《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》68 王妃の戸い 5

頬を赤らめ、ちょっと勝気そうな表を浮かべるは、よく見ると小さなクリスタの面影があった。

そうだわ。しつり上がった目で、得意気に見つめてくるのはクリスタだわ。

そんなクリスタはドレスの裾を摑んで優雅な禮を取ると、バドに挨拶している。

クリスタに向かってバドがふわりと尾を振る姿を見て、まあ、いつの間にかバドはクリスタをれていたのねとにこりとした。

それから、きちんと淑の禮(カーテシー)を執れるクリスタの立派な姿を見て嬉しくなった私は、ベッドに半を起こした狀態で両手を広げる。

「まあ、クリスタ。大きくなって」

すると、クリスタは私の記憶の中の小さなの時のまま、まっすぐ駆け寄ってくると、私のお腹にあたらないよう気を遣いながら上半を抱きしめた。

「ルピアお義姉様、お目覚めをお待ちしていたわ! おかえりなさい!」

「まあ、それは……あなたが想定していたよりも何倍も、私は寢坊をしてしまったのじゃないかしら」

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申し訳ない気持ちでそう言うと、クリスタは嫣然と微笑んだ。

「いいえ、お義姉様は大変な経験をされたのだから、お好きなだけ眠る権利があるわ」

それから、クリスタはベッドの側に用意されていた椅子に座ると、私の手を握った。

「お義姉様、すっかり細くなってしまったけれど、そのことでおしさが増したわね。まあ、まるで天上にいらっしゃるという天使のようだわ。目覚めてからずっと寢臺暮らしをなさっていると聞いて心配していたけれど、顔もいいようで安心したわ」

それから、クリスタはそっと片手を私のお腹にあてると、優しい聲を出した。

「お義姉様の赤ちゃんもこんにちは。よかったわね、これからはあなたのお母様の聲が聞けるわよ」

そんな風に優しい言葉を掛けてくれるクリスタは、いかにも可らしい妙齢ので、だけど、しっかりと思いやりをに付けていて、その長した姿に戸いを覚える。

「10年は長いのね。私はあなたの長を見逃してしまったのだわ」

失った10年を殘念に思い、そう零すと、クリスタは優雅な仕草で肩を竦めた。

「正直に言って、この10年はあまり楽しいことはなかったわ。だから、眠っていたことを惜しむ必要はないと思うわよ。何たって、この國は常冬の狀態にったのだから」

「常冬?」

スターリング王國には四季があったはずだけれど……。

と、そう不思議に思ったけれど、続くクリスタの言葉から、どうやら『常冬』というのは比喩表現で、彼の置かれた環境が常冬だとじるくらい、常に大変だったと表現したかったらしい。

そのことを示すように、クリスタは信じられないとばかりに両手を広げて訴えてきた。

「信じられないことに、私は12歳で人させられたのよ! これまでのスターリング王國の王は15歳で人していたのだから、通常よりも3年早いわ!!」

「えっ、それは……クリスタの長が早くて、とっても人に育ったからかしら?」

今のクリスタから想像するに、12歳のクリスタも十分しかったはずだ。

いながらもそう返すと、クリスタは楽しそうな笑い聲を上げた。

「ふふふ、お義姉様ったら! 本當にお考えが可らしくていらっしゃるわ。でも、殘念ながらハズレよ! 答えはね、人した王族を作るためよ! 當時の直系王族はフェリクスお兄様しかいらっしゃらなかったけれど、晩餐會を開かない、夜會には出ない、宰相が頼み込んだ必要最低限の謁見のさらに半分しか対応しない、とそれは酷いものだったのよ。だから、どうしても対人業務を果たすための人した王族が必要になって、私が無理矢理人させられたってわけ!」

「えっ」

私は本當にびっくりして、目を見開いた。

10年前のフェリクス様はきちんとした社に付けていて、その點について心配することは何もなかったからだ。

それなのに、『晩餐會を開かないし、夜會には出ない』?

加えて、宰相が頼み込んだ必要最低限の謁見のさらに半分しか対応しないなんて、とてもフェリクス様の行いとは思えない。

クリスタが語ったフェリクス様の姿は、私が知っているそれと全く異なっていたため、戸って目を瞬かせていると、クリスタはふっと小さく微笑んだ。

「ああ、そうね。そういえば、お義姉様の知っていた10年前のお兄様とは、だいぶ違っているわよね。そして、お兄様は今だってきっと、お義姉様の前では以前と変わらない姿を見せようとしているのでしょうから、私の言うことが信じられないとは思うけど……」

そこで言葉を切ると、クリスタは悪そうな笑みを浮かべた。

「ふふふ、10年前と変わらない姿を見せ続けているお兄様は、恐らく、お義姉様にご自分が変わったことを知られたくないのでしょうね! けれど、私はしゃべるわよ! だって、変わってしまったお兄様のせいで、ひどく苦労させられたのですからね!!」

「ク、クリスタ?」

イメージに合わない邪悪な笑みを浮かべたクリスタを見て、揺して名前を呼ぶ。

すると、クリスタはふふふと楽しそうに笑った後、話の続きを始めた。

「そうそう、お兄様の話だったわね。お兄様は10年前から徐々に変わっていかれたのよ。どんどん無口で、偏屈で、面白みのない人間になっていったわ。加えて、緒不安定。眠っていたお義姉様の調子は、日によって悪くなることもあったのだけれど、そんな日は、お兄様はこの世の終わりみたいな表で、お義姉様の徳を一日中數え上げているの。それから、『こんなに素晴らしいであるから』と神さまに、お義姉様の無事をお願いしていたのよ」

クリスタは両手を組み合わせると、その當時のフェリクス様の真似を始めた。

「正直に言って、妹だから何とか堪えられたけれど、あれが赤の他人ならば、さっさと見捨てるレベルの酷さだったわ!」

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