《【書籍化・コミカライズ】さないといわれましても~元魔王の伯爵令嬢は生真面目軍人に餌付けをされて幸せになる》19 りょうりちょうならおいしくしてくれるにきまってるのです

來たときと同じようにドリューウェットのお城に寄って、それから王都へ帰るため港町を出発しました。いつの間にか護衛が倍に増えています。

「牛と羊が増えるからですか」

「どっちかだと言っただろう」

やっぱりどっちか選ばなくちゃいけないみたいです。牛と羊のいた街は、城と王都の間にあるところだったので、それまでに考えることにします。

旅行のお土産は王都でお留守番のイーサンたちの分だけではありません。ちゃんと義父上たちの分も用意しました。特にサミュエル様は喜んでくれると思います。ばっちりです。義父上たちの分は旦那様と一緒に決めましたけれど、サミュエル様の分は、きっとアビーが決めたほうが喜ぶだろうからなって言われて私が選んだのです。

「アビー、來るとき見た風景だろうに……また何か見張ってるのか?」

「來た時と反対側なので見てます」

「お、おう」

馬車の両側をいっぺんに見ることはできないので、來るときと帰るときでは反対側の景を見られるのです。ちゃんと靴もいでます。山間の道はもう抜けました。來るときに見ていた側は平地が広がっていたのですけど、今見ている側は小高い丘が幾重にも広がっていま――あ!

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「旦那様!旦那様!もこもこがいます!羊です!羊ですよねあれ!」

図鑑でみたやつです!羊!なだらかな丘陵のあちらこちらにぽつりぽつりと白いもこもこがいるのです。時々黒いのもいます。

座席で立ち膝になってしまった私の腰を旦那様が支えてくれました。

「あー……そういえばこの辺も牧羊してたな」

「旦那様」

「……アビー、この辺りで牛は飼っていないぞ。両方見比べて決めなくていいのか?」

「えっ」

「來る時に見た牛のあたりなら、羊もいるから両方比べてどちらかに決められるけどな」

「――たしかに!」

來るときに泊まった町は多分もうすぐです。そのときに羊のお料理は出ていません。

今度はあのおっきなおあるでしょうか。

お泊りした宿のごはんは一階にある食堂でいただいています。來るときにピザを食べた宿から後に泊まった宿では、時間が合えば食堂を使うようになりました。々あって楽しいので。

タバサたちは別のテーブルで食事をしていて、護衛たちは人數が増えたので代でとるそうです。食堂そんなに広くないですから。

「……アビー?大丈夫か」

「なにがですか?」

手元のお皿にはほろほろになったハギスとマッシュポテト。一口食べたのですけど、なぜかみんな私をじっと見ています。隣の席の護衛まで。旦那様なんてちょっと心配そう。どうして。

ハギスは羊のゆでた臓をいろいろして羊の胃袋に詰めて茹でたものって言ってました。これは胃袋から出したものだからほろほろ。護衛のうちの一人が食べていたのです。なんだろうと思って見てたら、多分口に合わないと思いますよって言いながらちょっと分けてくれたのです。もう一口、マッシュポテトと一緒に口へと運びます。味しくないです。臭い。

「……奧様、無理しなくて大丈夫ですよ。これは食べ慣れてないと」

味しくないけど無理じゃないです」

味しくないものを久しぶりに食べましたけど、まだおなかいっぱいじゃないからこのくらい食べられます。最後の一口を食べました。臭かった!ハギスを分けてくれた護衛は、何かちょっとおどおどしています。そういえばこの護衛は新しく城から來た人です。

「この料理は、とても元気になる料理ですからちゃんと食べた方がいいです。それに使ってる羊は、ちょっと魔力ある仔だったみたいなので魔力回復もちょっとだけ早くなります」

それに頭から丸かじりするよりずっと食べやすくていい。旦那様がロドニーを呼んでこしょこしょお話ししています。こしょこしょは楽しいので、私も後でしてもらえないでしょうか。

「アビー、確かにこの辺りの羊は魔山羊と掛け合わせた品種らしいんだが……」

「それは習ってないですけど、わかります。魔力が殘ってますし」

魔山羊はがもしょもしょして舌ざわり悪いし蹄もいのです。どんな生きでも臓は魔力や栄養がありますけど、丸かじりして味しいものは滅多にありません。々邪魔です。

弱い魔は生で丸かじりじゃないと、魔力が殘ってることはないです。魔王のとき、村で焼いてくれた魔はそうでした。その代わり味しかったのですけど。だからこのハギスは強い魔じゃないのに魔力が殘ってて珍しいなって思ってはいたのです。

旦那様も護衛たちも殘りのハギスをちょっとずつ味見して、しかめっ面しはじめました。

味しくないのは仕方ないです。お城の人がつくったのではありませんし」

それはそうとあちらのテーブルの隅にあるのは、チェリーパイではないでしょうか。実がぽこぽこ載った表面に、とろりとしたソースが黃いクリームの斷面に垂れているパイはチェリーだと思います。赤黒いからきっとそう。

「……城の料理長は味しく作れると思うか?」

「料理長はお城の人なので!」

「期待値高いですねー」

知らない人たちの席に運ばれていくのは、焼けた小さいトマトの上に載せられた、焼き目がしっかりついていてごろんとしたおで――あっ!あれは!旦那様の服の裾をちょっとだけ引っ張ったら、すぐに耳を私の方へ寄せてくれましたので、こしょこしょします。

「骨がついたソーセージありますっ」

「お、おう」

旦那様は骨のついたソーセージだけじゃなくって、仔羊のローストも、チェリーパイも頼んでくれました。どうして食べたいのわかったのかわからないですけれど、きっと旦那様だからだと思います。どれも味しかった!

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