《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》4-19:変わる神、変わる人
世界の終末が刻々と迫る中。
目覚めた神々は、必ず日に一度集まることになっていた。
雷神トール、魔神ロキ、狩神ウル、薬神シグリス、そして太の娘ソラーナに、目覚ましの神ヘイムダル。
それぞれが人間の力を高めたり、ユミール陣営の調査をして過ごしているが、互いの報告は不可欠という配慮である。
世界の終末まで、殘り2週間。
青空を模した空間に、神々が浮かんでいる。
ソラーナと、ルイシアに宿るフレイヤ以外、神は全員參加していた。
「…………」
「…………」
まず目立つのは、巨の2柱。荒布裝束の雷神トール、そして鎧でを包んだヘイムダルだ。
戦いを司る2人は、『この問題は専門外だ』と言わんばかりに腕を組んで沈黙していた。
狩神ウルがひょいと手を上げる。
「あ、ちなみにボクも推移にはノーコメント。2人とも若いよねぇ……ホント」
狩裝束に茶髪のお下げ、ウルはしみじみと頷く。神々の反応が鈍いことに気づき、冷や汗を一筋流した。
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「……一応、狀況を整理しよう。最初にソラーナの魔力の揺らぎに気づいたのはボクだから」
ウルは口元をひくつかせて、続けた。
「サフィがリオンに想いを告げて、それに発されてリオンとソラーナも……ってところ。いやぁ、言っておいてなんだけど……『世界が滅びそうって時になんで?』ってじだよね」
狩神ウルは殘る2神に目を向けた。
「ろ、ロキと、シグリスはどう? こういう機微は、2人の方がわかるんじゃない?」
黒いローブの魔神ロキはたれ目の目をさらに下げ、眉間に指を當てていた。
見守る薬神シグリスも、同じように困顔。ハラハラと顔を左右に向けている。
やがて神は口を開いた。
「ど、どうしましょう?」
魔神ロキが頭を振った。
「どうもうこうもある? リオンもソラーナも、そりゃ僕も面白がってたけどさぁ、何もこのタイミングで発しなくてもいいじゃない」
「はっ! も、もしや、ロキが焚きつけたからではっ!?」
フローシアの戦いの前、確かにロキはソラーナをからかっていた。
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ロキは手を振る。
「それは濡れ。それにしても、小人の鍛冶屋さんから火が付いたか、そうかぁ、こりゃ時間の問題だったかなぁ。いやでもやっぱり、ちょっと面白――」
ジロリ、と4柱の視線がロキに向いた。
ロキは右手の人差し指と中指を一緒に立て、振った。
「いやね。僕も面白がってはいたよぉ? でもさぁ、起こってみると、決戦の直前に、鍵となるリオンとソラーナがぎくしゃくしちゃったのはまずいよね」
神々はそろって頷く。
全員が見るのは、いつもはソラーナがいる位置だった。魔力で疑似的に再現された空には、が特に集まる場所がある。
神々が集まる時、太の娘ソラーナはそこにいた。
今は、いない。
魔力がれにれて、すんなり金貨にるのにも苦労したほどだった。
再び、議場はしんと靜まり返る。
唯一の神、シグリスがそろそろと手を挙げた。
「やっぱり――これ、お互いに好きって伝わったってことですよね?」
ロキは口を曲げる。
「その雰囲気は、お互い、じちゃったんじゃないかなぁ?」
「わぁ……!」
「神様? あなた1000年は生きてるんだから、14歳の心にキラキラしないでもらってもいいかなぁあ?」
ロキは黒髪をかきむしる。
「ソラーナもソラーナで……いや、神として生まれてからも一番若いし、1000年は封印されていたんだから、神年齢はリオンと同じくらいなのか……? ああもう、みんなも考えて!」
居心地が悪そうにしている殘りの神へ向けて、ロキは聲を張った。
神々は顔を見合わせている。
「だって……」
「俺達にできることなんてないだろ?」
「こういうのは、お2人の気持ちを尊重して――」
「何を呑気な!」
ロキは両手を振り回す。
なまじ心の機微に聡い分、イタズラ師(トリック・スター)は今回ばかりは進行役になっていた。
「いいかいみんな! ソラーナは太神だ! 僕らが封印に抗えているのも、彼の力『太の目覚めの』が大きい」
トールは重々しく顎を引く。
「……そうだ。戦いでも、リオンの戦力の大部分はソラーナの加護だ」
「はい、そこだ! 決戦まであと2週間とし。できるだけ早く、リオンとソラーナには仲直りしてもらわないとならない」
ロキが言った瞬間、青空に暴風が吹いた。
まるで嵐。神々さえ吹き飛ばされそうになる。
「……ふぅ、みんな見たな?」
なんとか風をやり過ごした後、ロキはれた黒髪を直した。
「僕らは、ソラーナの金貨に宿ってる。大家の――つまりソラーナの魔力のれは、僕らにも影響するってこと」
「それを早く言えよ」
トールを丁重に無視して、ロキは神々を見渡した。
「わかるだろ? こんなれた魔力を垂れ流されたら、揺してるって敵に見せつけてるようなものだ……ちなみに、僕の調査にも影響出る。王都の戦いの時、ユミールがどこでどうやってたのかも、まだわかってないんだ」
ぶんと金鎚(ミョルニル)を振り回し、トールがんだ。
「よぉし! わかった! リオンに言おうぜ。正面突破だ、堂々と『してる』と言わせるのさ」
今度はロキが指さしてゲラゲラ笑う。
「君がだって!?」
「お前が考えろって言ったんだろ!」
「しかも記念碑的にセンスがない」
「…………」
雷神に睨まれ、ロキは沈黙する。
微妙な空気になってしまった。
ふと、狩神ウルが指を立てる。
「……ん。いいかな、議長」
「いいよ、ウル。ロキは議長じゃないけどね」
「というか、なぜ、リオンはあの場ではっきり言えなかったんだろう? ああいう場では、男の子の方が言うべきだと思うし」
「そりゃ……」
ロキが口を開きかける。ここまで言わないといけないのか?
全員の視線が集まって、仕方なさそうにロキは発言した。
「……神と、人間だからじゃない?」
沈黙がやってくる。それは前よりもし異質で、暗いものだった。
2人のは、普通の年とのようにはいかない。
ロキが口にした『前提』は、リオンとソラーナの間には、『信徒』と『神』というはっきりした壁があることを示していた。
薬神シグリスが、青髪を揺らして聲を張る。
「そ、それでも気持ちがあれば!」
「ああ、薬神よ! 君もなんだか人間くさいこと言ってるぞ!」
ロキが顔を覆った時、からからと明るい笑いが響き渡った。
朗らかな笑いはしばらく続いた。ヘイムダルは顔をくしゃくしゃにて笑い続け、全員が黙った後、ようやく止まった。
「……すまん、すまん。驚いたんだ」
涼しげな目元から涙を拭って、ヘイムダルは言った。
「みんな、変わったな。正直、最初に目覚めた時に驚いたんだが……神話時代よりも、みんな確かに人間じみてるな」
「そりゃ……」
雷神トールは、太い指で鼻の頭をかく。
「何を言うのかと思えば……々あって、『認めた』ってやつだ」
「ふむ。小人の國では、その點が勝利に繋がったようだしな」
ヘイムダルは軍師の顔で首肯する。
「それでもさ。神話時代、俺達は人間を率いてはいたが、『仲間』とまでは呼べなかった。それが今じゃ――おっかない雷神トールが、年のに首を突っ込むほどとはね」
「うるせぇな」
トールはばつが悪そうに赤髪をかきあげた。
一方で、魔神ロキは興味深げに腕を組む。
「確かに。ここたった數か月で、僕らは人間をより深く知った。1000年も生きたくせにね」
魔神は上天を見た。青空は高みへいくほどの深さを増していく。ロキの心は、本の青空へ飛んでいた。
「オーディンの提案も惜しかったね。新しい世界を創って人間を見捨ててそこに行く――目覚めたばかりの僕らなら承知したかもしれない」
ロキの言葉は、會話をヒヤリとさせた。だが反論する言葉は出ない。
――神が上。
――人間はその下。
現実の序列として、多くの神がかつてそう思っていたのも確かである。
ヘイムダルが引き取った。
「だが、今や……か」
その先は、誰も言わない。言わずとも、心は同じだったから。
ロキはくつくつと肩を揺らす。
「なくとも僕らはこの世界を守る。人間をなかなか好きになってきた」
神シグリスが微笑した。
「……その意味では、やはり大きく変わったのはソラーナなのでしょう。最初は、人間の食事さえ知らなかったのに、今では――」
引き取るのは、茶髪のおさげをなびかせる、狩神ウル。
「確かに、長も一番早い。年と共に長した神か……も必然かな」
肩をすくめて言った最後の方は、小さく、ほとんど獨り言だった。
さて、とロキは手を叩く。
「みんな、しんみりするには早いぞ! 頭を切り替えよう! 今は、その長する神様が揺しまくっている件だ」
「ああ、その點だが」
ヘイムダルが咳払いした。
「実のところ、心配は無用と思う。最初に黙っていたのは、その點だ。すでに人間の側に策があるようだから」
「……策?」
「と、いえるかは微妙だが。トール並みに正攻法だ」
ヘイムダルは前方に手をかざす。
青空にぽっかりとが開いて、そこから外が――金貨が置かれた部屋の様子が見えた。
窓を開けるようなものだ。
コインに集っていても、神々はこうして外で何が起きているか見ることができる。
外では、リオンの部屋がノックされていた。
妹ルイシアが目をキラキラさせてってくる。
――お兄ちゃん、ソラーナ様とデートに行って!
ルイシアはそう言って、リオンの手を握った。
お読みいただきありがとうございます。
次回更新は9月3日(土)の予定です。
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