《お月様はいつも雨降り》第四従一目
「みんな助けに來てくれるのかな」
「うん、必ず來るよ、今、他の所に手伝いに行っているんだよ」
「だって、もう何時間も経っているのに」
「多分、他でも私たちのように困っている人がいっぱいいるんだよ」
ずっと不安で泣いていたジュンやワカナをルナはみんなのお姉さんのようになぐさめている。
「これ以上に前へ進むと危ない、が途切れて何も見えない」
僕たちはイツキの言うまま、シャトルの周りに転がっている荷やペットボトルを集めていた。
この荷の持ち主だった子たちはどこにもいなかった。
「おっ、ラッキー!開いていないポッキーがっていた」
レンが落ちていたリュックの中から、お菓子の箱を取り出していた。
「助かったら、持ち主の子に返さなくちゃ」
「返す必要なんかないよ、ヒロトだって見ただろ、みんな深いに落ちちゃったんだから助かっているわけないよ」
レンはそう言いながら、自分のポケットに後から見付けた飴を押し込んでいる。
Advertisement
「レン、獨り占めはだめだよ、みんなと分けないと、イツキが言っていただろ」
「ボウ、なに真面目ぶっているんだよ、危険な目にあいながら見付けているんだから、そのくらいは必要だろ、う、うわ、誰だ、やめろ、なにやってるんだよ」
レンの後ろにいたマサハルがレンのポケットに手を突っ込んでいた。
暴れるレンを抱えながらマサハルは手の中にいっぱいった飴やガムを僕の持っているポリ袋の方に手をばしてれた。
「畜生!」
「俺と勝負するか、ケガをしても保健の先生はいないぞ」
仁王立ちのマサハルにレンは悪態をついてシャトルの方に戻っていった。
「ありがとう、マサハル」
「別に」
マサハルはまた、地面に這いつくばって他にも落ちているがないかを確かめる作業を続けた。
「ボウ」
「なに?」
「俺たち、本當に助かるのかな」
マサハルも不安なんだと思った。
「だって、あの中で助かったんだから……さ」
僕は理由にもならないことを言った。
「イツキもルナもすげぇよな、俺だっていやなのに、文句も言わないで、みんなに聲を掛けているんだから」
「そうだね、本當にすごいと思うよ」
シャトルに戻ると、レンは不貞腐れて後ろのシートで橫になっている。
「何があったの?レンったら何も言わないですぐに寢ちゃったよ」
カエデが僕たちに聞いてきた。
「何でもねぇよ」
マサハルはそう言って、自分が集めたお菓子や飲みがった荷を前の座席の方にいるイツキの方に持っていった。
「うわあ、ずいぶん見付けられたね、これで七十二時間は絶対に大丈夫だよ」
「七十二時間?」
僕は首を傾げた。
「救助されるまでの時間だよ、街の近くだったらどんな時でもその時間があれば救助されるって本で読んだことがある」
マモルとユキオはシャトルのコントロールパネルなようなところを確かめながら、何かメモをしている。
「みんな、一回、ライトを消すよ」
「えぇっ!」
子から一斉に驚きと反対の聲が上がった。
「やだよ、真っ暗なところなんて」
「違うよ、ほら、バッテリーだって限りがあるだろ、なくなったら、ずっと真っ暗だ、し、ライトの數を減らして長持ちさせるんだよ」
マモルがスイッチにれると後ろの方の座席のライトが消えた。
「やっぱり、ここが後ろのところ、このボタンを押しながらこいつも押すと消えるようになっているんだ、それなら次が真ん中だな、よし、いくよ!」
「ま、待って」
レンが聲を上げて止め、起き上がってシャトルの外に飛び出していった。
「レン!」
僕は心配になってすぐにレンの後を追ってシャトルから降りた。
「みんな來いよ!上、上を見て!」
今までホールにつながる通路の天井だと思っていた僕たちの頭上に信じられない景が広がっていた。
それは満天の星空だった。
「ボウ、俺たちは閉じ込められていたんじゃない、建の外にいるんだ!」
後から降りてきたみんなもその星空を見て何も言えなくなっていた。僕はその星空に変な違和をもった。
それにはっきりと気付いたのはイツキだった。
「こんな星空は日本にはないよ、いつも見えている星座がないし、アンドロメダ銀河だって、ほら、あんなに大きくは見えないし、渦巻銀河がこんな近くの距離で四つも五つも見えることはないよ」
「あの幻を見せる裝置が急にき出したんじゃないかな」
イツキの後ろでヒロトが言った。
イツキもその意見をすぐに違うとは言わなかった。
星空に目が慣れてきた僕はシャトルの前後に合ったトンネルが消えていることに気付いた。その代わりに芝生のように短い草が生えた草原が広がっている。
その先に一見、お城の塔のような建が見える。
建のじと窓の大きさからちょうど僕の家から學校くらいの距離にじた。
「イツキ、教えて……教えてよ……わたしたち、本當はどこにいるの……どこにいるのよ、あんな建なんて『トキノマチ』にあった?」
いつも気丈なカエデの聲が震えていた。
「分からない……でも、僕たちはみんなまだ生きているということは確かさ」
イツキもそれ以上のことは言わない。
「ねぇ、イツキ、あの建の中に外と通信できるがのこされてるんじゃないかな、近くに行かなくちゃ分からないよ、地面もできているようだし、この明るさだったらよく見えるし、わたしちょっと行ってこようと思う」
ルナが言った。
「あそこ以上に遠くにはいかない、向こうからだってシャトルの明かりが見えると思うし、見えなくなった所からそんなに先には進まないからさ」
「ルナ、平気なの?」
サユミが心配そうに尋ねた。
「平気、平気、イツキも言ったでしょ、わたしもサユミも元気じゃない、助かる可能があるならまずはやってみよう!」
ルナがおどけて言うのを見て、イツキも了承した、多分、ルナがそう言わなければイツキが行くと言うに違いないと思った。
「イツキ……あの……僕も行こうと思うんだけど」
僕は勇気を出して手を挙げた。怖いといったら怖いかもしれないけれど、ルナに何かあるかもしれないのを黙って見てはいられなかった。
「やったぁー、やっぱりボウなら一緒に行ってくれると思った!」
「あの、俺も……」
マサハルが手を挙げようとしたのをカエデが止めた。
「あんた、二人の邪魔をする気なの」
みんなそのやり取りを聞いて笑った。というか、どんなに小さな笑いでもしかったのが正直な気持ちだと思う。
「ボウ、ルナを頼むよ、あいつ、ああ見えて時々無茶をするタイプなんだ、ちょっとでも危ないと思ったらすぐに連れてかえってきて」
「うん」
「お菓子と飲み、それにタオルと上著をれておいた、ほんとはロープとか手袋とかあったらいいんだけど」
ヒロトがすぐに二人分のリュックを持ってきてくれた。
「登山のようなことはしないよ、それに僕が育苦手なの知ってるだろ」
「よく知ってるけどさ、でも、準備だけはしておいた方がいい、事故とか絶対にいやだからな」
「うん約束する」
僕とルナは、みんなに見送られながら草原の向こうに見えている塔に向けて歩き出した。
「はい」
シャトルからし離れてからルナは並んでいる僕の方に右手を差し出した。
「え?」
「遠足なんだから手をつないだ方がいいじゃない」
「そ、それ、みんなも見てるし」
「ここからならみんなから見えないよ、一年生の時だったら、みんな普通に手をつないだでしょ」
僕は照れながら自分の左手を出した。
「握ってくれるんじゃないの?」
「は、はい!」
ルナは、本當はずっと怖かったんじゃないかなと思った。
なぜなら、ドキドキしながら僕が握った手は氷のようにとても冷たくなっていた。
「ルナ、ちょっとだけ走ってみようか」
「うん、でも競爭はしないよ」
「なんで?」
「わたしの方が、足が速いから手が離れちゃうでしょ」
「やってみなくちゃ分からないよ」
さっきイツキたちに注意されたことを守らずに、僕たちは星のが照らす草原の中を走った。
そんなことをしながら僕はこの時間がもっと続いてもいいんじゃないかと心のどこかでじていた。
妹は兄を愛する
初めて好きになった人は血の繋がった二歳年上のお兄ちゃんだった。私が世界で一番欲しいのはたった1つ。大好きなお兄ちゃんの「愛」。
8 186王子様は悪徳令嬢を溺愛する!
「スミマセンお嬢さん」 ぶつかって來た彼は、そう言って笑った。 女遊びにイジメは見て見ぬ振り、こんな調子じゃ結婚したらなおさらでしょう。 アリエノールは國王に宣言した。 「たとえ、これから良家からの縁談が無くなったとしても、私はこの馬鹿王子との縁談を破棄させて頂きとうございます」 謎の留學生マリク。彼は一體何者なの!?
8 1657 Start
「傲慢」「強欲」「嫉妬」「憤怒」「色欲」「暴食」「怠惰」7つの欲望が交錯する青春ラブストーリー。
8 175やり込んだ乙女ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】
【祝!2022/7/8にて第10回ネット小説大賞小説賞受賞 書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】 辺境伯の息子のリッドは、突然思い出した『前世の記憶』と『今世の記憶』が混じり合い困惑する。 だが、前世の記憶を思い出したおかげで彼の言動は、家族を救うために大きく変わっていく。 果たしてリッドは家族を守り、未來を変えることが出來るのか!? あらすじ 突然、前世の記憶を取り戻した辺境伯の息子『リッド・バルディア』は、この世界が『ときめくシンデレラ!』略して『ときレラ!』というやり込み系の乙女ゲームの世界に酷似している事に気が付いた。同時にリッドは、自分が悪役令嬢の一派に加わる脇役(悪役モブ)であること。また、所屬した一派の悪事に加擔した結果、悪役令嬢と一緒にどのルートでも粛清、追放、処刑、斷罪される運命であることを思い出す。 かくして、リッド・バルディアは前世の記憶を活かしつつ、やり込み要素満載だった乙女ゲームに酷似した世界を真っ當に生きる為……そして、大切な家族を守る為に奮闘(無雙)する日々が始まった。 追記 【2022年7月8日付 ネット小説大賞小説賞受賞 書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】 R15指定:殘虐なシーンなどはありませんが、念のために指定しております(2022/03/07) 小説投稿サイトのカクヨム、アルファポリスにも投稿しております。 カクヨム実績:2022/3 総合・異世界ファンタジー(日間・週間・月間※1)ランキング1位実績有 ※1=月間は異世界ファンタジー部門のみ1位実績有
8 66いじめられっ子の陰キャJKは自分を変えるため、ダンジョンに挑む〜底辺弱者は枕とレベルアップで強者へと駆け上がる〜
七瀬世羅、彼女の人生は後悔の連続。一度選択肢した人生は巻き戻す事の出來ない現実。 何度だってやり直したいと願い夢見た。その度に砕けそうになる思い。 この世界にはダンジョンと呼ばれるモノが存在し、全ての人間にレベルシステムとスキルシステムが適応される。 まだ謎が多いシステム達、世羅はとある日に〇〇を獲得する。 日頃の生活で培った耐性スキル以外に一つだけ、スキルが増えていた。 それをきっかけに、家の前にあるダンジョンに挑戦する。 ただの高校生だったのに、小さなきっかけでダンジョンに挑む。 そこで見た光景は、想像を超え、そして再び後悔する光景。 なんで來てしまったのか、どうしてこうなったのか、焦る思考の中考える。當然答えは無い。 足はすくみ、腰は抜け、動けないでいた。 恐怖の塊が近づいて來る。自分の彼女達と同じ経験をする──そう感じた時、颯爽と空を飛び恐怖の塊と戦おうとする勇敢な───枕が居た。 彼女の人生は【枕】から始まる。 いじめられっ子からの脫卻、毒親からの脫卻、貧乏からの脫卻。 この世界はレベルシステムにより簡単に強さの優劣が決まる。 分かりやすい世界だ。 あとは、運と実力と、最高の相棒(枕)が居れば十分だ。
8 111戀した魔法少女~生まれ変わった魔法少女が、15年ぶりに仲間と再會する~
「あの時死んだ魔法使い、佐倉町子は私だよ!」 二〇世紀も殘り僅かとなった時代。 大魔女から力を授かり、魔法使いになった五人の少年少女が居た。 最初こそテレビのヒーローのように、敵を倒して意気揚々としていたが、楽しいことばかりは続かない。 ある日、魔法少女の一人・町子は、不可解な行動をする仲間を追って戦闘になり、この世を去る。その魂が蘇った15年後の世界で、彼女は仲間だった魔法使い達に再會して-ー。 仲間との年齢差・約16歳の、記憶と戀が求める未來は? ※過去に新人賞用で書いていたものです。以前カクヨムにアップしていました。 完結済み作品なので、毎日更新していけたらと思っています。 よろしくお願いします。
8 57