《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》4-16:集まる仲間
迷宮から、仲間と一緒に戦士団の拠點へ戻る。著いた頃にはし日が傾いていた。
――ユミール達が攻めて來るまで、3週間。
そんな日の一部が過ぎてしまったことになるけど、こればかりは焦っても仕方がない。
掘に橋が渡されて、門が開く。馬車が中庭にると、もう5臺、すでに見慣れない馬車が止まっていた。
「……なんだろう」
長旅をするような『箱馬車』という種類。人がやってきたとしたら、かなりの大所帯ってことになる。
馬車から降りて、ミアさんとフェリクスさんも口々に言った。
「ふむ。戦士団がよく使う型の馬車ですが……」
「じゃ、援軍かい?」
確かに、王都には冒険者や騎士、それに兵士が集まってくるようになった。ユミールは、世界中の迷宮から魔を集めた以上、もう一人きりで暴れ回ったりしないだろう。
大勢の魔と、大勢の人間がぶつかる――決戦になる。
パウリーネさんは、ルゥがいるこの拠點を守れるように、兵士や騎士、それに冒険者を周りの平原に集めるようだった。そのうち、城壁の周りにテントが張られたりして、いつか見た『城外市』ができるかもしれない。
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金貨が震えてソラーナの聲がする。
『……この気配は』
ヘイムダルが問い返した。
『どうした、太神?』
ソラーナは、ちょっと面白そうに言う。
『そうか、ヘイムダルは知らぬのだな。ふふふ……きっと驚くぞ』
『なんだそれは? いやに得意げだが……おや――』
僕は箱馬車の様子を見に歩いた。
戦士団が言っていた『來客』って多分この馬車のことだと思うから。
近づいていくと、5臺ある馬車が、急にガタガタ!って揺れる。
僕らがぽかんとなった瞬間、口のドアがはじけ飛んだ。
「うお!」
ミアさんが驚いてのけぞる。
小柄な影が馬車から次々と飛び出した。それらは、ぴょんぴょん跳びながら僕らを囲う。
「ま、魔――?」
一帯は、小さな人影に取り囲まれた。全員顔を伏せていて、正はわからない。
彼らは一斉に立ち上がると、
「っ」
構えてしまう僕らに対して、みんな同時に膝をついた。
「「「お久しぶりです!」」」
僕らは直した。
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辺りを囲う40人ほどの影は、5、6歳くらいの長だ。
もし誰かが遠くから見たら、子供に取り囲まれているように見えるだろう。
でも、彼らの顔つきはほとんどが大人のそれ。顔に見える人も、子供っぽくない落ち著きがあった。
僕は目線を、彼らの背中に向ける。
ぴんと誇らしげに立っているのは、マントを押しのける羽だ。
羽は持っている人と持たない人がいて、割合は半分ずつくらいだろうか。
僕は聲をあげてしまった。
「こ、小人!?」
それは遙か北の鉱山街に隠れ住む、神話時代の存在。
黒小人(ドヴェルグ)と、羽を持つ白小人(アールヴ)だった。
小人達は応えるように頬を緩める。
薄い羽を持った小人が、僕の真正面で立ち上がり、もう一度深々と一禮した。
「その通りです。英雄殿」
その白小人(アールヴ)は僕を見上げて、ひっそりと微笑んだ。
年みたいな見た目だけど、きっと僕よりずっと年上だろう。
気品のある所作でに手を當てた。
「私はアールヴヘイム十鍛治の、バリと申します」
十鍛冶――それは、かつて救った小人の國(アールヴヘイム)で、特に優れた鍛冶師に與えられる稱號だ。
「小人王陛下の仰せで、あなた方に助力するためはせ參じました。英雄殿、どうか我々アールヴヘイムの小人も、あなたの戦いにお加えください」
大仰な言葉に、頬が熱い。
「炎骨スルトを倒しアールヴヘイムを救ったあなた方を、今度は我々が救いたい」
今度はが熱くなった。お禮を言わなくちゃ。
「ありがとうございます」
ミアさんが中庭に止まっている馬車を見やった。
「ずいぶん早い到著だね。冒険者でも、普通にくればアールヴヘイムから王都まで6日かかる」
「急がせていただきました」
白小人のバリさんが続ける中、ポケットからがれた。
輝きと一緒にソラーナが飛び出してくる。
不意に現れた神様に、集まった小人が一気に騒がしくなった。こうなると本當に子供みたいだ。
「神様!」
「神様!」
呼びかけられて、ソラーナはどこか得意げに頷いている。
きらめく金髪も嬉しそうに揺れていた。
神様はおもむろに咳払いする。
「ごほん。みんな、封印には抗えているようだな」
小人は魔や神様よりも、さらに封印に弱い。
魔のように『魔石』をに持たず、かといって神様ほど力も強くないからだ。
だから本來なら、<目覚まし>があっても、すぐにまた封印をけてしまう。彼らはごと封印されて、石像になってしまうはずだった。
そこを、ソラーナの加護が助けてくれた。
『太の目覚めの』が彼らの封印解除を永続させている。
降り注ぐ太が、彼らに封印へ抗う魔力を與え続けていた。
「神様!」
「神様!」
「あなたが一番です!」
「輝いてます!」
「うむ、うむ……しかし、し、恥ずかしいな」
……ソラーナ、ひょっとして褒められて嬉しいのかも?
くすぐったそうに喜ぶ神様。
神様のプライドに思いをはせていると、ヘイムダルも角笛から苦笑する。
『なるほど、小人か。小人と神々、そして人間を協力させるとは……ははは、確かに1000年前にはなかった』
フェリクスさんが顎をさすった。細目でわかにくいけど、きっと驚いているだろう。
「これは、素晴らしい援軍ですね」
「うん――」
白小人のバリさんによれば、彼らは小人が打った武や、ゴーレムを生み出す『ゴーレム核』を持ってきてくれていた。
フェリクスさんが舌を巻く。
「兵士100人に匹敵する力かもしれません」
小人達はを張った。
「我々の道が、終末に抗う役に立つのなら」
誇らしげな様子に、こっちのまで膨らむ。
塔の2階から聲が降ってきた。
「あ、あなた達!?」
キンキン聲は、サフィだ。
建から緑の髪が飛び出した。その子は目をまん丸にして、だだだだ!とこっちへ駆け下りてくる。
「サフィ殿!」
「お久しゅう……!」
小人達は再會を喜びあっている。
きっとお互い、仲間想いなんだろう。鍛冶屋さん同士だからかな。
僕はアールヴヘイムが目覚めた時、サフィと仲間が喜び合っていたのを思い出して、なんだか心が溫かくなった。
ソラーナがふわりと僕のところへ飛んでくる。
「よかったな」
「うん!」
「……君が優しく強い男の子であったから、困った時に、こんなに援軍が來てくれた」
神様は金の瞳をきらめかせた。
まっすぐな微笑みに、なんだろう、がし高鳴る。
「優しい最強は、きっと単なる最強よりもずっと強い」
終末を前に、仲間が続々と集まってくる。
確かに――今までの冒険が報われている気がした。
後ろに人の気配をじて、僕は振り返る。
「よう」
大柄な冒険者が立っていた。石鎚を背負った、顔に傷がある男の人。
「ロイド、さん……?」
フローシアで、一緒に戦ったベテラン冒険者だ。一瞬、混する。
どうしてここへ?
傷だらけの顔でロイドさんは破顔した。
「俺達も參加させてもらう」
見上げる顔は、太を背負ってし眩しい。
後ろにも見覚えのある冒険者達がいる。
みんな、フローシア迷宮にの戦士団と一緒に突した人たちだ。
ロイドさんは指を二本立てて振る。
「フローシアの冒険者ギルドでも、王都への援軍を集められていてね。ここにいるみんなで立候補して、駆け付けたってわけだ」
フローシアから、わざわざ馬車を急かして王都へやってきてくれたみたい。
僕は気づいた。
「……あ、そうか」
本來、僕が修行から呼び戻されたのは、ロイドさんに會うためだったのだろう。
この神殿にれる冒険者は、慎重に選ばれる決まりだ。
神殿にれることを、知り合いの僕に確認する意味があったのだと思う。
肩をすくめるロイドさん。
「門で止められたが、戦士団や、その……神々が俺達を覚えていてね。それでここへれてもらえた」
「なるほど……」
ロイドさんはぐるりと辺りを見渡す。特に小人達を見て苦笑し、言った。
「……君たちは、本當にとんでもないを抱えていたんだな」
慌ててしまう。
確かに、何も神話のを話さないで、僕らはフローシアを去ってしまった。
今はもう、この人たちも本當の神話について知っているのだろう。各地の神殿が、真実を伝えて回っているはずだから。
「あ、あの時は……」
言い淀むと、大きな手で制される。
「気にしてないよ。神話時代、神々は魔に勝ってなくて、むしろ敗けそうだった――俺もフローシアで神々を見なきゃ信じなかっただろう」
ロイドさんはソラーナの姿や、小人達に目を細める。
「仲間の多さは、冒険者の強さだ。君はいい冒険者だ」
この人は父さんのことも見て、知っている。だからだろうか、言葉に重みをじた。
「フローシアからは、俺を含めて20人だ。……勝とうな、年」
「――はいっ」
神殿に、ルゥを守るための力が集まってくれる。
優しい心遣いに、心が熱くなって勵まされた。
負けるわけには、いかないもの。
お読みいただきありがとうございます。
次回更新は、8月28日(日)の予定です。
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