鉄拳たる右で電撃菓子@GGMCへと毆りかかる。
しかし、左腕を盾代わりに毆打を防した電撃菓子@GGMCは右手に握る銃を撃つ。戦機の裝甲であれば食い破ることが可能な威力の弾丸、距離を詰められたといえど言い換えれば外(はず)しようのない至近距離ということ。
『ナイフキルの距離だぜ〜!』
『……っ!』
狙いは顔面。額であろうと鼻であろうと當たれば即死は免れず、何より回避するには近すぎる。故にルストが選んだのは"當たってもギリギリ死なない部位"に當てて被害を最小限に抑えることだった。
飛沫の如きダメージエフェクトがルストの頬から噴き出す。頭を覆うヘルムを砕き、頬を抉り、しかし弾丸はトドメを刺すに至らない。
『……ふがふが』
『なんて!?』
エクレアの問いに返ってきたのはアッパーカットだった。
別に破壊屬がついてるわけではないので頬にダメージ判定はあるけど本當に吹っ飛んだわけではなく、つまりすごい流暢に「ふごふご」って喋っただけなのでエクレアは「なんて!?」となった
アッパーされた
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