《【書籍化・コミカライズ】さないといわれましても~元魔王の伯爵令嬢は生真面目軍人に餌付けをされて幸せになる》17 そとがわはさめてもなかはあっつあっつでなかなかさめないのですよってたばさがいいました

おっきなホタテふたつを渡したら、タバサは五秒くらい固まった後にすごく喜んでくれたのです。やりました。私やりました。でも頭からずぶぬれだったので、それはちょっと旦那様と一緒に怒られました。

旦那様は怒られながらも直々にお風呂の準備をしてくれたのですが、水魔法も熱魔法もなんてお上手なのでしょう。さすがです。旦那様の大きな手で頭を洗ってもらうのは、とても気持ちがよいものでした。つま先までぽっぽと溫まったから、お晝寢もぐっすりできたのです。

お晝寢から起きましたらタバサが、いつも通りのおの下だけきゅっと紐で絞られた楽ちんなドレスを著せてくれました。すべすべでらかくって、裾は長いけど足に纏わりつかないからちゃんと走れるドレスです。お祝いの席なのにコルセットがいるドレスじゃなくていいのですかと聞いたら、奧様のためだけの楽しいお祝いだからいいのですよって。それは走っても跳んでもいいということ!

別荘のお庭は義父上たちが使う時はガーデンパーティをよく行うらしく、花壇よりも芝生の部分が広くとられた庭園です。今夜はそこで私の誕生祝いをするぞって、旦那様がエスコートしてくださいました。庭に面した溫室(コンサバトリー)に足を踏みれた途端、晝とは姿を変えた庭が目にります。何種類ものガラスを使ったランタンが庭のあちこちに配置され、夜の庭園はとりどりに春先のまだ若い葉を浮かび上がらせて――なんてこと!

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「旦那様!お庭が廚房になってます!」

「アビー、挨拶が先だ」

「はい!」

溫室(コンサバトリー)を抜けて庭園につながるテラスの段差を二段飛ばしにするところでした。いけません。テーブルクロスのかかった長いテーブルがいくつもあって、タバサもロドニーも護衛たちも、私たちを囲うように待ち構えていました。ああっ、並んだテーブルの間には即席のかまどがあります!あれは市場でも見ました!屋臺のやつ!旦那様はご挨拶をしています。テーブルにおっきな魚がのりました!どうしますかそれ!

「アビー、挨拶を」

「はい!おたんじょうびありがとうございます!」

お隣にいる旦那様からごふっと音がしましたが、皆さん笑顔でたくさんの拍手をくれました。どうしましょう。どこから先に行けば。

「……っ好きに見て回っていいぞ――あっこら」

奧で笑うように旦那様がおっしゃいましたので、テラスの段差を二段飛ばしました。だいじょうぶです!靴も踵が低いのですから!

長テーブルはいくつもあって、ご馳走が並んでいるのと料理人が調理臺にしているのがあります。料理人はここに滯在する間だけ街から呼んだ人たちです。ちょっと私も忙しかったので、ここの廚房には二回しか行ってません。二回目に行った時にはパンの耳をかりかりに揚げたのを一本もらいました。

タバサやロドニーはもちろん護衛や者、従僕もそれぞれのテーブルの前でにこにこしてます。

「奧様、ほら、こっちは溶けたチーズがたっぷりですよ」

「えっ、あっ」

「奧様、今日の船で獲った魚もあります」

「私が捕まえたお魚!」

「奧様、こちらはいただいたホタテですよ」

「ホタテ開いてる!貝開きましたか!」

小さなかまどで料理人が半円の大きなチーズを串にさして火で焙ってます。焙られた面がらかく波打っていき、落ちます!それ落ちます!あっお魚の頭が切り落とされました!チーズ、パンでけ止めた!ホタテはぱかっと開いた貝の上でつやつやして、あっそのまま網の上におきますか!

聲をかけられた方に向かおうと足を一歩踏み出すと、また違うところから聲がかかって味しそうな料理が次々と!どこにもいけません!

「旦那様!私忙しいです!」

「ぶはっ」

しゃがみこんでしまった旦那様ですけれど、すぐに立ち上がり「ゆっくりでいいからな」と手をとってくださいました。

「迷うなら右から順番に「旦那様あれなんですか!」お、おう」

見たことないのがあります。黒い鉄板の上にだぁっと白っぽいクリーム?どろっとしてます。小麥溶かしたやつ?を流してます。大きい四角のパンを焼くのでしょうか。旦那様をエスコートして近寄ると、鉄板の上のクリームは何か々刻んだものが混ぜ込まれているのがわかりました。料理人が長い串を取り出して、くつくつぷつぷつと気泡が浮き立ってきたクリームをすぅっとなぞっていくつもの小さな四角に分けていきます。その小さな四角の上にぽんぽんって白に赤い皮のついた、あ!吸盤あるのがあります!これはタコ!あのタコこんなところに!

私はぱちっと目を瞬きました。さっきは小さい四角だったのです。でもくるくるって丸くなりました。丸くなった!!まん丸!いつの間に!

「旦那様!まん丸!くるくるって!」

思えばケバブのおっきなおもくるくるしてました。くるくるはすごい。

「……ここはくるくるのまち……」

隣で旦那様がまたごふってなりましたし、真ん前の料理人も一瞬くるくるがれました。お城の人じゃありませんからね。仕方ないです。でもちゃんとくるくるは続きます。

鉄板の上のまん丸に黒っぽいソースがぺたーっとされて、ばっさーと青緑のが振りかけられます。小皿に三つ出來上がったまん丸が載せられて、白っぽいのは多分マヨネーズで、細くしゃしゃっと飾りがはいります。そしてその上にまた飾られたのが、……?旦那様が小皿をけ取って、熱いからなって目の前に差し出されます。

「旦那様、これは新鮮……?」

「……っいや、乾燥させた魚のを削ったものだな。――確か。そうだろう?」

旦那様の問いかけにちょっと張してるみたいに震えた聲で料理人はそうですと答えました。ふわふわゆらゆらと無秩序に踴るのは、薄く削られた木みたいです。多分。魔王が木をなぎ倒しちゃったときにはこんなに薄くなりませんでしたから多分。旦那様はまん丸を半分の半分に割って、……あっちょっととろみがあります!ふぅふぅと息を吹きかけてから食べさせてくれまし――熱い!熱い!

「わ!すまん!熱かったか!おいっ水!水くれ!」

びっくりしてちょっと跳んじゃいましたけど、次の一口はふわっととろっとして中のタコはぷりっとして!味しかった!

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