《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》4-22:夕焼けの荒野

王都からずっと西へ向かい続けると、巨大な荒野が広がっている。

水と緑に恵まれた丘陵が、だんだんと草をなくして、ついには完全に赤茶けた大地になるんだ。

――夕焼けの荒野。

の大発生と激戦という『の夕焼け』が起きた場所だから、そう名付けられている。

僕らは神殿から馬車に乗り、2日ほどかけてその荒野へやってきた。

道はすっかり荒い。馬車がゴトゴトと揺れる。そろそろ目的地――『の夕焼け』が起きたダンジョン跡に近づいているから、もうまともな道がないんだ。

窓から眺めて、僕は呟く。

「……王都から離れてないのに、こんな土地があるなんて」

命の気配が、この大地は限りなくゼロだ。

本當に、草の一本さえ生えない景が続いている。

赤茶けた大地は日差しを照り返して、春なのに夏のように暑かった。

金貨からソラーナの聲が來る。

『ユミールとヘイムダルが、神話時代に戦った影響かもしれぬな。ここは、最も激しい戦いの舞臺だったはずだ』

ヘイムダルは、神様にとっての見張り番でもある。角笛を吹き鳴らし前線に立った。

この神様を、魔達も真っ先に狙ったらしい。

突破されたという城壁は、1000年の時間の中で、きっと跡形もなくなっている。

ヘイムダルが信徒を守っていたダンジョンも、僕が生まれる頃にはすでに構となっていた。それもユミールの復活で、完なきまでに破壊された。

やがて、馬車が止まる。

赤茶けた大地にいくつもの大が開いていた。太い柱が一本だけ、まるで墓標のように突き立っている。

僕は言った。

「降りよう」

地面に立って、仲間と裝備を整える。

ミアさん、フェリクスさん、それにの戦士団といったいつもの面々だ。ただし今回は、そこに小人のサフィもっている。神をメンテナンスする必要があったりするかもしれないから。

でも、一番珍しいのは――

「よっ……と」

服姿のルゥが、馬車から降りてきた。僕は妹の手を取って支えてやる。

「平気?」

「うん……」

ルゥは微笑んだ。

はやっぱり強張ってる。

「ルゥ、大変だけど、外で待つ方が危ないから……」

「大丈夫。中へるよ。フレイヤ様から魔力をもらう練習も、してるから」

そう。ルゥだって、『の夕焼け』の探索には參加をする。

理由は、フレイヤ様の知識が必要になるかもしれないから。

そして僕がくと、神々も神殿を離れることになる。オーディンが狙っていると判明した今、ルゥもできるだけ僕らと一緒にいる方が安全だって思えた。

仲間の準備を待って、合図する。

「じゃ、行こう」

巨大な縦を降っていく。

荒野に穿たれたは、とても深い。おそらく底まで50メートルはあるだろう。

最下部では、風化した柱や壁の痕がむき出しになっていた。仮にこれが土に埋まった迷宮の一部だったなら――深さ10層を超える大迷宮ってことになる。

もし今までダンジョンの機能を維持していたら、おそらくフローシア以上の難関だっただろう。

僕らは、の底へ辿り著く。

上から狼の遠吠えが響いてきた。

『……出たか』

ヘイムダルが言う。

僕は短剣を構えて、上を睨んだ。背中でルゥを守るように。

巨大な狼と、その背に乗った男が、僕らを見下ろしていた。

「よく來ましたね。私は狼骨の長フェンリル、はじめまして」

狼は両頬を引きつらせるように、笑う。男の聲だけど、穏やかな語り口が不気味だ。

しかも巨大な牙の隙間から、その聲はれてくる。

「あなた方とお話をしたくて、ここまでお越し願いました」

お読みいただきありがとうございます。

次回更新は9月8日(木)の予定です。

(1日、間が空きます)

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