《【書籍化】絶滅したはずの希種エルフが奴隷として売られていたので、娘にすることにした。【コミカライズ】》第43話 カヤ、不思議なダンスを踴る
俺が住んでいる區畫を高級住宅街とするならば、カヤが居を構えている區畫は一般的に中流住宅街と認知されている。
一人暮らし用の集合住宅から二世帯住宅まで、あらゆる大きさの家が雑に立ち並ぶこの區畫は、街燈1本に至るまでこだわられている高級住宅街や華やかな店舗が立ち並ぶ商業通りとは違い、視覚的なしさは皆無と言っていい。その証拠に、視線を落とせば道の端にはゴミが転がっている。清掃が行われていないわけではないが、単純に間に合っていないのだ。
しさで言えば前述の區畫に大きく水をあけられている中流住宅街だが、俺はこの空気が嫌いじゃなかった。かくいう俺の実家もここではないが中流住宅街にある。
カヤの家は、2階建てのこじんまりとした集合住宅の一角にあった。決して上等な家とは言えないが、なくとも無職が住めるような所ではない。
「あら、ヴァイスじゃない。一どうしたってのよ」
カヤはやはり暇していたようで、突然訪ねて來た俺達をニコニコ笑顔で迎えれた。
Advertisement
無一文だったはずだが、そのには真新しい部屋著を纏っている。きっとジークリンデあたりが金を貸したのだろう。
服とは正反対に髪はボサボサで、ひと目でダラけていたのだと分かった。俺には好都合だ。
「悪い、ちょっとあがっていいか?」
「? いいけど…………何もないわよ?」
「構わない」
カヤの部屋は最低限の家は揃っているものの、本當に必要最低限といった合で、閑散とした印象は拭えない。テーブルへの著席を勧められたものの、俺はそれを斷って本題を切り出した。長居をするつもりはない。
「────突然なんだが、1週間ほどエンジェルベアを預かってしいんだ」
「くまたんだよ!」
リリィが背びをして腕の中のくまたんをアピールしてくる。
…………それ、人前で言うの恥ずかしいんだが…………ダメか?
「…………くまたんを預かってしいんだ」
「えー……」
俺の依頼に、カヤは見るからに嫌そうな顔をした。何なら口に出ていた。
リリィが抱っこしているくまたんにちらっと視線を向け、眉間の皺を更に険しくする。
「あのジークリンデとかいうおっかない人に頼めばいいじゃない。偉いんでしょ、あの人。この部屋もすぐ貸してくれたし」
カヤは部屋を見渡して満足そうな表を浮かべた。ここが夢にまで見た私の城よ、そう顔に書いてあった。
「あいつは多忙なんだ。何とかしてくれるとは思うが、出來る限り手間は掛けさせたくない。それにお前だったらエンジェルベアに詳しいんじゃないかと思ってな」
「別に詳しくないわよ。私、ただ見回ってただけだから。そういうワケで他を當たって頂戴」
話は終わりよ、とばかりに手で払うジェスチャーをするカヤ。
…………出來ればカヤにお願いしたかったんだが、このじじゃ無理そうだ。
「分かった。他を當たるよ」
他に當てがある訳ではないが仕方ない。
世話代としてテーブルに置いていた白貨をポケットに戻すと、カヤは金屬音に反応してビクッと視線を向けた。テーブルとポケットを互に指差して、焦った様子で口を開く。
「えっ、いま……なんか戻した?」
「世話代として払うつもりだった白貨だ」
「白貨? それっていくらだったっけ?」
「100000ゼニーだ」
「ぶほッ!?」
カヤは吹き出した。咳き込みながらも視線はポケットに釘付けになっている。
「じゅ、じゅじゅじゅじゅっ…………じゅうまんっ!?」
「期間が長いからな。これくらいが妥當だと思っていたんだが」
相場が分からなかっただけともいう。ペットの世話など頼んだ経験がない。
「はぁ…………はぁ…………!」
…………年収15000ゼニーだったカヤには、白貨はし刺激が強かったのかもしれない。走った目でポケットを凝視していた。鼻息は荒く、口からはよだれが垂れている。
カヤはゆっくりとリリィに向き直ると、じりじりと詰め寄っていく。その不気味な様子にリリィは一歩後ずさりした。
「ふぇ…………あっ!」
しかしカヤはそんな事お構いなしに、素早く腕の中のくまたんを奪い取った。
手つきが完全にひったくりのそれだった。こいつ、初犯じゃないだろ。
「きゅ〜…………」
カヤに抱き抱えられたくまたんが寂しそうに鳴き聲をあげる。
「留守中の世話は任せておきなさい。このエンジェルベアマスターの私にね」
「…………本當に大丈夫なのか?」
自信満々にを叩くカヤに、俺の心には不安という名の暗雲が立ち込め始めた。
「當たり前じゃない! 私がこれまで何匹のエンジェルベアを育ててきたと思ってるのよ」
「よく知らないって言ってなかったか?」
「空耳よ。ほら、はやく世話代頂戴な。ほらっ」
びしっと手のひらを突き出してくるカヤに不安になりながらも、俺はその手に白貨を乗せた。
「~~~~ッ、キャッホー! 大金持ちよ、わたし!」
カヤはくまたんを抱き抱えたまま、満面の笑みで見た事のないステップを踏み始めた。地元の村で神か何かに捧げるダンスだろうか。間抜けな見た目だが、本人は幸せそうだ。
「おい、分かってると思うがくまたんに何かあったら全額返済して貰うからな」
「分かってるわよ。流石に私も生きは大事に扱うわ。ほら、用事があるんじゃなかったの? 行った行った」
カヤは今度こそ俺たちを追い出しにかかった。
「ぐへへ…………」
「きゅ〜…………」
カヤのけきった顔とくまたんの悲しそうな瞳に見送られながら、俺たちはカヤの家を後にした。
不安だが信じるしかない。
- 連載中109 章
【書籍化】『ライフで受けてライフで毆る』これぞ私の必勝法
「Infinite Creation」 株式會社トライアングルが手掛ける、最新のVRMMOである。 無限の創造性という謡い文句に違わず、プレイヤーたちを待ち受けるのはもう一つの世界。 この自由度の高いオープンワールドで、主人公「桐谷深雪(PNユキ)」は、ある突飛な遊び方を思いついた。 『すべてライフで受けちゃえば、ゲーム上手くなくてもなんとかなるんじゃない?』 配信者デビューしたユキが、賑やかなコメント欄と共にマイペースにゲームを楽しんでいくほんわかストーリー。今ここに始まる。 何をどう間違ったのか。ただいま聖女として歩く災害爆進中!! 20220312 いつのまにか、いいねとやらが実裝されていたので開放してみました。 (2020/07/15 ジャンル別 日間/週間 一位 総合評価10000 本當にありがとうございます) (2020/08/03 総合評価20000 大感謝です) (2020/09/10 総合評価30000 感謝の極みっ) (2022/03/24 皆様のお陰で、書籍化が決まりました) (2022/03/29 総合40000屆きましたっ)
8 73 - 連載中107 章
【電子書籍化決定】人生ループ中の公爵令嬢は、自分を殺した婚約者と別れて契約結婚をすることにしました。
フルバート侯爵家長女、アロナ・フルバートは、婚約者である國の第三王子ルーファス・ダオ・アルフォンソのことを心から愛していた。 両親からの厳しすぎる教育を受け、愛情など知らずに育ったアロナは、優しく穏やかなルーファスを心の拠り所にしていた。 彼の為ならば、全て耐えられる。 愛する人と結婚することが出來る自分は、世界一の幸せ者だと、そう信じていた。 しかしそれは“ある存在”により葉わぬ夢と散り、彼女はその命すら失ってしまった。 はずだったのだが、どういうわけかもう三度も同じことを繰り返していた。四度目こそは、死亡を回避しルーファスと幸せに。そう願っていた彼女は、そのルーファスこそが諸悪の根源だったと知り、激しい憎悪に囚われ…ることはなかった。 愛した人は、最低だった。それでも確かに、愛していたから。その思いすら捨ててしまったら、自分には何も殘らなくなる。だから、恨むことはしない。 けれど、流石にもう死を繰り返したくはない。ルーファスと離れなければ、死亡エンドを回避できない。 そう考えたアロナは、四度目の人生で初めて以前とは違う方向に行動しはじめたのだった。 「辺境伯様。私と契約、致しませんか?」 そう口にした瞬間から、彼女の運命は大きく変わりはじめた。 【ありがたいことに、電子書籍化が決定致しました!全ての読者様に、心より感謝いたします!】
8 123 - 連載中27 章
【書籍化&コミカライズ決定!】10月5日コミカライズ連載スタート!10月15日文庫発売!追放された元令嬢、森で拾った皇子に溺愛され聖女に目覚める
※舊タイトル【追放のゴミ捨て場令嬢は手のひら返しに呆れつつ、おいしい料理に夢中です。】 「私はただ、美味しい料理を食べたいだけなんだけど」 幼少期にお腹を空かせてばかりいたため、食いしん坊 子爵家の養女となり、歌姫となったキャナリーだが、 他の令嬢たちは身分の低いキャナリーを標的にし、こきおろす。 「なんでもポイポイお腹に放り込んで、まるでゴミ捨て場みたいですわ」 不吉な魔力を持つ娘だと追放され、森に戻ったキャナリー。 そこで怪我をしていた青年二人を助けたが、 一人はグリフィン帝國の皇子だった。 帝國皇子と親しくなったキャナリーに、 ダグラス王國の手のひら返しが始まる。 ※本作は第四回ビーズログ大賞にて、特別賞とコミックビーズログ賞のダブル受賞をいたしました! 目にとめていただき、評価して下さった読者様のおかげです。本當にありがとうございました! 【書籍情報】 2022年10月15日に、ビーズログ文庫様から書籍として発売されます! また、書籍化にともないタイトルを変更しました。イラストは茲助先生が擔當して下さっています! 先生の手による可愛いキャナリーと格好いいジェラルドの書影は、すでにHPやオンライン書店で解禁されていると思いますので、ぜひ御覧になっていただけたらと思います! 中身は灰汁をとりのぞき、糖分を大幅に増し、大改稿しておりますので、WebはWeb、文庫は文庫として楽しんでいただければ幸いです。 【コミカライズ情報】 コミックビーズログ様などにおいて、10月5日からコミカライズ連載がスタートしています! 作畫はすずむし先生が擔當して下さいました。イメージ通りというより、はるかイメージ以上の素敵な作品になっています!漫畫の中で食べて笑って話して生き生きとしている登場人物たちを、ぜひチェックしていただきたいです! 【PV情報】 YouTubeにて本作品のPVが流れております! キャナリー役・大坪由佳さん ジェラルド役・白井悠介さん と豪華聲優様たちが聲を當てて下さっています!ぜひご覧になって下さいませ! どうかよろしくお願いいたします!
8 76 - 連載中310 章
女の子を助けたら いつの間にかハーレムが出來上がっていたんだが ~2nd season~
高校卒業から7年後。ガーナでの生活にも慣れ、たくさんの子寶にも恵まれて、皆と楽しくやっていた大和。 しかし、大和と理子の子であり、今作の主人公でもある稲木日向は、父に不満があるようで・・・? 一途な日向と、その周りが織り成す、學園ラブコメディ。・・・多分。
8 66 - 連載中8 章
全てを創造した主の後継者と神の器の異世界ライフ‼︎ 〜可能性しか貰ってませんが⁉︎〜
ある日、その教室內にいた者達は一人殘らず異世界に召喚された。 異世界へ召喚された主人公はクラスのみんなが勇者スキルと魔法の屬性適性を授かるなか、魔法の屬性適性…無。勇者スキルも、神の加護もない。 だが主人公には人に言えない秘密があった。その力で異世界を楽しく過ごすことを決意する。 初投稿作品なので、非常に読みにくいとは思いますが、よろしくお願いします!
8 97 - 連載中305 章
受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-
受験を間近に控えた高3の正月。 過労により死んでしまった。 ところがある神様の手伝いがてら異世界に転生することに!? とある商人のもとに生まれ変わったライヤは受験生時代に培った勉強法と、粘り強さを武器に王國でも屈指の人物へと成長する。 前世からの夢であった教師となるという夢を葉えたライヤだったが、周りは貴族出身のエリートばかりで平民であるライヤは煙たがられる。 そんな中、學生時代に築いた唯一のつながり、王國第一王女アンに振り回される日々を送る。 貴族出身のエリートしかいないS級の教師に命じられ、その中に第3王女もいたのだが生徒には舐められるばかり。 平民で、特別な才能もないライヤに彼らの教師が務まるのか……!? 努力型主人公を書いて見たくて挑戦してみました! 前作の「戦力より戦略。」よりは文章も見やすく、內容も統一できているのかなと感じます。 是非今後の勵みにしたいのでブックマークや評価、感想もお願いします!
8 83